表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

本から始まる

本の上で見た夢

作者: 白樺セツ

初めて人の依頼で書いた小説。

友人が砂糖を吐きだし、犠牲になってしまった。

朗読用に書いた小説なのでとても短いです。

そして普段書く小説はもっと辛い。



目を半分開け、次のページを開いて文字列を辿る。

図書館はとても静かで、私が座って本を開いている以外はごく数人しかいない。


真っ暗な視界を前にして、はっと気付く。

どうやら、少し眠っていたらしい。

目をこすりながら、小さく欠伸をしていると、クスクスと小さく笑う声がした。私がこっくりこっくりと船を漕いでいたのがおかしかったのかもしれない。ちょっと恥ずかしく思う。

私としては、今読んでいる部分の続きが気になって、眠るどころじゃない。

でも、睡魔は私を襲ってくる。


目で追っている文字がぼやけて読めない。早く続きが読みたいのに。

誰かが近くで笑った。いつの間にか、横に座っていたらしい。


「何を読んでるの?」


その誰かが聞いてきた。この声を私は知っている気がする。


「妖精の本、だよ……」


ちゃんと答えられたかは、分からない。眠気に負けてしまう。

また聞かれた。「どんな話なの?」と。


「妖精が出てきて、女の子が頑張るの……」


頬に硬い物が当たる。机だと分かった。


「面白い?」

「うん……」


ふわふわと頭の中に、本の内容が浮かんで、思わず口元が緩んだ。


「凄く、面白いよ……」


頭に何かが乗る。暖かくて、大きな手だ。手は私の髪の流れる方へと優しく動いた。


「また今度、話を聞かせてくれないかな?」


声と同時に、椅子を引く音がした。

頭は眠っていても、耳だけは、正常に音を拾う。

だから「君の話をね」と最後に耳元でささやく声も聞こえた。


私の肩にふわりと何かをかけた後、声の主は消えてしまった。




起きれば、もう図書館には誰もいなかった。

ただ私の肩にかかっていた制服の上着には暖かさが残っていて、つい先程まであの声の主がいたんだとわかる。


不意に、上着から何かがはらりと落ちた。

本を借りる時に提示する図書カード。

その名前を見て、やっぱり、とあの声の主を思い浮かべて胸が熱くなる。


さて、どうしよう。明日この上着の持ち主を探して返さなければならない。だけどその前に、この本を全部読まなければ。

読んで、探して、もう一度……。




めずらしくほのぼのできた小説です。

そんな小説をいっぱい書きたいと思う今日この頃なのに、ほとんどの作品がどうあがいても絶望へたどり着くのは一体全体どうしてでしょうか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして、こんばんは 読みやすくて描写が丁寧で、うららかな午後の雰囲気が伝わってきました。 連載物のプロローグのようにも見えますが、シリーズは続編のような形で進むのでしょうか? こ…
2015/01/10 02:19 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ