最悪から一転、和やか(?)なお茶会
大きなお屋敷。その中にある周りを木々に囲まれた大きな庭のお茶会会場。
アリスを含めて四人、広すぎる長方形のテーブルに、芝生に直接置かれた椅子たち。テーブル上にはお菓子やティーセットが乱雑に置かれている。
椅子はどこにでも座っていいようで、皆で真ん中の方に固まって座った。……広いことに意味はあるのか……いつもはお客さんがたくさんいるとか?
「さて、ではまず自己紹介といこうかな?」
グレイ(仮)さんが、紅茶をすすめつつそう言った。
ちなみにお茶請けは、見事にオレンジ色……。
オレンジのタルトにオレンジのケーキ、オレンジのゼリー……もちろん、ケーキなどのスポンジ、クリーム、飾りもすべてオレンジ。
「……自己紹介の前にお茶菓子の説明をした方がよさそうだね……?」
「……ぜひ……」
「…………知り合いが嫌がらせ込みでどっさり送ってきてね、少なくとも今週一週間はこんな状態だ……」
「……どんな嫌がらせよ……」
確かに地味にきつそうだけどね!?
「そろそろただのチョコケーキとか、ただの! チーズケーキとかがくいてぇ……」
机に突っ伏し、耳をうだらせ、ただの、を強調するお姉さん。
「僕は、美味しければ、いいと思う、けど……さすがに、飽きて、きた……」
自分のカップにココアを注ぎつつむすっとしていうネネ(仮)。
「ふふふ……まだ半分くらいしか消費していないからね? 君たち? 残してダメにするのはもったいないだろう……?」
あらぬ方を見ながら、半分以上諦めた、暗い笑いを口にのせるグレイ(仮)。
「そうだけどさぁ……」
「もうちょっと、ばりえ、いしょ……ん……ぐすっ」
「安心したまえ! ……次は林檎が送られるらしいぞ? ……またどっさりと、だろうがな……」
「「……」」
……残しちゃダメって、だいぶいいヒト思考なんだろうけどな……うん、花とかの肥料にすればいいと思うよ……諦めていいと思うよ……。
「……どうしても食べられないのなら、そうしようか……」
「え?」
「肥料か、いい考えじゃないか……」
「え、声に出てた!?」
「いや、そんな顔をしていたよ」
「どんな顔よ!」
「……さて」
「スルーしないでもらえない!?」
「……さて! 自己紹介と参ろうか!!」
アリスの言葉を無かったことにするように、声を張り上げるグレイ(仮)。
だー!! ダメだこの人! 冷静な大人かと思ってたら、子供っぽい!!
「子供っぽくて悪かったね」
「またぁ!?」
「君がわかりやすいだけだよ」
「……」
「ま、まぁ、茶でも飲んで落ち着けって、な?」
お姉さんが、困り顔で、耳をピコピコさせながら何とかなだめようとしてくる。……くそっ、綺麗系なのにかわいく見えてくる……くださいその美貌!!
「ん? どうした?」
「……」
キャラかわりすぎじゃないですか!!
「……いつになったら自己紹介できるのだろうね……」
「アリス、それ、グレイ、そっち、ミカ……」
やんわりと指を指してる風。
風、なわけで、ほとんどわからない。
「へ?」
「それじゃわからないだろ? ネネ?」
「そうだぜ? しかも、ここは主であるグレイから紹介されるもんだ。お前がやっちゃダメだろ?」
「……お、そい、のが……いけ、な……ぃ……」
ごんっ
え、なんか、机にすごい勢いでぶつかりましたけど大丈夫ですか!?
「え、ちょ、ネネ君!?」
「あー、きにすんな。いつものことだから……」
「ネネはいつでも眠いからな。気にしなくても大丈夫だ」
「いや、すっごい音しましたけど!?」
「それでも起きないんだから、だいじょぶだろ」
「ホントかよっ!?」
「まぁ、では、自己紹介までの道のりが長すぎて今まで頑張って耐えてきたが、今、耐え切れなくなって眠ってしまったのが、ネネだ。“眠りネズミ”の、ネネ=マヤネ」
「その、眠りネズミって、ナニ? そういえばラビも似たようなこと言ってたような……」
「ラビ・ホワイト。“白兎”だね。うーん、そうだね……どうやって言えばいいか……まぁ、称号のようなものだと思ってくれていいよ。カード探しの材料にもなるだろうから、知っておいて損はないと思う」
「じゃぁ、役付には全員称号があるのね?」
「そうだね、そう思ってくれていいと思うよ」
「わかったわ」
「それで、そこのウサギが“三月ウサギ”ミカヅキ=マーチ。愛称はミカだ。人によるが、呼ばれたら問答無用で撃ち殺そうとするから注意したまえ」
「失礼だな。俺だって相手くらい考えるぜ?」
お菓子に夢中だったミカヅキさんが顔をあげる。
「え……」
「大丈夫だって! アリスならミカって呼んでもいいぜ? これからよろしくな!」
「は、はい、よろしくデス……」
……さわらぬ神にたたりなし……てか、さっきとキャラが……
「なんだよ? ノリ悪くね?」むっ
「そ、そんなことないわ! よろしくね、ミカ!?」
「おうっ! よろしくなっ!!」
耳が嬉しそうに跳ねている。……顔から下と、頭の上とのギャップがすごい……。いや、初対面とのギャップが……
「そして最後に私、“帽子屋”もしくは“マッドハッター”と呼ばれている、グレイだ。グレイ=アイアール。よろしく、アリス」
「よろしく。……ねぇ、どうしてあなたは二つも称号があるの? てか、どっちもスラングじゃない……」
「そうそう。帽子屋は、イカレタ、やつだからね。分かりやすくなったのがマッドハッターの方で、元々はただの帽子屋だったのさ」
「ふーん……?」
「ちなみに本当に帽子を売っているわけではないよ? と、まぁ、これくらいだろう。これから、長く付き合えることを望んで、よろしくお願いするよ、アリス」
「私はさっさと帰りたいから短いお付き合いになることを望むけど、よろしくお願いね、グレイ?」
「おや、これは厳しい……」
そう言ってグレイは喉の奥でくくく、と笑った。
「さぁ、お菓子はオレンジしかないが、紅茶はいろいろ取り揃えているよ。好きなだけ食べて飲むといい。君が来たから、まだまだ昼のはずだからね」
「私が来たから昼?」
「初めの日はそういう設定なんだ。最初はいろいろ探索してもらって、馴染んでもらおう、と、そういう親切設計だ」
それでいいのか時間!
「って、それじゃぁ、私探索しないといけないんじゃ……」
「焦っても仕方ないだろう?」
「なんだよ! アリスは俺たちとお茶するの嫌なのか!?」
勢いよく抗議するミカ。怒ってるようだが、耳が不安そうにピコピコ揺れた。
「いや、そういうわけじゃないけどね! でもね!?」
「だったらいいじゃねぇか。ちょっとくらいまったりするのも必要だぞ!」
「う、うーん、わかったわ。じゃぁ、もう少しゆったりさせてもらうわね……?」
「おうっ! 楽しんでくれよ!」
安心したのか満面の笑み。
にっ、とか、笑い方がかっこいいですけどね? でもですね、ちょっと怒ると怖いですよ!!
でもなー、耳がなー、可愛いんだよなー……ギャップがなー……え、しつこい?
「くくくっ、ミカは鞭で、ネネは飴かな?」
「……」
よぉくわかっていらっしゃることで……
「ん? どういうことだ? グレイ?」
「君はわからなくていいんだよ」
「???」
くっ、なんだ、このもやもやは……!!
「ほんと、今回のアリスは退屈させない気がするね。期待できそうだ……」
なんのだよ! ツッコミか? それともギャグキャラとしてか!? 私はギャグ要員として期待されてるのか!?
「どう、だろうね……くくくっ」
笑いながら言ってんじゃねぇ!!
ア「私のキャラぶれてない?」
作『……適当です。いいんです★』
ア「よくねぇわ!!」
……すみません! でもあれが標準です! アリスのキャラはブレブレで標準ってことにしておいてくださいませぇぇえええ!!