アリスを愛した白兎
「私を、受け入れる……?」
何かを耐えるように眉を寄せて、ラビがぼんやりと呟く。
「この私を? 自分で手を下したことも、下させたこともあります。私は汚いやつです。私は穢れきっています。それでも……?」
「それはそれでいいんじゃない? って私言わなかったっけ?」
「えぇ、えぇ、言ってくださいました。本当に? 本当にこのままの私を? いいんですか……?」
また泣き出してしまいそうに顔をゆがめる。唇もきゅっと引き結んで、切なそうに頬を赤く……赤くぅ!?
おいちょっと待とうか。少女漫画とかにありそうな恋する乙女みたいな表情になってんぞ!? あれ? 私の気のせいかこれ!?
「んんっ!?」
「アリス……? やはりあなたを利用する私は許せませんか?」
あ、だからそれ! その振られ待ちみたいな表情止めませぇぇん!?
「う、受け入れる、よ? だって、ラビはラビ、でしょ……?」
うん、疑問形なのも、口調が戸惑い気味なのも仕方ないと思うんだ!?
「ありがとうございます、アリス。その言葉が一番欲しかった。許された気がしました」
ラビは私の両手をとって、額に当てる。そして何かを誓うように、祈るように、小さな声で囁いた。
「アリス、私は私の目的のためあなたを利用するでしょう。けれど次は間違えません。私はあなたを守りましょう。この命続く限り。きっと、ずっと……」
それは聞いたばかりのアズの言葉に似ていて、とても重い言葉だった。
だからなんでそういうこと言うのかな。私がもらってもいいものなの?
ラビがそっと顔をあげて、ふんわり微笑んだ。
「アリス、私はあなたを認めます。あなたは私とのゲームに勝ちました。ですからカードを開けたいと思うのですが……って、アリス?」
「んぇ?」
はにかむ感じの笑顔が可愛くて、ぼんやり眺めてたら急に顔を覗き込まれる。
「アリス、話聞いてました?」
「んふふー」
「笑って誤魔化せはしませんよ?」
「うぐっ」
「何か言うことは?」
「……さーせんしたー……」
いやぁ、申し訳ない。
けど、何でだろう? ホント急に可愛くなったような気がする。……あ、あれか! 変質者フィルターが切れたのかなっ!?
警戒心がどんどん切れてってる証かなー……それってどうなの。ラビならいいのか? うーん?
「アリス」
「あ、はいはい。今度は聞きますよー」
「はい。……私のカードはカードが半数以上集まらないと開けてはいけない決まりなのです」
「……え」
開けてはいけない? は? なんで?
「どうも私、というより、“白兎”という役職は、アリスに好意を寄せることが多いようです。それも最初に接触するからなのか、初期の段階で。でもそれではゲームとしてはつまらないでしょう? だから新たにルールが追加されたのですって。何十回前か知りませんけれど」
ん? 世界のルールって最初から全部決まってるわけでもないんだ? まぁ、ゲームだもんね。プレイヤーによっても少し変えた方が良かったりするもんね。
「って、誰が変えてんの? やっぱ女王陛下?」
ここで一番偉いのはハートだよね? ……王様っていんのかな……? 見たことないけど。
「いいえ。……秘密です。ルールによって」
「あー、はいはい」
この国お得意の機密事項ですねわかります。
「はぁぁああああ……。ともかく、あんたのカードは開いたも同然、でしょ?」
「えぇ」
「ならいいわよ! どうせみんなのカード集めなきゃいけないんだから、半数? すぐ集めてやるわ!!」
勢いをつけて立ち上がって、やってやんよと叫ぶ。
「その意気ですよ! 頑張ってくださいね!」
「あんたはしっかり休みなさいよね!!」
「えぇ、えぇ。アリスと話せたおかげで胸のつかえも取れましたし、ゆっくり休めます。今日は本当にありがとうございました」
ふわっと笑ったラビの頭を思い切りぐしゃぐしゃとかき撫ぜる。
「うわっ!? あ、アリス?」
ふむ。さらさら。なめらか気持ちいい……けっ無敵キューティクルめ。
むかつくから耳もするすると撫でておく。うん、ウサミミ……可愛いぞ……?
「ひゃぁっ? あり、ちょ、やめてくださっ!?」
くすぐったいのか身をよじるラビ。顔も赤くて、なんか……イケナイコトしてる気分……。
「むふふふ……」
「ありすぅ……!!」
「愛いのぅ……」
「アリス、そろそろやめてやってくれないか?」
「ラビ様疲れてるからさぁ?」
もふもふしてたら二人の声が割り込んできた。
……おっふ……。
「エース、ジャック……いつからいたのよ……」
「えぇっとぉ……割と最初から……?」
超絶困惑顔のエースはあさっての方向見てるし、ジャックですら苦笑いで視線をさまよわせてるし……これ100%変な子って思われh叉おいyj9wん8yヴぇsyfんcy
「もっと早く言ってちょうだいよぉぉおおおおお!!」
「い、いやぁ、真面目な話してたじゃぁん??」
「あの話からまさかこんな状況に陥るとは思わなくてな……」
「一応俺ら騎士だしぃ? 護衛的に近くにいた方がいいかなぁって、思ったんだけどぉ……」
「そのせいで逃げる機会を逸してな……」
「逃げなくてよかったです。声をかけてくれて助かりました」
私がオワタ状態で天を仰いでいる間に、ラビはすっかり元通りになっていた。目元はまだ赤いけど、表情はしっかりしてる。隈はあるけど。
「うん、ごめん……ゆっくり休んでね……」
「? はい、今日はこれで失礼しますね! おやすみなさいアリス!!」
文字通り脱兎のごとく逃げ去った。うん、これ完全に逃げてるよね! て感じで去って行った。いつも落ち着いた紳士的な感じなのに、今は猛ダッシュで帰って行った。
ごめん、ほんとごめん……。
「あー、アリスぅ、部屋まで送るよぉ……?」
微妙な顔をしてジャックが言ってくれたけど、もちろん断ります。え、なに? この感じで? 恥ずか死ねと?
「自分で戻れますからぁぁあああああ!!」
と私も猛ダッシュで部屋に帰ることになりました。
しばらくあの三人に会いたくないけど、エースは護衛だし。うわぁあああん……。
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「行きました?」
薔薇の生け垣の隙間から、ひょっこりとラビが顔を出す。
「えぇ、大丈夫です」
「うぅん、アリスにあんな趣味があったなんてぇ……」
「あれはきっとアリスの世界でいう深夜テンションですよ。気にしないで上げてくださいね。といいますか、気にしないでください。私のためにも」
後半は早口になったラビに、二人は苦笑いを返す。
「さて、エース君、ジャック君」
「「はっ」」
「思ったよりストーリーの進み具合が早いです。そしてわき道にそれかけている。また、ゲームが破綻してしまわないように、きちんと見ていてあげてくださいね」
「「承知」」
「では、これで……」
今度こそ本当に去ろうとするラビを、エースがとどめた。
「あの、ラビ様」
「なんですか?」
「アリスには、あのことは……?」
「いいませんよ。言えるわけがない……」
「……」
「秘密ですよ。わかっていますね?」
「……御意」
「では、失礼……」
ラビとエースは秘密の会話。けれどジャックは何も言わない。知らなくとも気づけているから。なんとなく、悪いことがあったんだと、思っているから。
だから彼は願うのだ。友人が悲しまず、上司が泣かず、彼女が光を失わない、みんな笑顔の大団円を……。
ラビがそれなりの告白したのにアリスはがん無視ですね。可愛そうに。“白兎”がアリスに抱く好意ってどんな種類でしょうね!←
そして役職名の括弧が安定しなくて申し訳ないです。とりあえずなんかかこってあれば役職名です。わかりづらくてすみません。




