表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
404 Room -ノットファウンド ルーム-  作者: マチゲリータ
9/60

#1-9 奇態 - odd -

 #1-9


 ────404


 それを見た瞬間、僕は全身が栗立つ感覚を覚えた。


 404 Room……。


 まさか、本当にあるなんて思いもしなかった。


 この先に、僕が願う物がある。

 その事実を認識した瞬間、心臓が激しく脈打ち始める。


 ドクン……ドクン……ドクン……


 速度を増していく度、内側から体中が熱くなるのを感じた。


 ぼんやりとした蝋燭の光が揺らめき、404の文字を時折鮮明に映し出している。

 僕は畏怖しながらも、意を決してドアノブに手をかける。


 ひんやりとした金属の質感を掌に感じた。

 自分の手が震えているのがわかる。


 震えを止めようとしても止まらない。

 この震えは恐怖からか、好奇心からか、希望からか、僕はもはや正常な判断を失っていた。


 ドアノブをしっかりと掴み、ゆっくりと回す。


 カチャ……────。


 ドアの機構が動いた音。

 その音を聴いて、僕のさまざまな感情は更に加速していく。

 

 めちゃくちゃになりながら加速した感情を抱えながら、僕は意を決してドアを開けた。


 ギィィィ………。


 軋む音が不気味だった。

 静寂に包まれたこの館の中で、鮮明に乾いた音を響き、部屋の中が露わになった。


 ────暗黒。


 そう表現する他無かった。

 線が暗黒の中へと向かっているのだが、今まで光っていた線は、暗黒を境に光を失っている。


 つまり、「闇よりも黒い「暗黒」」がそこにはあった。

 

 僕は何故だかその暗黒を視認した時に「死」を連想し、とてつもない恐怖を感じた。

 しかし、僕がここに来た意味は「願いを叶える為」……すなわち「死ぬ」為だ。

 「願いを叶えてくれる部屋」……僕の望む「死」を叶えてくれて、僕が楽になれるのであれば、僕はこの部屋に入るという選択以外ありえない。


 これで最後だ。

 これで僕は楽になれる。

 そうだ、これでいいんだ。

 行こう。

 踏み出そう。

 

 僕は、目の前にある暗黒に足を踏み入れた。


 コツ……。


 踏み出した一歩が、暗黒へ向かう。


 コツ……。


 また一歩、暗黒に包まれていく。


 コツ……コツ……コツ……コツ……。


 暗黒に向かって歩み始めた僕の視界は一瞬にして完全なる「黒」へと変貌した。


 まったく光の無い世界、これまでに体験した事のない「闇」。


 体中がその闇に包まれ、僕は闇の中へと溶けたような気分になった。

 

 ────ギィィィ!!バタン!!!


 視界が変貌したその刹那、背後で大きな音がした。

 僕は焦って振り向いたが光などどこにも存在しない。何も見えない。

 もはや、振り返っているのかすら分らなかった。僕が向いているはずの「背後」は、本当に背後なのか、暗黒の中で方向感覚すらも失っていた。


 ドアが閉まった────。


 僕がその事実を認識した瞬間、全身を何かに捕縛された感覚を覚えた。


 「ッッ!!」


 声にならない声を上げる。

 体中に蔦が巻き付いたような感覚。しかし、その蔦は絶えず蠢いている。

 ぐにゅぐにゅと動きながら僕の体に巻き付いた「蔦」のような何かは、あっという間に僕の自由を奪ってしまった。


 ミシミシミシミシィッ!!


 「ぐあっ!!」


 巻き付いた「蔦」の様な何かが急速に僕の体を締め上げる。

 締め上げた瞬間、僕の全身に棘のような物が突き刺さる強烈な痛みを感じた。


 ミシミシミシィッ!!


 もはや声すらも出なかった。僕は喉の奥から小さな嗚咽を吐き出した。

 体中に感じる痛みの元から生暖かい物が流れ出すのを感じる。


 血か。


 僕は死ぬんだ。


 よかった。


 本当に良かった。


 何もかもがこれで終わる……。


 強烈な痛みの中で徐々に意識が薄れていく。

 体中の力が抜け、体温が下がり、寒さを感じた。


 ────プツッ


 突如耳奥で糸の切れるような音がして、その瞬間、僕は意識を失った────。



Next -> 15/09/14

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ