ここは天国かと思ったら地獄だった
朝、起きて。
小説を書いて。
次の小説を書く為の情報を集めて。
小説を書いて。
小説について考えて。
また小説を書いて。
夜、寝る。
もちろん、それ以外の時間もいくらかはあるけれども、基本的にはそれだけ。
朝から晩まで、小説について考えて、小説について学んで、あとはひたすらに小説を書き続けるだけの人生。
贅沢も、ほとんどしない。人と会話もしない。全ては小説の為。史上最高の小説をこの世界に誕生させる為にある。
最初、この人生は天国だと思っていた。
「こういう人生が歩みたいな」と思って、実際にやってみて、「楽しい!」と思った。「こんなにも楽しい人生があったなんて!楽しくて楽しくてたまらない!!」と心の底から、そう思った。
けれども、しだいにそうではなくなっていった。
毎日毎日、1日の休みもなく小説を書き続ける。それが、どれほど辛いものか知らなかった。それ自体、ほとんど不可能に近い。
いや、たまには休んでもいい。休んでもいいのだが、そうすると腕が鈍る。以前の能力とテンションを取り戻すのに時間がかかってしまう。だから、なるべく休まないようにする。休むのが恐くなってくる。
そう!ここは天国ではなく地獄だったのだ!
毎日毎日、地獄の責め苦を味わいながら生きていく。
止まることの許されない列車。ひたすら、針の山を登り続け、血の海を渡り続けなければならない。
けれども、それも不思議なモノで。続けていれば、段々と慣れてくる。慣れてきて、どうとも思わなくなってくる。鼻歌交じりに生きていけるようにもなってくる。
地獄も、慣れれば楽しいものさ。
こうして、僕は繰り返す。
地獄と天国を行ったり来たり。
小説を書くというのは、そういうもの。