根
ある女性に慕われることを
望んで書いた作
根
草はおのおの自分の背丈まで生えねば困る。もし草が勝手に背丈を超えたら地球は草だらけになってしまう。ある日、ある兵隊とお姫様の所へ、それぞれ一通ずつ手紙が届いた。その差出人は、魔法使いと書かれてあった。しかし、お姫様への手紙は怪しいという理由で届かなかった。
あるイタチが樹の根元を掘っていたところ、土の中から金貨が一枚ころげ出て来た。イタチは不思議に思って、もっと掘って見ると、もう一枚、今度は銅貨が出てきた。イタチは不思議に思って、もっと掘って見ると、もう一枚、今度は真ちゅうのお金が出てきたではないか。
イタチは、得意になって叫んだ。
「おうい、ここにお金が埋まってるぞ。みんな出て来て一緒に掘ってみろよ。楽しいぜ。ガハハ。」
ある老人が、使いの者に言った。「これ、テヤンスキー、ちょっとこちらに来んか。ワシは、少し町まで買い物に行ってくるから、お前は、ここから一歩も出てはならんぞ。よいな。」
テヤンスキーは扉を開けたまま少しだまりこくって、こう考えた。ーーあのおじいさんは少し頭が悪いから、、きっと今日は、一日中戻ってこないぞ。よし、ひとつ、気分転換に外に出かけるか。テヤンスキーは言い付けも守らずに、うれしそうな顔をして、外出してしまいました。
さあ、それを聞いた魔法使い、あわてたのなんのって。
「おうい、誰かおらんか。昨日出した手紙が、もう無事に届いているかどうか、誰か見てきてくれんか。」
おとといの晩、夕食の支度を済ませてから、魔法使いは、気が気ではありませんでした。
出したはずの手紙が、なかなか届きにくいのが、その国の事情です。テヤンスキーとかいう若者が外出さえしなければ、それも良かったのですが、今となっては、後の祭りです。
この国ではお姫様というものは、お上品と決まっています。しかし、昨今の事情では、ちと違うようです。さて、かのお姫様、今日も眠気には勝てないようで、いつもの通り、うたた寝をしておりました。すると、窓の所に、小鳥が来て止まっているではありませんか。
チチ、チチ、かわいらしい声で鳴いているのです。
お姫様、少し寝起きが悪いらしく、小鳥の声に耳も貸しません。寝起きの悪いのは、兵隊さんも同じでした。
お城の壁にもたれかかって、ひとねむりしていたところへ、こんな伝言があったのです。--兵隊へーーすぐにお城の周りを巡っている川の中に落ちているという、山の中の涙のしずくを持って来なさいーー王様
兵隊は、もちろん意味がわかりません。
散々探した挙句に、川の中に、あの魔法使いの手紙を落としてしまったのです。
兵隊はもちろん、おもしろくありません。
王様の言い付けに従って、よいことがあった試しがありません。でも、一つだけ、いいことがありました。
川の中に、真っ黒な光る石の玉があったのです。これはよい物を拾ったと、兵隊は喜び勇んで、王様の元へ行きました。
「王様、王様のおっしゃるものはございませんでしたが、このような光る石の玉をお持ちしました。」
兵隊はかしづいて、頭を垂れました。
「うむ、そなたの申す通り、このは石は、実に光り輝いて、尊く見える。一度、プロの鑑定士に見せよう。」
「よいか、皆の者、まだ山の中の涙のしずくとやらは見つかっておらぬ。皆の者総出で探すのじゃ。」
王様は、一つ気になる」ことがありました。姫のことです。姫はいつも寝てばかりいるので、世間のことに、少し疎いのです。ですから、このことも知らせておこうと思って、人を使わしました。さて、話は戻って、かのイタチ君の話ですが、なんと、あのお金を全て失ってしまった
のです。失ったといっても」、なくしたわけではありません。盗まれたのです。
ある時、イタチが台所で洗い物をしていると、ヘビのような細長い生き物がヌッと陰から出て来て、イタチの金貨、銅貨、真ちゅうを全てくわえて逃げていったのです。
イタチは怒って、このことを魔法使いに直談判しに行きました。
「おい、魔法使い、俺の金貨、銅貨、真ちゅう貨を奪ったのは、貴様だな。」
「なんでもワシのせいにするな。まあまて、ワシが良い解決法を考えてやろう。その代わり、お前の持っているものの中で、一番値の張るものをワシにくれ。」
イタチは少し考えましたが、だまされているとは気付かず、
「よし、じゃあ俺の大切にしているナイフをやろう。その代わり、ちゃんと見つけないと承知しないぞ。」
イタチはそう言って、帰って行きました。
魔法使いは、イタチが少しかわいそうになりましたので、3つのうち、真ちゅう貨だけかえしてやることにしました。
そこで、ヘビに命じて、お金を戻させました。
お城では、ついに山の中の涙のしずくは見つからず、兵隊もお姫様も疲れて寝ていました。王様は一人考え事をして、大ホールで椅子に座って起きていました。
今夜、ヘビの脱けがらのような一匹のトカゲが会いにくると、魔法使いから伝言があったのです。もちろん何のことかさっぱりわかりません。
魔法使いの言うことは、いつもヘンテコです。
でも、なんだか怖いので、とりあえず起きていました。
ある晩、似たようなことがあって、王様を困らせたことがありました。
それは、大切な王様の冠のダイヤモンドが誰かに盗まれたのです。王様は、また何者かに大切なものを盗まれるといけないので、警備の者を2人起こしておきました。すると、夜更けになって訪ねてきたのは、何とあの老人です。
「おお、トロスリクマンではないか。こんな夜更けに一体なにがあったのじゃ。一体、何の用か。誰に頼まれたのか。」
トロスリクマンは少し困った顔になって、王様に応えました。
「王様、大変申し上げにくいのですが、先日申し上げた山の中の涙のしずくは、実は存在しないものでした。私、魔法使いから、真相を聞きました。
ある日、魔法使いが山の中に入ってみると、大きな切り株が一つあったのです。そこで腰をかけていると、お尻の下に何やらおかしなものがあったので見てみると、金貨、銅貨、真ちゅう貨の3枚です。魔法使いはそれをイタチの住む木の下に埋めておいたのです。ところがそれをイタチが見つけて騒いだものですから、魔法使いは、それをイタチから取り上げてしまいました。
イタチは、真ちゅう貨をかえしてもらったたのですが満足せず、魔法使いに再び他の2枚を見つけるように言ってきたのです。魔法使いはあきれて、2通の手紙に金貨と銅貨を入れて、お姫様と兵隊に送ってしまいました。もう2度と、イタチの手には届かぬよう。しかし、イタチは、またも見つけるように言ってきたので、魔法使いは、とうとう私をして、イタチのところへ説得にゆかせたのです。私は、詳しいことはわからぬものですから、とりあえず魔法使いの言ったように、イタチのところへゆき、2枚はもう見つからないから、あきらめるようにと言いました。しかしイタチは納得せずに、王様に言いつけるとか申したものですから、魔法使いは、とうとうあきらめて、王様のところへ手紙を出して、山の中のなみだのしずくというものがあるから探して欲しいと頼んだのです。私は、、きっと魔法使いは、王様が探しても無理ならイタチもあきらめるだろうと思ったのではないかと思います。
ところがイタチは私の留守中に、こともあろうか私の家に侵入し、私の家を荒らしたのです。それを聞いて魔法使いはついにキレて、イタチの持っていた真ちゅうの貨へいも取りあげてしまいました。
私が思いますに、あの真ちゅうの貨へいは、山の中のなみだのしずくであったのではありますまいか。というのは、山の中には涙のしずくというものは、どこにもございません。あったのは、あの3枚の金貨、銅貨、真ちゅう貨ばかり。私の家に押し入ったイタチは、おそらく他の2枚があるかと思ったのでしょうか。あったのは、あの黒い光る石だけでありました。怒ったイタチは、その石をお城の川の中に投げ捨て、、いらぬものとしたのですが、あれこそは誰にもわかるはずもない。川の中の河の中の瞳の月という大変貴重な石であったのです。
私と魔法使いは、3日3晩ねることもしないで、結局手に入れたのは、山の中の涙のしずくという大変貴重な、だれにもわからない、幻のコインだったのです。その証拠に、私の家の引き出しの中には今も大変貴重なものがどっさりと眠っているのです。
ですから、王様の手に入れられた河の中の瞳の月ももちろん、大変貴重なものにちがいありませんぞ。何しろ、魔法使いの手に入れたもので貴重でなかったものはありませんのでな。私の家にも、そのようにして、転がりこんできた宝が、山のようにありますから。魔法使いは、大変優れたお人ですよ。




