“出会いは最悪”継続中
どうも、こんにちは。私は最近謎の世界に落とされたアリスと呼ばれている者です。皆よろしくねっ☆
「……って、私は一体何してんだか……」
今ならインパクトある自己紹介ができる! とか思ったけど、これただ単に引かれるだけだ。ドン引きだ。私だったら病院をすすめる。
うん、やめよう、そうしよう。現実逃避ならもっと建設的なものが……
「オイ」
そうよ、例えば、そうね、帽子屋邸とやらに行ったら役付の人がいるかしらーとか。
「オ・イ」
邸、とか言うくらいなんだから、広い家なんでしょうし、この世界で宿に困ったら泊めてくれるようないいヒトだったらいいなーとか、他にも……
「オイっつってんの、聞こえねぇのか?」
他にも……って、
「ひっ!?」
目の前にいきなり突き出されたひんやり硬い物。軽く頭に押し当てられた銃口に、体が固まる。
「……」
おそるおそる銃を押し付けてくる手をたどり、顔を見上げる。
夕日が最後に輝くような、綺麗なオレンジ色の癖のある髪は肩につくくらい。瞳は神秘的に輝くアメジスト。
ここで驚く点第一! 頭にウサミミ!! オレンジがかったブラウンの柔らかい、ふわふわの、あの変態とは違ったちょい垂れ耳! ピコピコ揺れて、ちょっとかわいいです!!
第二! ……巨乳です。生成りのシャツは第二ボタンが閉まらなさそう。……少しくらい分けてくれ! ずるいじゃないか!!
第三! おい、とか、いきなり銃突きつけてくる、とか……男だと思ってましたよ。声低かったしね! 女性ですか。長身ですね。かっこいい系です。クールビューティーです。ずるいですね。そして怖いですね……。
「何じろじろ見てんだよ」
銃でつつくのはやめてください。軽くでも痛いです。そして怖いです。
「す、すみません……」
あのウサギといいこのウサギといい……なんでちゃんとした初対面の挨拶って言うのができないのかな!? 最悪! ありえない!! でも反論したら殺されそう!!
「おめぇ、何もんだ?」
「何者と言われましても……」
アリスって言えばいいの? でも私本当はアリスじゃないし……嘘つくみたいじゃない? それ、どうなの?
「さっさと答えろよっ」
「痛いっ!!」
ぐりぐりしないでください!!
「何、してる……?」
新たな人が……!! ……人? ヒト……?
現れたのは男の子。ココアのさらさら髪に、エメラルドの瞳は眠そうに半分ほど閉じられている。さっきまで寝ていたのか、服は寝間着のようなものだった。……かわいい。
……何の獣耳でしょう? 彼の体には丸っぽい明るい茶色の耳に、尻尾がっ!! ……動物率高くない!? 何ここ獣人世界!? この子は可愛い! ウサギにはいい思い出はないけどねっ! ウサギじゃないよね!?
「怪しいやつがいたから尋問してんだよ」
お姉さんは私から目をそらさずに男の子にそう答えました。
……私は不審者ですか……そうですか……。
っていうか、お姉さん、美人さんなんですからそんな目を吊り上げないで、男っぽい口調と行動は改めた方がよろしいのでは? いや、お似合いですけどね! 声も低音でかっこいいですよ! 惚れるくらいですよ!?
「なんだよ?」
「い、いえ、ナンデモアリマセン」
おっと、ポーカーフェイス。ポーカーフェイス。何考えてるかわかられたら殺されかねない。っていうか、その銃、本物ですよね? 今更ですけど!?
「……あり、す……?」
男の子がつぶやいた。
「ハ?」「え?」
私のこと?
「こいつが?」
お姉さんもきょとんとしてます。
「おい、お前本当にアリスか?」
「ちがう、の……?」
「違う様な、違わないような……?」
「……はっきりしろよ!」
「っ!?」
「銃、危ない、よ……? アリス、だった、ら、殺す、大変……」
「逆にアリスじゃなかったら、殺してもいいだろ?」
「ダメですごめんなさいさっきアリスって言われました私はアリスです!!」
今他にそれ以外の選択肢ありましたか!?
「逃げたいからって嘘ついてんじゃねぇだろうな?」
そんなギロッて睨まなくても……
「さっきラビにあなたはアリスだって」
「白兎が、言った。なら、アリス……」
「だけどよぉ、アリスって金髪碧眼なんじゃねぇのか? やっぱニセモンなんじゃ……」
「え……」
おいこらあの変態ウサギぃ!?
「残念ながら、と言っていいかわからないけどね、アリスは必ずしも金髪碧眼というわけではないよ。現に、今までに三、四人ほど色の違うアリスはいたからね」
また新登場来ましたー。名前すら教えてもらってないのにまた来ましたー。こんどはなんですかー。もうついてけませんよー。変なかっこうした男の人ー、人間に見えるのがまだ救いかもしれませーん。
髪は薄い紅茶色。耳の横でゆるーく一回だけ巻いた団子にして、後はそのまま垂らしている。
藍色の紳士服のロングコートは、裾はわざとなのかボロボロのかぎ裂きだらけ。同じ色のシルクハットにはバラとトランプの飾り。それを深くかぶり顔を隠している。よって目元はわからない。見える口元はゆるく笑みの形を描いている。
「ご機嫌いかがかな、アリス? どうやら最悪に見えるけれど」
「分かってるなら聞かないでくださる?」
「おや、これは失礼」
ぜってぇ思ってねぇだろ。ニヤッて笑ってるもん、ニヤッて!
「なぁ、グレイ? こいつ本当にアリスなのか? アリス騙った不審者じゃねぇの?」
シルクハットがグレイって名前?
「彼女はアリスだ。間違いないね。私のカンがそう言っているよ」
カンかよ!
「あり、す……ほら、言った……」
「ちっ」
納得するんですか、そうですか。だったら……
「あの、いい加減銃下ろしてもらえませんか……?」
「あ、ワリィ。あんたがアリスなら、失礼だったな。すまん」
「いえ……」
意外と素直な人なのかな、このお姉さん……?
「アリス、お詫びも兼ねてお茶会にお招きしよう」
「へ?」
「そうだそうだ! それがいいっ! アリス、来いよっ」ニッ
「え、えっと……」
いきなりフレンドリーすぎやしません!? お姉さん!?
「アリス、来ない? 一緒、嫌……?」しょぼん
……この男の子、可愛いっ!! 癒しだ! あんな変態ウサギにあった後にちょっと怖い目にあった後だとよっぽど癒される!!
「行くっ」
「おや、アリスはネネには弱いようだね……?」
「かわいい……」
ネネって言うのかな、この子……
「……僕、男……」むすっ
「あぁ、ごめんごめん」
かわいいって言われたくないんだね……でも可愛すぎるっっっ!!
「では、こちらへどうぞ」
多少苦笑いのグレイ(仮)さん。
「あ、俺菓子用意してくるなっ」
お姉さん、俺キャラですか……お似合いですけどね……? 女性……
そういえば、と存在を思い出して、カードを取り出してみる。
……
「……あなたたち……」
「ん? どうかしたかい?」
「全員、役付……?」
色と柄のついた三枚のカード。
その問いの答えとして、シルクハットの男はただクスリ、と笑った。




