表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷夢の国のアリス  作者: 影宮ルキ
86/102

望み叶える彼女の話

 私がどこで何していようと、アリスの記憶は進んでいく。場所を変え、時間を変え、人を変え、どんどんゲームは進んでいった。

 時々私を思い出しているのか、暗い表情をすることもあったけど、アリス……姉さんはこの世界になじんでいるようだった。

 明るく笑って、元気に話して、いろんな人と知り合って……。

 特にアズと一緒にいるときは幸せそうだった。姉さんは綺麗なものが好きだったから、あの幻想的な森が気にいったんだろう。そこの主であるアズも、とても美しい羽を持っている。気にいらないはずがない。

 きっかけはそんな感じだとは思うけれど、アズは普通にカッコいい人だった。内面イケメンだ。アリスは綺麗なもの目的で通っているうちに、アズの内面にも魅かれたらしい。自覚をしているのかしていないのか、アズを見る目は恋する乙女のものになっていく。

 アズの森ではチェシャ猫やトカゲさんがよく一緒にいた。三人の中ではアズが一番年上で、兄かお父さんのような立ち位置に見える。アリスは他二人にからかわれながらも、アズとその二人と一緒に過ごす時も好きみたいだった。

 アリスはどんどん悩む回数が減り、どんどん笑顔が増えて行った。

 長い間、私の事で悩まなくてよかった。このままアズには姉さんを笑顔にし続けてほしい。私を忘れるくらい、幸せにしてほしい。

 そう思ったが、ダメだった。幸せにしすぎたみたい。

 ゲームの進行具合的には、半分くらい。ある時からアリスはゲームを進めなくなった。それは進められないのもあったし、クリアできないこともあったけど、積極的ではないのは誰の目にも明らかになっている。

 まだ見ぬ役付がいるのに、アリスは探そうともしないで、アズの森へよく遊びに行っている。そう噂になるほどだった。

 持っているカードはアズとビル、ジャック、グレイ、ミカ、ネネ、ラビ。エースはあのニセモノの図案だ。

 ディーとダムにゲームはしかけられているが、それはアリスが見抜けないだけ。ずっとみんなそう思っていた。でもアリスが徐々に、あからさまに二人を避け始めたことにより、皆がアリスに怪訝な目を向けていく。

 それの理由はチェシャ猫が訊ねて分かったことだ。

「ねぇ、あんた最近あいつら避けてない?」

「誰の事?」

「双子。ディーとダム」

「……」

「もしかしてあんた、ゲームされてるってわかってる? わかってたら、クリアできるもんね。やんないだけ?」

「……そんなの、知らないわ。それは本当よ!」

「それは? じゃあ、他はなんなの?」

「……」

「なんで答えないわけ?」

「私……」

「なぁに?」

「私、この世界にいたいのよ! 帰りたくない!!」

 そう叫んだアリスは、言い切った後にやってしまったと顔を青くする。

 チェシャ猫の方も顔を青くしてアリスを見ていた。

「な、バカじゃないの!? ゲームしないならあんたこの世界にいられないよ!? わかってる?」

「でも、ゲーム終わったら、私、どうすればいいの? ゲームしないならここにいられないじゃない。じゃあ終わったら、帰らなきゃいけないじゃない!」

「しょうがないじゃん! だってあんた、この世界の人間じゃないんだから……」

「嫌! 帰る場所なんてない! この世界にいさせてよぉ!!」

 アリスの悲痛な叫びがこだまする。

 帰る場所なんてない。その言葉は私の心をずたずたに引き裂いた。

 私のせいだ。私が姉さん殺しちゃったから、姉さんの帰る場所がなくなった。私のせいだ。

 また大量にあふれてくる涙を払って、私は前回のアリスの記憶をしっかりと見る。

 これから、ここから、アリスの最後がきっと始めるから。前回のゲームの行方を、私はちゃんと見つめなくちゃいけない。じゃなきゃ償えないでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ