キオクのカケラ③
少女が泣いている。泣きながら、笑っている。
空からは大粒の雨が降っている。けれど少女は傘を差そうともしない。雨がどんどんと少女の黒い服を濡らしていった。
「いなくなっちゃった。なら、どうすればいいの?」
その答えを、少女はもう決めていた。
――――間違った答えよ。
それでもその時は、少なくともその時は、それがたった一つの答えだと信じていたのだ。
――――嘘ね。知っていたはずよ。そんなことしても何の解決にもならないの。
「大丈夫よ、私がお姉ちゃんを生き返らせてあげるの」
なんと愚かな答えだろう。
――――ほら、分かってるじゃない。
うるさいうるさい。
――――だから、忘れて。思い出さないでって……。
いいえ、いいえ。手放さないわ。手放せないの。だって私が……。
ねぇ、ねぇ、あなたは誰? どうして私にかまうのよ? どうして放っておいてくれないの?
――――あなたのせいじゃないわ。……そういうふうに言われたいの? 許されたいの?
そうじゃない、そうじゃないの。そんなのなんかじゃ……。
――――じゃあ前を向いて。歩きなさい。
ごめんなさい……。
――――思い出しちゃった?
あの子たちは私に似てる。でも、全然違う。
――――そりゃそうよ。あの子たちはあなたみたいに逃げているわけじゃないわ。
そうね。私は、少女は……逃げてるだけね。
――――気づいたのなら、正して。向かい合って。それで?
やだ、向かい合いたくないよ。痛いよ。
――――まだまだ駄目ね。
ごめんなさい、ごめんなさい。
――――ほら、あの子は行くわ。間違った道に。
壊れたように泣きながら笑っていた少女が、一気に表情をなくして立ち去った。
この後少女は、最初に笑顔を作るのだ。大好きな姉がしていたような、穏やかな笑みを。
――――――バカね、そんなことしても喜ばないのに。あなたが幸せなら、よかったのに……。
これは記憶。大切な、記憶。
……あぁ、思い出してきた……。




