表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷夢の国のアリス  作者: 影宮ルキ
94/102

幽霊メール

 名前が思い出せないまま、しばらく経った。

 目が覚めなかった期間は二週間ほどだが、異常は見られないと言うことで、いろいろ検査をして家に帰っていいと許可が出た。

 検査中に考えたこと、あの夢の事、姉さんの事、無くした記憶の事。

 名前だけじゃなくて、ところどころ記憶もないみたいだけど、ないから確実なことは言えない。どことなく、心に穴が開いてしまったような気分になる。

 寂しい。

 家に帰っても、姉さんはいない。お母さんも早くにいなくなってしまった、だからお父さんが退院できた私に色々世話を焼いてくるけど、ちょっと一人になりたい気分。

 あの夢はなんだったのか。

 目が覚めても、寝てても、ずっとぼんやりしている気がする。

 家に帰ってきても、何もしたいことはないし、寝ぼけたままな気持ちだ。

 フラっと、自分の部屋に入って、壁にかけてあった高校の制服が目に入った。

 あぁ、そうだ。高校に入って、私の目標は破たんした。

 ずっと姉さんの代わりに生きようと思って、姉さんの前をして生きてきた、でも姉さんの時は中学の時で止まってしまっている。

 行きたい高校があったみたいだから、頑張って勉強して、その高校に入った。

 でもその後は? 

 その後の姉さんは知らない。だからどうしていいかわからなくなった。

 姉さんの事を思って、考えて、でも余計わからなくなってきて、だから私は……。

 そう、姉さんを突き落してしまったとこと似たビルに入った。

 あははっ、これじゃあ自殺でもしようとしてたみたいじゃない。

 ……。

 苛立って、何回も来ていない制服をぐちゃぐちゃにして放り投げた。虚しくなって、そのままベッドに倒れ伏す。

 このまま寝たら、あのワンダーランドの夢に戻れないかしら。姉さんと、また会えないかしら。

 夢の中でも殺してしまった姉さんに、また、会えないかしら。でも夢だから、結局私の願望で、それはどうしたらいいんだろう。

 頭の中もぐちゃぐちゃ。視界に入る制服もぐちゃぐちゃ。

 ……いっそあのまま夢の中で死んでしまってたらよかったんじゃない? 人は思い込みで死ねるって言うし、夢の中で死んだら、現実でも死ねたんじゃないの?

 重いため息を一ツついて、手のひらを見る。

 油性ペンで、書いてもらった私の名前。読めるけど、理解できない記号みたいなそれを見て、そっと呟く。

「あ、ん」

 姉さんがつけてくれたって言ってた。姉さんの名前はお母さんがつけてくれたから、私の名前はお父さんがつけるはずだったんだって。

 でも姉さんがどうしてもって聞かなくて、私の名前はこれになった。

 何でこの名前にしたんだろう。何を思ってつけたんだろう。姉さんは私の名前呼んでくれた? どんなふうに? どのくらい? 覚えてない。

 もう一つ、重いため息をついた。

 今日も平日、明日も平日。でも学校には行きたくない。どうふるまっていいかわからない。

 でも家の中ですることもない。特別やりたいこともない。

 ゲームでも初めて、引きこもりライフでも楽しもうか? 楽しめないか。

 でも暇つぶしにはちょうどいい。

 押入れを漁って、いい感じのゲームを探す。作業ゲームはいろいろ考えちゃうからダメだ。冒険もの、ホラーもの、何がいいかな。

 そこで一つのパッケージが目に留まる。

「『ガーディアン・イン・ワンダーランド』? うわ、古……」

 五年以上前のものだった。そういえば、姉さんとよく遊んでいたような……?

「これ、やろうか……」

 携帯ゲーム機でやるゲームだ。オンラインでやることもできるけど、一人でやるのももちろんできる。

 ワンダーランドを舞台としていて、自分はそこの冒険者として異世界から招かれる。ワンダーランドの住人から出される依頼にこたえる冒険もの……って、うん? 

 なんか、あの夢の世界に、似てる?

 急いで本体も探し出して、ゲームを起動する。

 パッケージは二つあったけど、両方文字が書かれていた。たぶん一つは私の名前、もう一つは姉さんの名前……亜梨守(アリス)。だから迷うことはなかった。

 ベッドに腰掛けて、ゲームが起動するのを待つ。

 セーブデータは一つ。そこに映る少女のアバターを見て、目を見開いた。

 銀髪、青い目、私のきていたアリス装備と同じ服。ゲームのキャラだし、可愛くないはずがない顔。

 これ、夢の中の私じゃないの。

 いったんゲームの電源を落とし、姉さんのカセットを起動する。

 金髪、碧眼、私と似てるけど少し違うアリス装備。

 そのアバターは夢の中の姉さんそっくりだった。

「どういう、こと? だって、ええ?」

 最近よくあるゲーム世界トリップもの? でも夢よ? え、夢オチってだけ? 私のラノベ的冒険譚は終了しましたってこと? それだけの話?

 意味がわからない。でも、なんとなく惰性的に、カセットを私のものに変えてからゲームを続ける。

 ワンダーランドは一国だ。ハートの国と名付けられた一つの国だけ。周りは森に囲まれていて、外の世界はないと言う。

 依頼を出してくるのはその国で重役の人たち。女王陛下、白兎、帽子屋、騎士……あの世界で役付だった人たちだ。キャラデザインも、似てる……。あ、でも、動物系の人は、動物そのものだった。

 役付以外にも、侯爵夫人、ドードー、メアリー・アン、グリフォン、他に何人かいたけれど、侯爵夫人は夢と同じだった。ドードーは鳥。メアリー・アンやグリフォンなどの見たことない人も多かった。

 でもやっぱり、似てる……世界も、雰囲気も、人も、何もかも?

 あっちの世界でのカード集めのヒントになるかもしれない、と思ったけど、戻れないなら意味がない。

 意味もなくワンダーランドをさまよっていく。

 夢の世界がゲームの世界なら、冒険ものだから力があったのに。戦える力があったのに。足手まといにならない力が……。

 ない物ねだりしても遅いけど、悔しい気持ちが溢れてくる。

 自分のアバターの名前は自分の名前だからか、理解できない。夢の中そっくりのアリスがいるのに、その名前が理解できないとか、ちょっと気持ち悪い。

 暇つぶしのためにゲームをやってるはずなのに、どんどん気分が悪くなってきた。

 いったん寝ようかな、とか思っているとメールが届きましたと言うアイコンが光る。

 ……誰から?

 ゲーム中のキャラからメールが届くことはない。オンラインだったら友達登録している人なら届くけど、今はオフライン。ついでに言うならオンラインで友達登録した人なんていない。いつも姉さんとローカル通信だった、から……。

 なら、届く可能性があるのは姉さんだけなんだけど、姉さんはいないし、姉さんのカセットも起動してないし、通信だってしてないし、さらに言うならメールしたことなんてない!

 何かの不具合か何か? とか思いながらも、恐る恐るメールのアイコンを開く。

 差出人は、白兎? 白兎って、ラビ……じゃ、ないわよね。ゲーム中の白兎? でもメール機能は、キャラクターに対応してないし……。

 頭の中?で埋め尽くしながら、メール本文を開いた。


『差出人:白兎

 宛て先:アリス


 こっちはもう一週間たったわ。いつまで寝ているの? 早く戻ってらっしゃいな。』


 え、誰?

病院の対応がこれでいいか謎ですが、ゲームの事もふわっとしていますが、フィクションってことで大目に見てくださいませ……。お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ