表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
404 Room -ノットファウンド ルーム-  作者: マチゲリータ
7/60

#1-7 能動 - Active -

 #1-7


 視線は画面に向かい、左手に持っているスマートフォンを離そうと思っても離す事が出来ない。

 すると突然、独りでに右手が動き、その人差し指が画面へと向かっていく。


 嘘だろ。

 

 なんで勝手に動くんだ。


 止まれ。


 止まれ、止まれ。


 止まれ止まれ止まれ!!!


 抵抗しようとも自分の思い通りに体は動かない。

 しかし、僕の感情はむしろこの事象を望んでいた。


 強く念じた先で起こったこの事象を、この事象の先にあるかもしれない可能性を、僕は心の中で信じている。


 今起こっているこれは紛れもなく、僕が望んだ物だった。


 じりじりと右手が画面に近づき、震える人差し指が画面の表面に触れる。僕はついにメッセージのURLをタップした。

 

 ジジジ……ガガ……


 耳障りな音が聞こえ、画面が明滅する。


 ガガッ……


 ほんの一瞬の出来事。そのはずなのに、とても、とても長く感じた。


 ジー……ジジ……ジジジジ


 世界がスローモーションになったような感覚。

 僕の居る薄闇が一瞬凍り付いてしまったかのような、何にも似つかない空気の動き。


 ────[[僕はここだ]]


 くぐもっていた声が突然鮮明になり、その瞬間、僕の体と視界が自由になった。

 

 ふと部屋を見渡すと、ベッドから部屋の外へ向かって、有刺鉄線のような棘をつけた白色に発光する線が伸びている。


 気づくと僕は線を辿って部屋を飛び出していた。


 「至!」


 母の静止を振り切り、僕は走り出す。


 リビングを出て、玄関へと走る。

 変わらずぼんやりと光り続ける線は家の外まで伸びていた。


 この線の行き先がどこなのか、どこまで続いているのかはまったくわからない。

 でも、この線の先にきっと「404 Room」があるのだと確信していた。


 走りながら僕は線を辿る。

 辺りはすでにかなり暗く、立ち並ぶ薄緑の色を帯びた街灯が長い影を伸ばしていた。


 入り組んだ住宅街の路地の中を、線を追いながらすり抜ける。

 コンクリートの感触が何度も足の裏を打ち続けている。

 結構な速度で走っているにも関わらず、不思議と息は切れない。


 しばらく線を辿り続けると、古びた小さな洋館に辿り着いた。

 住宅街の外れだろうか、今までこんな場所があることを知らなかった。


 異様な雰囲気を醸し出した古びた小さな洋館は二階建てで、その周囲に建物はなく、ぽっかりと空いた敷地に「ここだけが異次元なのではないか」と思ってしまう程に突如として存在していた。


 汚れた窓からはからは赤褐色の明かりが漏れている。

 誰か居るのだろうか……。



Next --> 15/09/07

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ