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プロの作家でも、こんなものなのか…

 いつものように図書館に通う。ここのところずっとそうだ。

 朝起きて、小説を書いて、軽く食事をする。必要ならば洗濯をしたり、布団を干したり。それから、また小説を書く。これで、もう夕方。

 ここで、図書館の時間。日によっては、1日に2度も3度も足を運ぶ。サクサクッと小説を書き終わって、時間にゆとりがある日に限られるけれども。


 休館日か、そうでなくとも余程の大雨や大雪の日以外は、ほぼ毎日、図書館までの道を往復している。

 滞在時間は、その日によって違う。5分やそこらで切り上げるコトもあれば、2時間も3時間も本を読み続ける日もある。用は本ではないからだ。そんなものは単なるキッカケに過ぎない。大切なのはアイデア。次の小説を書く為の新しいアイデアが得られるかどうか、それだけ。

 素晴らしいアイデアが思いつけば、図書館での滞在時間など5分でも3分でもいい。逆を言えば、長く居続けるというコトは、それだけ次のアイデアが浮かんでこないというコトを意味している。


 図書館に寄ったついでに、ひさしぶりに“文芸雑誌”なるもののページを開いてみた。

 以前は、全然読むコトのできなかったタイプの雑誌だが、今回は違っていた。好きな作家が何人か連載していたので、その作品に関してはスラスラと読み進めるコトができた。けれども、それ以外はほとんど駄目だった。

 それでも、「前に比べれば、読書レベルが上がっているな」と感じた。2~3ヶ月前には、ここまでの読書能力はなかった。読めるタイプの小説も、そのスピードも上がっている。それが、自分で実感できる。

 自分でもエンターテインメント小説を書いているおかげで、その手の作品を読む能力も上がったのかも知れない。


 2~3作、「これは、おもしろいな!」と思える作品があった。

 ただ、それと同時に1つ疑問も沸いた。“不満”と表現した方がいいかも知れない。確かに、おもしろい。おもしろいし、表現も上手いなと思うのだけど、決定的に量が少ないのだ。

 数えてみると、大体、原稿用紙で15枚程度。6000文字いかないくらい。どの作品もそんなもの。それが、月刊の文芸誌に連載されている。本1冊分の分量が溜まるまでに、何ヶ月…いや、何年かかるのだろうか?


 また、作家の1人は、巻末にこんなコメントを残していた。

「今月は、仕事が重なってしまった。同時に4作の連載である。申し訳ないが、その内の2作は休ませていただいた」というような内容。

 ここで、僕の頭の中に疑問符がいくつも浮かぶ。


 ?????


 たかが原稿用紙15枚程度の依頼。それが、4つ?月刊で?どこに休む理由がある?その必要がある?

 ま、いろいろと事情はあるのだろう。連載小説の他にも頼まれている仕事があるのかも。出版する本の推敲やら、校正されてきた原稿の見直しやら、小説の賞の審査員やら。あるいは、それ以外の雑務かも。親戚がどうとか、家族がどうとか。

 ただ、それにしてもだ。他に仕事を持っている作家(たとえば、大学の教授をやりながらとか)ならば、いざしらず。専業でやっている小説家が、たかだた15枚×4=60枚程度の原稿が書けないものかね?

 もちろん、一発で書いて、それで終わりというわけにもいかないのだろうけれども。何度も読み直したり、推敲したり。そういうタイプの作家なのかも知れない。だけど、それにしても…だ。


 それは、ここ何ヶ月かの間、僕が1日に書いている分量に過ぎない。毎日、原稿用紙15枚以上。ほぼ、1日の休みもなく続けている。どんなに調子が悪くても、5枚や10枚は書いている。平均すれば、確実に15枚は越えるだろう。

 つまり、それが4つあったとしても、4日あれば終わる計算。他の仕事や雑務は、残り25日程でこなせばいい。


 内容だって、そこまで差があるわけではない。

 人によっては、僕の小説の方が読みやすくて、おもしろいという人もいるくらいだろう。

 ま、内容に関しては、ここでは置いておこう。どうしたって、主観も入ってしまう。ただ、分量的には原稿用紙15枚×4つ程度を毎月こなすのは不可能な話じゃない。充分にこなせる。それどころか、楽々達成できる目標。


「なんだ、プロの作家でも、こんなものなのか…」

 それが、僕の感想。

 そこには、失望の思いが含まれている。と、同時に、いい自信にもなった。

 このくらいならば、こなせる。それも、余裕で。なにしろ、こちらは小説以外の全てを切って生きているのだ。家族も親戚も何もない。そのような雑務は全て捨てて生きていける。ただ、小説のみに没頭できる。そういう人間なのだ。

 もしかしたら、たった1人で小説の神を相手に戦い続けてきたこの僕は、僕自身が思っていた以上に真の実力を身につけつつあるのかも知れない。既存のプロの作家など相手にならないくらいのレベルで…


「取れるな…これは!」

 その思いは、確信に近づきつつある。

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