何がどうしてこうなった?
思いつきと趣味で書きました。悔いはありません。頭を空っぽにして楽しめていただけたら幸いです。だいだい2日おきぐらいに投稿しようと思っています。
校舎裏の日陰で俺は仰向けで空を見上げている。遠くから部活動の声が聞こえてくる。しかし此処だけ現実から切り離されたように静かだ。
自分の頬を撫でる春風を感じる。このまま寝てしまいそうなうららかな気候。
顔に影が掛かる。目に入ってきたのは女性の顔。茶色の髪を無造作に伸ばし肩ぐらいまで伸びている。大きく開いた目。真っ直ぐ通った鼻筋。口元から見える八重歯。十人が十人、「綺麗」とか「かわいい」などと言うだろう。
その顔がこんなに近くにあるのにダラダラと嫌な汗が流れてくる。さっきまで詩的に(そうでもないが)周辺を描写してきたが、そんな現実を逃避している場合ではない。
何でこんなこと言ってるかって?
「ねぇ……貴方を食べさせて?」
そう言って犬歯をきらめかせながら笑う。
えっと……それって……いわゆる嬉し恥ずかしの展開かな……
***
俺ー遠江 蓮水は高校の入学式に参加している。今はどっかのお偉いさんの話をきいている。
だめだ。超絶眠い。落ちる……くそっみんなが俺のために集まってくれているのに、此処で寝たら台無しに……無念……と馬鹿なことを考えて睡魔に耐えようとしていたが、闇にのまれていった。というかなんでああも偉い人の話は長いんだろう。あくびっていう技使ってるの?というぐらい眠りに誘われる。
気がついたらみんなが立っていて、退場かと思ったら国歌斉唱だった。一人だけ座っていたのは結構恥ずかしい。
***
入学式を終え、最初のホームルームが始まった。今は定番の自己紹介の時間。
「逢沢 ののかって言います。中学では吹奏楽部に入っていたんですけど高校では、勇気を振り絞ってダンス部に入りたいと思っています。性格が引っ込み思案なので高校に入って変われたらいいなって思いました。よろしくお願いします♬」
「えっと、青海 駿太郎と申します。見た目こんなにごつくて坊主だけどじゃんじゃん話しかけて貰ったら全然喋るんで大丈夫っす。部活は見た目どうり野球部に入りたいなと思います。俺、高校ってどんなところか分からなくて不安なことばっかだったんですけど、このクラスだったらイケると思うんで、よろしくお願いします。」
「関根 美海って言います。なんか見た目からおとなしそうとかよく言われるんですけだそんなことなくて結構アクティブでバレー部に入りたいなって思ってます。好きのものでアニメとか漫画とかもよく見たりするので話が合いそうな人は、気軽に話しかけてください。よろしくお願いします。」
話長いよね。こんな自己紹介って喋るものだっけ?。自己紹介の途中で笑いをとる所を挟んで盛り上げるものだっけ?端的に必要な情報だけ開示してください。
何で女子の自己紹介ってこんなに嘘っぽく聞こえるんだろうか。俺の性格が悪いからかな。合間に入る本当におとなしそうな男子、女子の自己紹介に本当に癒される。
ちなみに俺の自己紹介失敗したようです。まばらな拍手でした。
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突然だが、そして別に自慢ではないが俺が通う高校は偏差値が高い。県内ではトップクラス。だからかいわゆる意識高い系が多数を占めているような気がする。俺のクラス1年B組の状況が普通ならばだが。入学当初にもかかわらずもうグループができていたしな。
中学の友達かなと思ったが、あいつら普通に「どこ中?」とか「いつも何してる〜?」とか聞いていたから多分初対面だ。後、盗み聞きじゃなくて聞こえちゃっただけだから。そこ重要。犯罪だめ絶対。
そういえば今日誰とも喋っていないのでは?
「帰ろう」
深く考えるのをやめることにした。
まだみんな教室にいるのか、やけに人気がない校舎を歩く。精神的疲労が大だったので、ゆっくりと階段を降りていた。
「あ!」
「えっ?」
ふり返ると女の子が迫ってきていた。やだ、突発的モテキかしら。
「ぶへっ」
俺は女の子正面でうけとめると、背中から階段に落ちっていった。踊り場で女の子に馬乗りになられた状態で止まる。奇跡的に、本当に奇跡的に頭から血は流れていないし気絶もしなかった。ただ背中と後頭部がめちゃくちゃ痛い。
「いたたたたた。」
それは、こっちのセリフだね。
「えっ!きゃあ!」
女の子は悲鳴をあげて飛び上がる。そりゃそうだろうな見知らぬ人のうえに乗っかってるんだから。これで顔を見てびっくりして立ったとかだったらショック。
「ご、ごめんね!私の不注意に巻き込んじゃって。遠江くん……だよね?」
俺の名前知ってるんすか?やだストーカー?もう最近物騒ね。どうりで俺の後ろから落ちてきたわけだ。
「あからさまに『誰?』って顔してるけど同じクラスだよ。しかも隣の席。」
これは流石にアウトですね。自分でもクズだなと思います。とりあえず土下座とかしとけばおk?
「別に謝んなくてもいいんだけどさ。今も助けてもらったわけだし。でも改めて自己紹介するね。私の名前は 英 花凛。よろしくね。」
そう言って彼女は八重歯を見せて笑った。