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お前が作ろうとしているのは作品か?それとも、製品か?

 人の評価だとか、アクセス数だとか、ポイントだとか。そういったモノがあまり気にならなくなったのは、いつからだろうか?

 言っておくけど、全く気にならないわけではない。僕だって、人の子だ。そういうのが気になる日はある。というか、毎日のように気にしている。精神状態のすぐれない日など、物凄く気になる。ただ、そこにあまり重きを置かなくなった。それも、また事実。


 昔は、物凄く気になった。気になって気になって仕方がなかった。そんな時、奴が声をかけてきたんだ。心の底に居座るあの男。ここ最近は、不動明王のような格好をし、どこかのお堂だか何かの床にドデンと座っているアイツだよ。

 なんて声をかけてきたかって?そうさな。確か、それはこんな感じだった。

「お前、いっつも人の評価を気にしてるな。そんなに人の目が重要か?」

 それに対して、確か僕はこんな風に答えたはず。

「そりゃ、重要さ。なんといっても小説を書いているのだもの。人の目が気にならないわけがない」

 奴は、さらにこう続けた。

「じゃあ、お前にとって小説とはなんだ?なんの為の書いている?誰の為に書き続けている?」

 僕は、こう答えた。

「そりゃ、自分の為だよ。でも、人に読んでもらいたいという気持ちもある。それが、いけないコトかい?」

 男は攻撃の手を緩めない。こう畳み掛けてきた。

「ああ、いけないね。オレは気に食わない。そんな心構えで、“究極の小説家”とやらに本当になれると思っているのかね?」

「思っているさ!読者がいなければ、小説は成り立たないだろう!」

「ハッ!おめでたいね。そんなんじゃ、いつまで経っても傑作なんて書けやしないよ。人の目なんて気にしてる内はな!」

「読者の目を気にするコトの何が悪い!」

「じゃあ、聞くがね。お前が作りたいのは作品か?それとも製品か?」

「作品?製品?それらが、どう違う?」

「全然違うね。その違いもわからないんじゃ、お話になりゃしねえ。箸にも棒にもかからない状態。1度、独りになって、よ~く考えてみるんだな」

 そう言って、男は姿を消した。


 それから僕は考えた。独り孤独に考えた。そうして出した結論は、こういうものさ。

 読者の目など全く気にせず、己の世界を描き出す。全くの無から、何かを生み出す行為。そこから誕生したもの。それこそが、作品。

 それに対して、読者に媚び、読者のコトを考え、読者をいかに楽しませるかに重点を置く。それが、製品。あるいは、商品と表現してもいいだろう。

 それは、世界的に見れば、どちらが正解というものでもないのだろう。人によってスタンスは違う。違っていい。ただ、“どちらを目指すか?”は決めておいた方がいい。そうしなければ、どっちつかず、中途半端な存在に成り下がってしまう。

 きっと、奴が言いたかったのは、そういうコトだ。


 それ以来、僕は、人の評価があまり気にならなくなった。完全にとはいかないまでも、他の人達に比べれば、かなりその感覚は薄い方だろう。アクセス数も評価も全くなくてもやっていける。小説を書き続けることはできる。そのくらいには成長できた。

 おそらく、究極の小説家に到達した時には、それが全く気にならなくなってしまっていることだろう。

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