女子と一緒に外歩いたことないです。妹?ノーカウントです。
人生初デート!きゃっほう!只今午前9時十五分前!俺は今ちょっとしゃれおつな喫茶店の前に来ています!
……何?このテンション。正しいのか。額面通りの事をしにいくのなら。どっちかというと死に行くのか。デートって言葉こっぱずかしいよね。なんか。これがさっらと言えるようになったら人間的に成長したと言っても過言でもない。
集合時間午前9時だったよな。イタズラだったらどうしようかな。『うわ、あいつ本気できやがった。キャハハハ。』とかだったらどうしようかな。
「おはよう。蓮水くん♫」
わお、ちゃんと来てくれたよ。いいスマイルだね、はは。
因みに英さんの服装だが、水色のスキニーに薄ピンク色のシャツ、白色のカーディガンを羽織っている。春らしいね。こっちの格好がジーンズに黒色のパーカーなのが申し訳ない。夏以外こんな格好。
あれだ黒色って正装ぽいからいいよね。スーツとか制服とか。あっジーンズはアメリカの労働者の服だったけか。プラマイゼロだな。
「おはようございます。英さん」
「『ごめん、待った?』とか言ったほうがいい?」
「では俺も『今来た所です。』と答えます」
「うふふふふふふふふ」
「あはははははははは」
形式美って大事だと思うんだよね。
「とりあえず喫茶店入ろっか」
「そうですね」
ーーカランコロンカラン
すげぇ。ドアにベルついてんじゃん。今、こういう喫茶店少なくなってきてるよね。ここはなんかレトロ感溢れるけど。おお、カウンターにマスターらしき人が。『マスター。……いつもの』って言いたい。マスターの後若干ためをつくるのがポイントね。
というかなんで喫茶店なんだろう。こういう時普通ファミレスは……食事っぽいから、ファーストフード店とかに行くもんじゃないの?普通の高校生は。知らんけど。
「蓮水くんは、何にするの?」
「俺ですか?俺はこのスーパーストロベリーパフェにします」
「……えっそれ何?朝食?」
「やだなぁ。ちゃんと食べてきてるに決まってるじゃないですか」
「そう……私はカフェオレかなぁ」
店員さん!お願いしまーす!
「で、今日は何の用なんですか?」
「D・A・T・E」
オア アラ◯ブ。
「いや。嘘ですよね。言い方はおかしいですが、デートする理由も心あたりもありません」
階段から落ちている所を助けた?自分の嗜好を晒しても引かなかった?悩みを聞いてくれた?そんなことで人を好きになるわけがない。物語ではないんだ。人の心は簡単に動かせない。
恋を勘違いとまでは言うほどひねくれているつもりはないが、これはおかしい。
英さんは一回口を開きかけるがまたすぐ閉じてしまった。それから決意を固めたようにこちらを見据える。
「蓮水くん」
「はい」
「……私の嗜好を治すのを手伝って下さい!」
「いいですよ」
「ず、図々しいのは百も承知なんだけど。こんな事頼めるの蓮水くんしかいないし。あんな事しておいてどの口が言うんだって感じだけど。それで……えっ?いいの!」
「いいですよ」
「なんで!」
なんでって言われても……なんでだろうなぁ。
「気まぐれ?」
「こっちに聞かれても……」
「確かに色々ありましたけど、あなたはいい人じゃないですか。なんて言うんでしょうね、何かこの繋がりを断ち切るのが勿体無い感じがしまして。少し手伝うぐらいしますよ」
自分で言ってて意味わからん。本心なんてのものは、きっと自分にもよくわからないものなんだろう。
「……ありがとう」
英さんは静かにそう呟いた。
***
「それでは着地点から決めましょうか?」モグモグ
「着地点?」
「ええ、保健室でも言ったような気がしますか。自分がどうしたいかです。」モグモグ
「う〜ん。やっぱりこの生肉が好きっていうのを止めたいかな。詳しい事はまた後で話すけどもうこの好きって狂気の域に達してるからさ」
「そういえば、昨日は生肉食べたんですか?」モグモグ
「うん、昨日はねパックの牛肉300グラム食べたよ。ひき肉」
モグモグモグモグモグモグモグモグ
「……蓮水くん。真面目に聞いてる?」
いやだってこのパフェメチャクチャ美味いんですもん。さすがスーパー。いやマスターいい腕してるよ。マスターはパフェ作らんか。ウェイトレスさんが作ってるか。うん僕知ってる。漫画で読んだ。行ってみたいぜ北海道!
「よく生肉の話している時にそんなの食べれるよね(しかも朝から)」
「まじ最高です」
「相談してるのはこっちだし。食べ終わってからでいいよ」
アザーす。それから20分間喫茶店には食器の音のみが鳴り響いた。会話はゼロだった。