表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/150

迷いの正体

 ここで、もう1度、僕の“迷い”を整理してみよう。

 迷いの正体がわからなければ、解決法も見出しようがない。


 最初に、僕は小説を書いている。

 ここまではいい。これは、事実だから。


 次に、僕は“究極の小説家”を目指している。

 ここまでもいい。これは、目標だから。


 では、究極の小説家とは何か?

 それは、次から次へと傑作をバンバン生み出すことのできる小説家である。

 ちょっと難しくなってきた。けれども、これもまだ大丈夫だろう。なぜなら、これは定義だから。


 さて、問題は次だ。

 僕は、究極の小説家になる為に、能力を上げ続ける。そうして、小説を書き続ける。自分が傑作だと信じて疑わない小説を。

 ここでおかしくなってくる。“僕が傑作だと信じて疑わない小説”と“現代の世間の人達が傑作とする小説”の間に差が生じてしまっているのだ。もはや、それは“差”なんで言葉では表現しきれない。“溝”だ!それも、とんでもなく幅が広く、信じられない程に深い溝!もう、全然底が見えないくらい深い!!


 ここで、どうするか迷っている。

 その迷いを簡単に説明すると、こういうコトになる。

「僕が妥協して、世間の人々が信じている傑作を書く方向へとシフトするか?

 あるいは、それとは逆に、世間の人々が僕の書く小説に追いついてくるのを待つか?」

 この、どちらの道を選択するかで迷っている。


 これまでは、後者を選んでいた。余裕で後者を!!

 僕は、人々が追いついてくるのを待っている。それどころか、追いつかれた時の為に、さらに先に進んでおく。追いつかれた時に、「お?まだ先があるのか?凄いなこの作家は」「え?まだまだ先があるの?」「ええ!?もっと先に進んでいるのか!?どうなってるんだ、コイツは!?」と思わせる為だ。

 だが、この方法では、既存の読者との差が広がっていく。それは、特に“意識の差”だ。僕が、必死になってがんばればがんばる程、その差はグングン広がっていく。

 僕がグングン成長していくのに対し、ほとんどの読者はそうではない。読書に“成長”なんて求めてはいない。あるのは、目の前の快楽だけ。1冊の本を読んで、「ああ!わかる!わかる!」という共感があったり、「ああ~、楽しかった!」と思えれば、それで満足なのだ。

 もしも、成長があるとしても、それはオマケ。楽しんだ上で、ついでに成長もあればいいな、といった程度のものなのだ。僕のように、先に成長があって、ついでに楽しければいいというのとは違う。全く逆なのだ。

 これでは、差が広がっていくのも頷ける。


 さて、ここでどうするか?

 読者が望んでいるように、読んで楽しい本を書くべきなのだろうか?その上で、成長もある。そういうタイプの小説を。

 それとも、これまで通り、自分のスタイルを貫き通すべきなのか?最初にあるのが成長であり、能力の向上である。それで楽しめれば、なおいいかな、というもの。


 ここに結論が出せないでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ