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普通の読者さん

 突然、1人の女性が現われて、僕に語りかけてくる。

「あなたの書く小説は、意味がわからないのよ」と。

 彼女は、普通の読者さん。ヘルマン・ヘッセが言うところの1番目の読み方と2番目の読み方が少しできるだけの普通の読者に過ぎない。


「僕の書く小説の意味がわからないって?」

 僕は、普通の読者さんに、そう尋ねてみる。

「ええ、そうよ。なんだか難しい内容がいっぱい書いてあるばっかりで全然意味がわからないのよ。文章だって、読みづらいったらありゃしないし」

「僕の書く文章が読みづらい!?いや、それはそうかも知れない。慣れるまでは、そう感じるだろう」

「そもそも慣れたりしないもの。そこまで行く前に読むのをやめちゃうもの」

 ま、そうだろうな。普通の読者ならば、そうなるだろう…

「それで、全部の小説についてそう思うのかい?1つの例外もなく?」と、僕は普通の読者さんに向って、もう1つ尋ねてみた。

「いいえ、全部ではないわ。中には、読みやすいモノもある。でも、そういうのはちょっとだけ。残りは全部、読みづらいか意味がわからないの」


 結局、そういうことなのだ。彼女の言うコトは当たっている。僕の書く小説は、普通の読者には理解されない。そうして、世の中に存在する読者のほとんどは、彼女のような人なのだ。もしくは、文字の書いてある本なんて全然読まない人か。

 ここで、僕は考える。もっとターゲットを広げるべきなのかも知れないな…と。万人に受けるような小説に変えるべきなのかも。内容も、文体も、何もかもを…

 もちろん、万人といっても、100人が読んで100人、1万人が読んで1万人が喜んでくれるような小説なんて書けはしない。そんな作品は、この世の中のどこを探したって存在はしない。ただ、“比較的多くの読者が喜んでくれるような小説”のコトだ。


 それができないわけではない。ただ、そういうのはとても疲れる。まるで、ホストクラブのホストのような気持ちになってくるのだ。

 最初は、読者のコトを考えながらサービス精神旺盛に書いていた作品が、段々そうではなくなっていく。徐々にオリジナリティを増していき、最終的には自分色に染め上げてしまう。いつものパターンだ。僕の悪いクセ。

 いや、それが悪いかどうかはわからない。“読者が楽しめるような作品”という意味では悪いかも知れないけれども、“文学性や芸術性を追求する”とか“何度も読み返して楽しめる”という意味においては、むしろ“いい小説”ということだってできるのだ。

 しかし、世界はそんなモノを求めてはいない。それも、また事実。


 さて、どうしたものだろうか?


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