大袈裟な、たったこれだけの事
少し長くなってしまいましたが、ひと月分ということで!←
長さは不規則、更新は不定期……いや、申し訳ないです……。
いったんリセットするつもりで、今日は何もしない日に決めた。さすがになんか疲れちゃったし……。
と思ってたらちょうどいい感じにハートからお茶会に誘われたので、現在もったり休憩中。お菓子美味しい……太る……うぅ……。
「うふふ……おいしいかえ?」
美人さんが目の前で艶やかに微笑んでいる。ついでに横には何故かジャック。楽しそうに一緒にお茶会。え、なんで? エースは後ろで護衛してるんだよ? おかしくない?
って言いたいけど、皆気にしてないのでスルーします。いや、諦めのイキかな?
「おいしいわよ。止まんなくなっちゃうぅううう」
涙目でスタイル抜群の美女に嘆くと、小動物を見るような目でにっこりされた。
「どんどん食べればいい。まだまだたくさんあるぞ?」
「脂肪蓄えてもどうしようもないじゃない……」
くっ、腹に蓄えないで胸に行ってよ! なんで一番いらないとこについて、欲しいとこには何もないのぉぉおおお!?
「んー、別にアリスは重たくはないけどぉ、運動はした方がいいと思うよぉ? そっちの方が健康的だし、なにより、体力勝負のゲームしかけられたら大変そうだしぃ?」
お世辞でも軽いとは言わないこの男。思わず拳握りしめちゃったじゃない。ウフフ……。
「なんでお前がアリスの体重を知った風なのじゃ」
嫌そうに目を丸くしてジャックを見やるハート。
「えぇ? だってこの前抱き上げましたしぃ」
「……どうしてそのような状況になったのか、聞きたいところではあるが……だったらそこは軽いと言うべきじゃ。まったく、デリカシーのない奴」
「もっと言ってやってよハート! 気にしてるのに酷いのよ、本当!!」
イラッときたままハートにすがる。言ってやってくださいませお姉さま! 私とっても傷つきましたのよ!
そういう響きを感じ取ったのか、ハートが面白そうに目を細めた。そして大袈裟なほどあきれた表情を作って、私を抱き寄せる。
「これだから気が利かない男は困るのぅ。女は優しく愛でられるべきなのに。ねぇ、アリス?」
「そうよそうよ! もう、さっすがハート。わかってるし頼りになるわ!」
「うふふ。もっと頼ってくれていいんだよ。可愛いアリスのお願いなら、何でも叶えてあげるからね」
「きゃー、素敵、お姉さま! 美人でかっこいいなんて、そこら辺の男じゃ太刀打ちできないわー!」
女子同士のきゃぴきゃぴとしたノリを全力で楽しむ。あー、こういうの久しぶりで和むわぁ。……あれ、前のお茶会っていつだっけ? 久しぶり? 何がなんで久しぶり?
何かちょっと違和感を感じたけど、楽しいからいいか。ハートとは結構年が離れてそうだけど、ノリもいいし、可愛かったりもするし、ガールズトークできるのが楽しくて仕方ない。メイドさんとちょっとくらいはできるけど、こんなにきゃいきゃい騒げないからなー。
「……えっとぉ、完全にお邪魔かなぁ?」
「逆に何で参加しようと思ったんだ、お前……」
「そ、そこにお菓子があったからぁ……?」
「はぁ……」
後ろで男どもの残念な会話が聞こえるわぁ……。って、残念なのはジャックだけか。エース、私も呆れた溜息つきたいわ……。
あ、ハートも後ろの会話が聞こえたのか、呆れたように口をゆがめている。
「……男、というより、ジャックがダメなのかもしれないね」
「そうね……。エースはきっとできるわ気遣い」
「そうだのぅ……」
「んふふ……では私はどうかな?」
カオスめいてきた会話に、突如乱入者。私たちの背後から声が聞こえた。
騎士二人はすっと表情を引き締め、ジャックは立ち上がって前に出る。エースは逆に後ろに下がって相手を睨み付けた。両者、声をかけられるまで侵入者に気が付かなかったようで、顔に焦りが見える。
ハートはそっと抱き寄せた手を外して、ティーカップに手を伸ばした。
私は、この笑い方に聞き覚えがあったので振り返る。
「えーっと、グレイ……?」
「やぁ、ご機嫌麗しゅう、女王陛下とアリス。そして騎士様二人」
帽子に手をかけるが、決して取りはせず、そのまま片足を引いて礼をする。
イカレタ帽子屋。この状況でも飄々として、ジャックとエースの鋭い目つきを完全無視。本当にイカレてる……もうちょっと焦んなさいよ! ていうか、どうやってここに来たわけ!?
「顔に出ているよアリス。さすがに筒抜けすぎて、いかがなものかと思うのだけれど?」
「うぐっ!?」
「女同士の会話に入ってくるなんて、不躾な男。挨拶もできなかったら、首を刎ねているところじゃ」
「それは申し訳ありませんでした」
「何の用かなぁ? 帽子屋さん。さすがにここまで侵入されたらぁ……俺たち本気で怒らないといけないんだけど?」
ちょっとまずいと思ったのか、喋り方が一般人になった。これたぶんあれだ。騎士としての誇り、というより、やっべー、ハートに怒られるー、的な意味でだ。減給か減休を心配してるな。
ちなみに女王陛下は表面上静かに紅茶を飲んでいる。目を伏せているので表情が読めない。ちょっと怖い。オーラが、オーラが凍ってる……。
「あぁ、安心してくれたまえ。今日は双子の使いだよ」
ジャックの問を受けて、グレイはけろりと答えた。
「は?」「あいつら……」「妾は了承していない」
ジャックは目を丸くして、エースは頭を抱えて、ハートは冷静に、その答えに対して反応する。
「本日、『双子』トゥイードル・ディー、トゥイードル・ダムの使いで参った、『帽子屋』グレイ・アイアールでございます。ゲーム故、見逃していただけるとありがたく存じます」
大仰に、芝居がかって、彼はそう言った。
おそらくこれが正式な名乗り方なんだろうけど、おかしい。いつも以上に笑顔が胡散臭い。気配っていうの? なんか、硬い……。
緊張? ……なんてするわけないわよねぇ。じゃあ、なに?
「ゲームか……」
カップをソーサーに置いて、ちらりとグレイを一瞥する女王陛下も、いつもと違う? 少し、苦々しそう……って、これはあれか。邪魔されたからちょっとすねてるだけか。違うか。
「えぇ、ゲームです」
「……ならば仕方あるまいな。ある程度は見過ごそう」
「恐悦至極」
んー、やっぱり違和感が……。
「アリス、君にこれを」
グレイは、その場を動かずに何かを差し出した。私は頭ん中クエスチョンマーク祭りだー。二人ともなんかおかしい? てか、え、何でディーとダム? なんでグレイ? 同じ敷地内に住んでるよね? え?
「ジャック」
「はっ」
ハートがジャックに声をかけた。ジャックはグレイに近づいて、差し出したものを受け取って私に渡す。
「どうぞぉ」
物語の騎士みたいな態度だったけど、口調が戻ったから安心する。あー、これあれだよね、高貴な人が直に話しちゃダメ的な工程が今……え、それはハートであって私にやるべきものじゃなくない? わ、渡されたから受け取りはするけどさ!
ぱっと見、手紙みたいな感じだった。後ろにはちゃんと二人の署名も入っている。
「え、読んでも良いの?」
「大丈夫だ。ただの招待状だよ」
「招待状?」
意味がわからないけど、とりあえず見てみることに。
『アリスへ
僕らと一緒にお茶会しようよ!
場所は帽子屋さんちね!
時間は、明後日の午後三時!
待ってるよ!!
トゥイードル・ディー&ダム』
はい、読みました。
……で?
「……え、これだけ?」
「それだけ」
内容を知ってるのか、グレイはにっこり頷いた。
「……はぁぁあああ!!??」
こんな大事になってて? これだけ? ばっかじゃないの!?
「よし一発殴ろう」
「俺ぇ、アリスの『物理で解決』思考は嫌いじゃないけどぉ……ヒロインがそんな能筋で大丈夫なのぉ?」
さすがに呆れたように眉を顰められた。ジャックに!! あのジャックに!!
「えぇ、そんなお前なんかに! みたいな目で見ないでよぉ……」
だってジャックだし。デリカシーなさ男だし。
じゃなくて!!
「これだけ、たったこれだけのために!? こんなん自分たちで渡せよこの野郎!!」
こんな大袈裟に渡すなら、せめて文章ぐらいちゃんと正式っぽい文章書こうよ! 何でこんな友達に渡すお手紙みたいになってるの!?
「アリス、さすがに口が悪すぎるぞ」
「ごめんなさい」
ハートに注意されたので、ちゃんと謝る。そして我に返った。
そうだよね。落ち着こう。そしてこれの意味を聞こう。
「俺の扱い酷くなぁい? なぁー、エースぅ」
「黙れ、私語をするな」
「はぁい」
後ろでジャックが緊張感のない会話をしている。ほら、こういうのが信用されないんだって。
「とりあえず、グレイ。あなた内容知ってるの?」
「知っているよ」
「会場があなたの家なんだけど……」
「了承している。そこに書いてあることはすべて。アリス、私の口から詳しい説明はできない。けれど、これはゲームだよ。あの子たちが何をゲームとするのか、それは知らない。ただ、ゲームだということを君は理解してくれればいい。後は双子が説明するはずだ、そのお茶の席で」
色々聞きたいことがあるのを察したのか、先に口を封じてきた。
今は何も聞くなってことね。それとたぶん、今から走ってあの子たち探しても会えないか、何も教えてはくれないんでしょうね。
てか、ゲームって言う時点で私の答えは一つなんだけど。
「行くわ。それを伝えて、ってあなたに言えばいいのかしら?」
「物わかりがいいことは、美徳だと思うよ」
私の答えは正解だったようだ。
「では、アリス、それまでごきげんよう。女王陛下、そして騎士様二人も、お騒がせして申し訳ありませんでした。失礼いたします」
来た時と同じように礼をして、そっと立ち去るグレイ。
うーん、なんかやっぱり、ハート? ハートと接するときだけ、なんか硬い? 気のせいなのかなぁ?
「まったく、とんだ邪魔が入ったものじゃ」
ハートが気配を緩めて、私に微笑みかける。
「ねぇ、アリス。お茶をいれなおさせよう。だから、まだ妾とのお茶会、続けてくれるね?」
かなり予定より長引いてしまったお茶会。疑問形を取っているけど、有無を言わせない目力。でも問題ない。これくらいの圧力なら結構慣れた。
それに今日は何もしない日って決めてるし、いっくらでも付き合えるもんね!
「いいわよ。もっとお話しましょ、ハート」
「うむ」
圧力かけたくせに、私が頷くととっても嬉しそうにはにかむ。美人のくせに可愛いです。
こうして私たちはまたお茶会に戻って行った。
「……」
「……こっちを見るなジャック」
「いやぁ、でもさぁ……うん」
「止められるのか、お前に?」
「無理デスネぇ。今止めたら確実に首が飛ぶぅ」
「だろう? 俺にも無理だ」
「あぁ……長引いた分の仕事がラビ様にぃ……」
「今日だけはお前を全力で恨むぞ帽子屋……」
「あれぇ、てか、俺達もとばっちりくう感じぃ?」
「……」
「無言が辛いぃ……」
「ラビ様の方が辛いんだ。俺達もできるだけは……」
「うぅ、承知ぃ……」
「「はぁ……」」
騎士二人の嘆きが、ガールズトークを止めることはなかった。




