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デス・ドリーム

 何の脈略もなく、父親に炊き立ての米の塊をぶつけられた。


「なんだよ親父! 食べ物粗末にするんじゃねえよ!」


 俺は親父に向かって叫んでみたが、親父はニヤニヤ笑うだけ。


 そのニヤニヤ顔のむかつく事むかつく事・・・・・・

 とにもかくにも、あの親父の目ん玉にカラシ塗りつけてヒーヒー言わせてえ!!

 てか、死んで欲しい!

 もーいやだもん!

 そう思っていると、親父は俺にコロッケを投げつけ

 さっき以上のニヤニヤフェイスでこちらを見るのであった。

 


 そんな夢を見て目を覚ました。

 

 夢オチかよ!


 そんな突込みがどこからともなく聞こえてこない訳ではない。

 しかし、本当にそんな夢を見てしまったんだから仕方がない。


 目覚めてすぐさま、ボロアパートの辺りを見回す。

 良かった

 ご飯粒もコロッケも散乱していない。

 部屋が無事なのを確認してほっと一息。


 しかしよくよく考えるとなんだかムカムカと腹が立つ。

 よくよく考えて御覧なさい。

 親父にご飯の塊とコロッケぶつけられてニヤニヤされる夢。


 こいつは地味に嫌な夢ランキングのベスト10に入るといっても過言ではない!


 しかしひとつ残念でならないことがある。


 どうして

 どうして俺は

 親父の顔面めがけてご飯を!

 それも炊き立ての熱々ご飯を!

 時速160キロの剛速球で投げ返してやらなかったのか!


 いやいやまてまて

 ご飯よりも、揚げたてのトンカツのほうがよりダメージを与えられるかもしれん。

 もちろんソースとカラシをたっぷりぬったトンカツだ!


 ああ、投げつける時に飛び散る衣!

 緩やかに回転しながら飛んでいくトンカツ!

 まさに芸術!

 美の極致


 はっ

 いかんいかん

 俺は一体何を考えているのだ・・・・・・


 あれだな

 寝起き特有の意味不明状態

 俺語で言うと頃の『ホゲホゲ状態』

 ゆえに仕方ないだろう。


 ホゲホゲ状態の脳も、やっと活動をしだしてきたころ。

 俺は夢のことが少し気になって、実家に電話をしてみた。


 電話に出たのは母親だった。

 まぁ母親が電話に出るのはいつものことだ。

 うちの父親は電話に出たがらない。

 仕事の電話があっても、出たがらない。

 携帯なんかを発明したやつを殺してやりたい!

 などとブツブツ言っていたのを聞いたことがあるほどの電話嫌いだからだ。

 

 話が横道にそれちまった。


 電話に出た母親の態度がおかしい事にすぐ気がついた。

 声が震えているのだ。


「どうした? なんかあったの?」


「お父さんが、お父さんが死んだの・・・・・・

 目にカラシを塗りたくったあと死んだの・・・・・・」


 母親は正気を失った声でそれだけ言うと、そのあと黙り込んでしまった。


 死んだ?

 しかも、よりにもよって目にカラシを塗った後で?

 一体全体どういう死に方だ・・・・・・

 手首を切るならわかるが、カラシを塗る・・・・・・

 親父が死んだショックより、その事が気にかかって仕方がなかった。

 

 まさか、まさかだけど

 俺が夢の中で思ったとおりのことが、現実の親父に起こった。

 なんてこと・・・・・・・

 ま、まさか、漫画や小説じゃないんだからあるわけないよな!

 

 俺は何も考えない事にした。

 次の日、俺は実家に帰り通夜に出た。

 力ない母親の肩を俺は支えてあげていた。


 通夜を終え、俺はボロアパートに帰ってきた。

 母親についていたかったが、俺にも仕事や生活というものがあるのだ。

 まぁ実家には妹がいるし、なんとかするだろ。

 


 とにかく疲れた。

 俺は布団にもぐりこむや、一瞬で眠りの世界へ落ちていった。


 


 夢を見た。


 会社の嫌な課長が、指からミサイルを発射してきたので

 俺は颯爽と回避した。

 しかし、課長はおもむろにYシャツをめくると

 さながら裸踊りを踊るような格好で、デベソからでレーザーを乱射した。

 俺はそのデベソを引きちぎってやった。

 課長はピクリともしなくなった。



 目が覚めた。


 なんていうか、夢ってのはホントに何でもありなんだな。

 そう思った。


 ふと目覚ましに目をやると、見事に遅刻の時間だった。


 俺は急いで身支度を整えた。


「いやぁ、昨日通夜で疲れ果ててしまいまして、ついうっかり・・・・・・」


 そんな上司への言い訳の台詞も三回ほど練習しておいた。

 

 しかし、俺のこのいい訳台詞の練習は無駄に終わった。

 なぜなら、言い訳するべき相手であるところの上司がいないのだから。

 正確に言うと

 

 もうこの世にいないのだから。


 会社に着くと、会社はひどく荒れていた。

 散乱する書類、煙を上げるPC

 よくみると壁も穴が数箇所開いている。

 

「一体なにがあったんだ?」

 

 恐る恐る俺が同僚に問いただしてみると

 同僚は青ざめた顔でこう言った


「いきなり課長が服を脱ぎだして・・・・・・・

 か、課長へ、ヘソから・・・・・・・

 レ、レーザー撃ち出して・・・・・・・・

 そ、そのあと自分でデベソを引きちぎって死んだ・・・・・・・

 アハ、アハハハハハハハハハハハハhhshシャh」


 同僚もそのあと救急車で運ばれていった。

 軽い精神錯乱状態になったのだろう。

 

 なるほど、課長はヘソからビームが出せる男だったのか。

 さすが課長になるほどの男はヘソからビームくらい出さないといけない。

 そうすると部長レベルだと、腕からビームサーベルくらいは楽々出すに違いない。


 俺の脳は軽い『クルクル状態』におちいっていた。

 『クルクル状態』とは俺語で現実逃避状態の事である。

 断じてクルクルパーになった訳ではない!


 ともかく、俺の遅刻は誰にも怒られる事はなかった。


 こうなると2度ある事は3度あるなのである。


 次の日に見た夢はこうだ。


 巨大ロボットになった三丁目の駄菓子屋のおばあちゃんが

 都庁を椅子代わりに腰掛けながら


「はい、おつり300万円ね」


 と得意のおばあちゃんギャグをかまして上機嫌だったのだが

 いきなりおっぱいをふりまわし

 都庁もろとも自爆した。


 そうか乳首が自爆ボタンだったのか・・・・・・

 俺は同でも良い事に感心していた。


 目が覚めると

 都庁が爆発していた。

 近くには全長200メートルのおばあちゃんロボの残骸も散乱していた。


 

 もうわかってしまった。

 わかりたくなどないけどわかってしまった。


 俺の夢は現実になる!


 しかもホントどうでもいいような夢が現実になる!


 ならばどうする・・・・・・

 俺はどうすればいい?

 

 寝なければ夢は見ない!

 うむ、確かに正論だ。

 しかし、寝なければ死んでしまう!

 これもはなはだ正論だ。

 

 そして結論は出た

 


 俺は死にたくない!!



 そんなこんなで夢は毎日見続けた。

 おかげで今は世界地図すら書き換わるほどの大惨事が毎日のように起こっている。

 

 アメリカのとなりに北朝鮮があるわ。

 月にはウサギが住むわ

 火星人はほんとにタコだわ

 イケメンでモテモテだった嫌な奴のチンコがミサイルになってアンドロメダまで飛んでいくわ


 大きい事から小さい事まで

 ありえない出来事がごく当たり前のように起こる世界が誕生した。


 そう、俺はもう神と同じような存在なのだ。

 新世界の・・・・・・

 もとい夢世界の神なのだ!




「って夢を見たんだよ?」

 

 喫茶店で俺は友人に長々と語った。


「お前、そこまで話しておいて夢オチかよ! ほんとばかじゃねえの!」


 友人は俺をせせら笑うと


「こんなつまんない話に長々と付き合ったんだから、ここの勘定はお前もちな」


 そういい残して去っていった。



 その夜夢を見た。


 友人の頭からモヤシがはえる夢だった。

 俺はアイツの股間にもモヤシがはえているんだろうか?

 そんなどうでもいい疑問にとらわれた。


 俺は目覚めてすぐさま友人に電話をした

 

 ワクワクしながら



おしまい☆


 


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