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短い文章にコンパクトにまとめる欠点

 ここまで僕の文章を読んできてくれた人ならば、わかっていると思うのだが。僕の書く文章の特徴は、短い文章の中に濃縮させた情報を無理矢理に詰め込むというものである。

 僕は、この文章の書き方を極める為に何年も修練を積んだ。おかげで、かなりのレベルにまで到達できたと自負している。


 目指すのは、新聞の1面に載っているコラム。「天声人語」とか、そういったものである。短い文章の中に濃縮された情報が詰め込まれている。

 もっと言えば、俳句や短歌。さすがに、あの領域までは到達できてはいないし、するつもりもない。あまりにも文字数が少な過ぎて、語りたいコトを全て詰め込むのは物理的に不可能となってしまう。ただし、基本思想自体は、俳句や短歌と全く同じだと言っていいだろう。

 “短い文章の中に世界を描く”この基本思想である。


 けれども、この超高密度化された文章にも欠点があった。それは、読者によっては「説明不足で何を言っているのかよくわからない」と感じてしまうことである。

 もちろん、この手の文章を読み慣れている人にとっては、何の問題もないだろう。むしろ、余計な言葉が削ぎ落とされている分、スラスラと読み進めるコトが可能なはず。だが、それは“理想の読者”である。そういった理想の読者の数は、少ない。僕が思っていたよりも、かなり少なかったらしい。

 ここは、完全に誤算だった。

「世の中には、数多くの本を読み、無数の本の読み方を知っている読者がもっと大勢いるはずだ」と、勝手に思い込んでしまっていたのだ。これは、完全に僕の落ち度である。


 また、前回までに書いた情報というのは、なるべく書かないように気を使ってきた。それこそが、理想の文章であると信じて疑わなかったからである。

 だが、それでは読者には伝わらない。新しくこの話から入ってくる読者だっているかも知れないじゃないか。そういった新規の読者の為に、これまで無駄だと思っていた情報も、しつこいくらい何度でも繰り返し書こう。書き続けよう!


 あの人が昔、言っていた「だって、世界は私のような人で満ちているのだもの」というのは、こういうコトだったのだ。僕は、あの時に気づくべきだったのだ。“作家が思っている程、理想の読者の数は多くはない”と。

 きっと、これは僕だけではないはずだ。僕以外の無数の小説書きが、同じ問題を抱えているに違いない。もちろん、問題はいくらか違うだろう。“濃縮されている文章を書いているから”それが理由ではないだろう。

 それでも、大勢の小説を書いている人間が、理想の読者を想定しながら文章を書き続けているコトには違いがない。「このくらいの文章で読者は理解できるはずだ」と勝手に思い込んでしまっている。


 ここで僕は反省した。今後は、もうちょっと無駄な文章も加えていこう。短く効率よくまとめた文章は、数多くの読者を逃してしまっている。

 さて、他の同じ失敗を繰り返している諸君は、どのように考えるのだろうか?

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