「悪魔との契約で、僕は1枚ずつ増えていく小説を書かないといけなくなった」という小説に関して
「悪魔との契約で、僕は1枚ずつ増えていく小説を書かないといけなくなった」という作品を書き終えることができた。
この作品に関しては、いろいろと語りたいコトが多い。
ただ、細かい部分について語るのは、ここではやめにしておこう。その代わりに、大きな流れというか重要なポイントについて、いくつか語っておこう。
最初に言っておくと、いくらかネタバレがあるので、もしも読む気のある読者は、先に本編の方を読んでおいた方がいいと思う。
「ネタバレ上等!」あるいは「読んでみたけど、途中で断念してしまった…」という読者は、先にこちらの文章を読んでみて欲しい。それで、理解度が深まり、本編の方もいくらか読みやすくなるのではないだろうか?
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この小説は、元々、長い文章を書くのが苦手という僕の弱点を克服する為に始められた。
結局、その弱点を克服できたかどうかは、よくわからない。1話ずつを長くするために、細切れの文章をいくつも載せてしまったからだ。これで、長い文章が書けるようになったといえるのだろうか?
ま、それでも、以前よりかはいくらか長い話も書けるようになってきた。それだけでも、価値はあったかも知れない。
もう1つの目的として、「僕は、夢の中で何をやっているのだろうか?」という疑問を解消するというものがあった。「僕は小説家になれない」シリーズの第1作目で、僕が抱いた疑問だ。
「悪魔との契約で、僕は1枚ずつ増えていく小説を書かないといけなくなった」という作品を、最後まで読んでくれた読者には、その答を示すコトができたと思う。
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この小説を書き始めた時、頭の中には何もなかった。ただ、真っ白な部屋の中で、主人公の“僕”が小説を書き続ける。それも、1話ごとに原稿用紙1枚ずつ増えていくという方式で。
決まっていたのは、それだけだった。
作品中で書き進められている「勇者と思っていた人が、実は極悪人だった」という小説に関しても、何1つ決めずに書き始めてしまった。
最初は、主人公さえ決めていなかった。だから、最初は男性口調で始めてしまった小説が、途中から女性の主人公となってしまう。ただ、それも上手い具合につじつまを合わせるコトができたのではないだろうか?(ちょっと無理はあるけどね)
それが、何話目だっただろうか?3話目か4話目くらいを書いている時に、天からアイデアが降りてきた。終盤の重要なエピソードの1つが決定したのだ。そこから先は、そのアイデアを主軸にストーリーを組み立てていった。
それで、瞬く間に終盤のストーリーが決まっていった。あとは、途中のエピソードを埋めていくだけ。それだけだった。正直、その部分はそんなに苦労はしなかった。半日か1日考えれば、次の話が思いつく。それを原稿用紙に叩きつけてやればいい。
問題は、終盤の数話。1話1話が長くなってしまったコトもあったが、それ以上に難問が待ち受けていた。それは、“ストーリーが既に決まっている”という部分だった。
もしかしたら、普通の人からすれば、それは贅沢な悩みなのかも知れない。「先の展開が思いつかなくて、続きが書けないならわかる。だけど、先の展開を思いついているのに、書く気が起きないだなんて!なんて贅沢な悩みなんだ!」そう思われる人もいるかも。
けれども、僕は情熱で書くタイプ。なので、先の展開を決め過ぎてしまうと、小説を書く気そのものが失われてしまうのだ。頭の中で完成してしまった作品など、わざわざ文字にして書き記す必要がない。そのように感じてしまうのだ。
もちろん、この思いも小説に使わせてもらった。それで、ちょっとだけ書き進められた。
それでも、長い間、休んでしまった。40日以上も!
原因の1つは、この作品をある小説の賞に応募するコトに決めたせいだ。その賞には、「作品は、10万文字以上で書くように!」という規定があったのだ。
これが、思っていた以上に足かせとなってしまった。しかも、先の展開は決まっている。さらに、1話あたりのノルマさえ存在する。これでは、3重苦だ!ヘレン・ケラーである!!
さらに言えば、別の小説も同時執筆していた。それも、4作同時連載だ!!これで4重苦!!いや、それ以上!!
…というわけで、難易度の上がってしまったこの小説は後回し。他の小説から1つ1つ終わらせていった。具体的に言えば、「マン・ネリカの一生」「普通の小説」「ニートくんの大冒険」そして、この「だから、僕は小説家になれない」の4作。内2作は完成させたが、新たにもう1作始めてしまった。それが、「ニートでチートな勇者アカサタが異世界に転生してハーレムを形成しつつ世界を救ったり滅ぼしたりする物語」
結局、「ニートくんの大冒険」は諦めて後回しにして、残り3作を同時連載でいくコトに決めた。この時点で、締め切りまで1ヶ月を切っていた。数日はゆとりを持たせたいので、残り3週間程度。そこまでに3万5000字を書かなければならない。
文字数自体は、そんなに大変ではない。ただ、他の作品もこなしつつ、1話あたりのノルマという条件もある。正直かなり苦しかった。書いていてストレスも溜まる。胃も痛くなった。
それでも、どうにかこうにか最後まで終わらせた。
最終的には、いい経験になったと思う。けど、もうやらない。やるつもりはない。根本的に、僕は「長い文章を書くのが苦手」「何枚以上書け!という条件が苦手」「何文字以上書け!という条件も苦手」だと悟った。
だから、そんなものにとらわれずに、自由に好き勝手に、好きな文字数と好きな枚数で書かせてもらう。その方が、作品の質が上がるとわかったからだ。
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それと、結果的には、会話文を書くいい訓練にもなった。
元々、僕は会話のシーンを書くのが苦手だった。2人で会話しているシーンは、まだどうにかなるとしても、複数の人物が一同に会して会話を交わすというシーンは特に苦手だった。どう書けばいいのかも、よくわからなかった。基礎からなっていなかったのだ。
どうにかこうにか、それもできるようになってきた。まだ“上手い”というレベルには到底達していないだろうが、それでも基本的な手法は身につけられたのではないだろうか?
これは、非常に大きな収穫。
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全体的には、非常に不格好な小説になってしまったように思う。
自分で後から読み直してみてもそう思うのだから、初めて読む読者にとっては、なおさらだろう。取っつきにくくて仕方がないだろう。特に、後半の1話あたりが長くなってしまった数話に関しては。
それでも、全体的な流れは、かなりよくできているのではないだろうか?細かい部分を修正すれば、読みやすくて、いい作品になるかも知れない。
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…というわけで、いろいろゴチャゴチャと語ってしまったが、いい勉強にはなった。それだけは確か。部分的にも総合的にも、小説を書く能力は飛躍的に向上したと思う。以前は書けなかったようなタイプの小説も書けるようになった。
なので、「もう絶対にやらない!」と断言してしまったけれども、どこかでもう1度挑戦してみるかも知れない。もちろん、その時は、もっと条件を緩めて。「1話の枚数か文字数だけ」か「全体の枚数か文字数だけ」それ以外は全部自由!その程度の条件でいいのではないだろうか?
ま、いずれにしても、他にも書いておかなければならない小説がいくつも頭の中にある。先に、それらを終わらせてしまわないと…