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迷夢の国のアリス  作者: 影宮ルキ
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砕けた飴を融かして

 チェシャ猫に連れられて、私の前に現れたこの子を見て、もうだめだと思った。私の企み事、白兎の願い事、騎士たちの祈り事、すべて終わってしまったと思った。

 けれど、今はどうかな?

 心が砕けてしまったように沈んだ瞳が、呼吸一つで元に戻る。砕けたガラス片は、本当は飴だったんだって? じゃないと説明つかないよ。

 熱を宿した瞳になって、砕けた破片が融け合わさって私を見る。力強くて、命の輝きにあふれてる。

 ……あぁ、この瞳なら、まだ大丈夫。まだ、仕えられるかもしれない……!

 甘い理想でも、切り捨てられるよりいい。無理だから、ただ、止めて、なんて言われるよりよっぽどいい。

 私だって、本物のハッピーエンドが見てみたいんだから!

 けどその感情は《帽子屋》じゃない。今の私でもない。ただの弟では、もういられなかったから。だから嬉しさを噛み殺して、いつものような笑みを浮かべるだけにとどめた。

「……いいよ、アリス。探してくれるのかい? だったら、賭けてみようか?」

 君の心に。君が諦めないことに。

 まぁ、君が負けたら駒にするだけだ。だから、また壊れるなんて、ユルサナイ、よ? アリス?

 ふふっ、頑張ってもらわないと。楽しくないのも論外だからね。

 ふふふ、ふふ……あぁ、視界が滲むよ。変なとこ鋭い君だけど、それはいいんだけど、これには気付かないでおくれ。出ないと威厳が保てない……、ね?


 なんだかグレイの声が震えたような気がするけど、気のせいかしら?

 さっきまでの狂ったような笑顔じゃなくて、今浮かべているのはいつもの穏やかな仮面。気分的には平常心が保てそうな感じだけど、これはこれで表情読めないから困る。しかもまた帽子被るし、見えん……。

「で、どういうゲームかしら?」

 さっき出したのはトランプ。それを使うんだろうけど、種目はなんだろう? ポーカー、ブラックジャック……ババ抜き? まぁ、色々あるよね……?

「トランプを使って、ゲームをしよう。でもそれはゲームでなくて、本当のゲームは、私からの問題だ」

 またグレイがトランプをきりながら、そう提案する。

 えーっと、つまり……うん?

「あなたを手に入れるゲームは問題の方で、遊びでトランプを使うってことでいいかしら?」

 げんなりした表情をしたからか、グレイがクスリと笑った。

「そう。話をね、したいんだ。その間にゲームをしよう。でもそれだけじゃ、つまらないから……少し遊びながらね。君も緊張し通しじゃぁ厳しいだろう? 君も話したいことあるよね? 長引くならより、リラックスしないと」

 ……確かに、聞きたいことはある。グレイの企み事、姉を殺したい理由。てか、姉って誰、とか。

 でも、ゲームもしながらか……大丈夫か。普通に遊ぶんだから、そっちに勝ち負けは関係ないわけだし、適当にやっててもいい。

 それに確かに、話しだけじゃ緊張するかもしれない。手持無沙汰かもしれない。リラックスリラックス。オーケー。その方がいいわ。

「いいわ。ゲームしましょう。もちろん、ゲームもね」

 さっきのグレイのややこしい言い方を思い出して、無理やり被せた言い方をする。遊ぶわ、もちろんあなたを手に入れるのが重要だけど。

「決まりだね」

 お互いに笑いあう。二人ともにっこりはしているけど、ちょっと目が笑ってない気がする。いや、グレイは見えないけど、白々しさはいつものことだし?

「では、何の遊びをしようか」

 トランプをきりながら、グレイが訊ねてくる。

 どうしようか。話に集中するなら、簡単な物の方がいいけど、ババ抜きとかじゃすぐ終わっちゃうだろうし……。七並べも二人じゃちょっと……。ネネとミカがいればもうちょっと楽しかったかな? そうでもないか……。

「決められないなら、神経衰弱だね。覚える必要はないよ。どうせただの遊びだ」

 ぼんやり悩んでいると、グレイが決めてくれた。手際よくカードを裏にしてバラバラに置いて行く。

 そうか、覚えなくていいんだったら、めくるだけ。それくらいなら話半分にはちょうどいい? 運試しってことになるけど、それで勝てばこの先希望が持てるかなー?

「さて、とりあえず、適当に一枚引いてくれ。私も引く。数が大きい方が、先行だ」

 そう言ってグレイは、自分の方に一枚カードを引き寄せた。私もそれに倣う。

 掛け声はなかったが、ほぼ同じタイミングで二人はカードを表に返した。

「スペードのエース……」

「ふふっ、クラブのキング。私が先行だね」

 グレイに負けたことよりも、一番引きたくないカードを当ててしまったような気がして、眉間にしわがよる。

 あぁぁああああ、幸先悪い。

「そんなに嫌そうな顔しないでやってくれ。彼も事情があるんだきっと」

 割と棒読みなんですが。そんな気ないなら庇わなきゃいいのに。

 ジト目で見たからか、グレイが肩をすくめて釈明をする。

「私は正直、今回の件はチェシャ猫派でね。でも、事情があるのは知っているから、まぁ、どうしても庇いたくはなるが、あまり気持ちは乗らないんだ」

 意味がわからない。

「わかってくれなんて言わないよ。だって、君と私たちは違う生き物だろうからね」

「ふーん」

「さて、まずは何から聞いてみるかい?」

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