良いのか悪いのか
しっかり目が覚めて、ちゃんと体も動くことを確認してお茶会の席に戻る。別にお茶会続行というわけじゃなくて、ディーとダムとネネがずっとそこで待機してるんだそうだ。
姿を見せた私を見て、ディーとダムは泣きそうに迎えてくれた。ちなみにネネは夢の中に旅立ってた。
「「お姉さんよかったぁぁあああ!!」」
「心配かけてごめんね」
「僕ら何か変なこと言っちゃったんじゃないかって……」
「しかもやっぱりカード開けたら倒れちゃうし……」
「ほんとごめん……」
てな感じでわちゃわちゃしてる間に、ミカがネネを起こしてくれてた。
「さ、送ってくぜ。もうそろそろ真っ暗だしなぁ」
すでに日は暮れている。そろそろ、というか、もう真っ暗ですヨ。
「ねむ……」
「ちょっと、眠りネズミ? 護衛なんだからちゃんとしてよね?」
「さぼったのがエース様にばれたら大目玉だよ!!」
うん、帰るからディーとダムはわかるんだけど……やっぱミカとネネいるのかしら? 大所帯過ぎない? ねぇ??
でもなんかすごく警戒してるんだよな……主にグレイが。いつも通りだと思ってたけど、起きた時のこともあるし。なんか……そう言えばこの前も、招待状届けに来た時から? その時もおかしかったような……。
うーん、あの人も色々あんのかしらね。大丈夫かなぁ……?
目的の『誰か』がいるだろう方向に歩いて行く。王城に近い、どことなくセレブ感漂う街だ。こっちは確か、貴族とか、上流階級の人たちが住むような場所だ。
うん、場違い★
私一応王城に住まわせてもらってるけど、やっぱそう言うキャラじゃないし! ディーとダムは城で働いてるから、別に浮いてる感じしないけど!! でもミカも結構ラフな服装だし、ネネはパジャマっぽいし……。
ねぇ、これ大丈夫!? なんか……なんか大丈夫!?
「アリスー? 何きょろきょろしてんだ?」
「ミカ……ねぇ、私たち一体誰に会いに行くの?」
本当の事をそのままいうのもあれだったから、普通に気になることを聞いてみる。
うん、女王様と親しくしてるから忘れてたけど、そういえば、私一般人よ? そうそう高貴な方に近づいて大丈夫なの? いや、女王陛下が一番高貴なんだけども!!
「んー、ルールに触れそうだからな。あってからなら説明できんだけど……」
困ったように頬をかくミカ。その会話に双子も入ってくる。
「でもさー、説明できないのに会いに行くっておかしくない?」
「出会いをセッティングする時点でちょっとアウトな気がするんだけど」
「「帽子屋さん何考えてんの?」」
そーれーなー!!
会いに行かせようとするんなら、説明してくれてもいいと思うんだ。逆にどうして説明はだめで、直接会わせるのはいいんだ。会ったほうがカード開けやすいじゃん? 探す手間省けるじゃん? おかしいじゃん!!
「……ミカヅキ」
だんまりしてたネネが、ミカの服の裾を引っ張った。
「ん? んー……」
瞬間、ミカが顔を動かさないように、視線を辺りに走らせる。
「何? どうしたの?」
私の問に答えたのはディーとダムだった。
「なんかお姉さんを狙ってるやつがいるみたーい」
「こんな殺気ダダ漏れで、やる気あんの? って感じだけど」
「え、なにそれ……」
にこにこ笑ってる双子のせいで現実味がない。てか、そういうの声に出して言っちゃってもいいわけ? って感じ。映画とかだったら気づいたことをばらさないようにするじゃない?
けど、ミカの眉間にしわが寄っている。しかも手は銃をいつでも抜けるようにか、腰近くに置いてある。
ホント? 本当にヤバいの? え、なんなの??
「大丈夫だよお姉さん」
「もし何かあっても」
「「“アリス”の“双子”が守るから!!」」
いつも通りの双子の姿に、もし本当に危なくても、この子たちにはいつも通りの事なんだなって思った。それは頼もしいことなのか、子供が……って言うべきなのか、迷う。
これが本当にタダのゲームなら、心強い味方で嬉しい! で済むんだけどなぁ……。これただの三次元だもん。この子達は本物の生きてる人じゃない……。
まぁ、ミカもいるし……大丈夫でしょ。って言いたいけど、あれ? 大人はミカしかいないじゃん! これ大丈夫なの!?
「何もないんじゃねぇの。さすがにこんな往来で仕掛けてきたら、そいつは大馬鹿野郎だな」
ミカがニヤッと笑って、私の頭をポンポン撫でる。まぁ確かに、襲撃バレバレになっちゃうもんね。陽動とかならまだしも、それやる意味もない、し……?
「残念ながら、その大馬鹿野郎みたいだよ」
いつもと違う、しゃきしゃきとした喋り方が響く。ネネの目が、はっきりと見開かれた。
「え?」
その声さえちゃんと呟けたのか謎だ。耳に痛い、うるさい音が響いた。目が、いつもと違うネネに吸いついて離れなかった。それで気がついたら、いつの間にか私は誰かの腕の中にいて、周りは銀色の鎖に囲まれていた。
え、ねぇ、普通の、街中だよ? 日は暮れちゃったけど、まだ周りに人だっているし、明かりだってついてる。城も近い。それなのに、なんで? どうして襲われるわけ??
「アリス? だいじょぶか?」
上を向くとミカがきょとんと覗き込んでくる。
あぁ、ミカに抱き上げられてるんだ。あったかい。ちがう、私が冷たいんだ。
ネネの姿を見て、背筋がぞくっとした。よくわからない恐怖のせいで、体がうまく動かない。
「だ、じょうぶ……」
口もまわらない。寒い。
「悪い。急に引っ張ったから、驚いたか?」
「ちが……」
「?」
ミカには伝わらない。うまく言えなくて、視線を前に戻した。
あぁ、アレ、殺気ってやつだ。漫画とかで見る、こわいやつだ。でもきっとあの子は、あれを出せるあの子もあの子で……。とにかくあの子も、こわい子なんだ。
ミカもたぶんあの子と同じだから、私の恐怖は伝わらない。やっと、わかった。
グレイの言葉が頭をよぎる。友達のまま、いられるかな? すくなくとも、今は難しいかな? だって、私敵じゃないのに、こんなにおびえてる……。
私たちを囲んでいた鎖は、今は地面に落ちている。何本もの長い鎖が、ネネの緩い服の袖から吐き出されていた。どこに隠してたんだろう、とか、袖から出すから服がゆったりしてるんだ、とかどうでもいいことしか考えられない。
あれが私を守ってくれた。守って、くれたんだ……。
こっちから表情が見えなくてよかった。見えてなくても、まだ、なんか、少し怖くなる。優しいあの子が偽物だったみたいで……。
双子も、鎌をどこかから取り出して戦闘準備。少し見える横顔はどことなくつまんなそうだけど、怒っている。口がへの字だ。だから怖くない。怒ってるだけで、排除しようとか、殺してやろうとか思ってないから。
でも、前から、あの怖い寒気が吹き付ける。絶対殺してやるっていう、あのこわいやつ。それを出してるあの人は……
「きゃす、けっと……さん……?」
何度か会ってる帽子の男が、黄金色の目を怒りに燃え上がらせて私を睨みつけていた。




