捥がれた翅と渡された光
お久しぶりです。間あいてしまい申し訳ない……。
そして時間経過が長かったため話が微妙におかしかったら本当にごめんなさいぃ!!
「……。アズール・ユルベールだ。よろしく、アリス」
ちゃんと付き合ってくれた。よかった。
「じゃあ、アズール。私はあなたのことは知らないわ。まだ知り合ったばかりだもの。だからね、今知り合ったばっかりの人より、前から知ってる大事な人を優先していいのよ」
「……っ」
「アリスぅ? なにいって……」
「黙っててよ似非爽やか騎士」
「え、えぇー……」
後ろからうざい声が聞こえたけど気にしない。
「……」
アズールは黙ったままだ。少しうつむいてしまっている。
「ゲームが何? どうせ何枚もカード集めないといけないのよ。少しくらいアズールが遅れても問題ないわ。だから、どんな問題かわからないけど、解決方法探してもいいのよ。それまでゲームを止めてもいいのよ?」
あぁ、そうだよ。はっきり言って他人事じゃない。あなたたちにとっては。大事な大事な人なんでしょう? とっても大切で、簡単に感情が制御できなくなっちゃうくらいさ。
なら、それを優先するのが本当じゃない。
私にとってはそれが他人事だから、だから何? なんだけど、でも、ダメだよ。私も帰らないとダメだけど、大切な人を優先できないのはもっとダメだよ。
「……それでゲームが終わらないとしても? ずっとずっと終われなかったとしても?」
「その時は事情を話して頂戴。少しでも力になれるようにするわ。それで早く問題を解決しましょう。ほら、三人寄れば文殊の知恵とか言うじゃない? それで終れるようにすればいいのよ」
「ん? あっれぇ~? アリス? 三人って俺も入っt」
「もっと頭のよさそうなラビとかエースとかにも相談してね、そしたら心強いでしょう?」
「えぇ~? ひっどいなぁー」
雰囲気ブレイカーめ……。
「アリスは、強いな……。今すぐ聞いたりしないのか?」
少し戸惑っているアズール。うん、なんか似非爽やか騎士様がごめんなさいね。え? 私? ちがうわよね?
……シリアスシリアス!! いま大事なとこ!!←
「聞かないわ。だって、なんか違うでしょ? うまくいえないけど……」
無理やり聞いて、解決なんてダメ。ちゃんと自分からじゃないと、いや、聞きだした方がいいこともあるのかもしれないけど、これは違う。うまくいえないけど。
うまくいえないけど!!
「アリス、君は巻き込まれただけなんだぞ? なんでそんなに優しくなれる? 君みたいなタイプなら、普通、もっと怒って、カードをよこせと喚くんじゃないか? そしてそれは許されるはずだ。違うか?」
「ちょっと? あんたの中で私って一体どういう立ち位置……」
喚くって……。いや、確かにラビに喚いたり蹴り飛ばしたりしたけどさ……。
「例えの話だ」
あくまで冷静なアズールさん。
「んー、まぁ、でも、何が何でも帰らなきゃいけない。それは変わらないし、変えるつもりもないわよ? でも、目的がかわらないから、その途中経過は結構何でもアリだと私は思うの」
「……」
うらやましそうな中に、ほんの少しの憎しみをのせて、アズールは私の目を見つめた。
……憎しみ? なんで?
「なるほど。白兎も気にいるわけだ」
ため息とともに出された言葉に、ジャックが賛同してきた。
「でしょぉ~?」
「それで帽子屋にも使われる、と」
「それはアリスにとって災難かもしれないねぇ~。でも、最終目的は変わらないしぃ。いやぁ、変わるんだけど、マシじゃなぁい?」
「だな」
「ちょっとちょっと、何の話よ一体!?」
またおいてけぼりなの!? これはいただけない!!
「ではアリス。少し、やってみたいことがあるんだけど、いいか?」
何か吹っ切れた様子のアズール。
それはとってもいいことなんだろう。けど、けどね!? さっきの話の説明はしてくれないのかなぁ!!??
「協力してくれるんだろう?」
「そうだけどね!?」
「じゃあいいよね」
釈然としねぇぇぇえええ!!
「あははっ、アリスってば、すっかりイモムシのペースだねぇ」
「うっさいわ!! だーもう! 勝手にしなさいよー!!」
「ありがとう」
アズールはやっと笑みを見せてくれた。
「じゃぁ、今日の所は、俺たち帰ろうかぁ」
「え」
「イモムシさんはどうした方がいいぃ?」
「そうだな、また明日、来てくれるとうれしいか。また夜くらいに」
「だってさぁ、アリス」
「わ、分かったわよ。また明日ね!!」
もういいし!! 今日は帰ってふて寝してやる!!
「あぁ、もう森の位置は確定しているだろうから、アリス一人でも来れるよ」
「え、本当?」
「でもぉ、夜は危ないから、明日は俺も一緒ねぇ?」
「うん、わかった」
「じゃあ、またね」
こうしてその日はお開きとなった。
翌日夜。
「アズール!! きたわよー!」
「こぉんばぁんわぁー!!」
昨日は帰ってからすっごく疲れていたのでぐっすり眠り、朝は気持ちよく目覚められた。
ただ、その後夜までずっとそわそわ落ち着かなかった。
だがそれも一応今までだ!! よっしゃ、とりあえず話し合おうじゃないか!?
「やぁ、いらっしゃい」
んー? 声が少し若返ったような……?
昨日、最初にアズールがいた場所を見ると、アズールが葉っぱに腰掛けて待っていた。
「ん……?」
まず第一に、見た目年齢が、私と同じくらいになっていた。少し年下の男の子から、成長した男の人から、同年代の男の子へ。
短期間で変化が激しいですね!!
しかもあれだな、昨日も思うべきだったけど、成長したらよりヴィジュアル系感が……。
次にあれだ、背中の羽っぽいのが消えている。正確には、背中に何かの残骸のような光が少しへばりついている。
……え、羽ちぎれた……?
「まぁ、何とかなったようだから、カードを渡せるよ。よかった」
疲れたような笑顔でほっと息をつく。
「え、あ、あぁ、そうなんだ……」
「どうした? もっと喜ぶべきなんじゃないの?」
「え、えっとー……」
どうしよう、ツッコんでいいの? だめなの? なんなの?
「イモムシさん? その羽、どうしたのぉ……?」
私が迷っている間にジャックが聞きづらそうにしつつもどストレートに聞いた。聞いちゃったよ!!
「あぁ、捥いだ」
さらっと言い腐りやがったこのイモムシ。
「も……っ!?」
「えぇ、なんでぇ!?」
「必要だったから、か」
「言葉少ねぇよ!! もっと詳しく!!」
「アリス、口わるいぞ」
「あんたのせいだろうがぁぁああ!!」
ぶちぎれても問題ないよねー。ねー?
「……難しいんだが、ルールに触れない範囲ででもいいか?」
「いいわよもちろん!!」
少し遠い目をして、煙管を吸った。甘い香りの煙を吐き出しつつ、視線をこちらに戻す。
「大事な、人がいたんだ。その人はもういないはずで、でも私はその人がどこかへゆくことが許せなかった」
いない? 亡くなったとか、そういうことではないんだろう。でもこの国は外には行けなかったはず。じゃあどこに?
「だから私は名前をあげたんだ、その人に。正確には記憶を、“ゲーム”に必要のない記憶をほとんどすべて捧げた。この世界はね、アリス、君にとってファンタジーだろう? 聞いたことはない? 何かを引き替えに、何かをなす。そういう魔法」
「まぁ、よくありがちなものよね」
簡単に言えば生贄みたいなものだろう。ってことは、アズールはその人を引き留めるために記憶を代償にした。
そこまでしないと引きとめられないってどういうこと? 記憶ってかなり重要だと思う。……普通に生活できてる私がおかしいだけで、普通だったら記憶がないって怖いことだと思う。その記憶を差し出すって、かなり大事な人? それとも、かなり危ない魔法みたいな?
「私はその人がいてくれるだけでよかった。会えなくてもよかった。でも、その人は違ったみたいだ。そこの騎士様に言われて、話しをしたいと思ってね。今度は羽を代償にして、その人に会ったんだ」
「それで、その人はなんて?」
「もういいんだって。私が自分を代償にしているのは、とても悲しいんだってさ」
「でしょうね」
たぶん、その人もアズールのことが大事なんだ。そこまでしてくれるアズールのこと。だから傷ついてほしいなんて思わない。
「あぁ。泣きながら怒られたよ」
思い出してか、苦笑を漏らした。
「だから、止めた。もう止めることにした」
「それがいいわね」
「でもね」
「え」
まだなんかやったのかこいつ。
「羽の分の力、少し余っていたんだ。だからね、ちょっとだけ世界に小細工してきた。私と僕から、ほんのちょっと、些細な反抗」
僕、っていうのがアオで、私、っていうのがアズールなんだろう。だから、きっと私の知ってる記憶のない少年と、私の知らない大事な人がいた男の人、両方からの反撃。
それは……重そうな一撃だわねぇ……。
「い、一体何を……」
「アリスには秘密だよ。でもきっといつか分かる」
「ここまで教えておいて!?」
「小説だってなんだって、続き物ならいいところで終わるのが手だろう?」
「教えろよぉぉおおおお!!」
「だめだ。さて、僕の話はこれでおしまい」
「ちょっとぉぉおおおおお!?」
「ほらほら、空気を読んで空気になってしまった騎士様が可哀想だろう?」
そういやいつの間にかジャックのこと忘れてたな。
……いっつも空気読めない騎士様が空気読んでってことは、こいつ、何か知ってるな……? しかも相当重い秘密か……。
「アリスぅ、そんな得物見つけた肉食獣の目されても、俺教えないからねぇ?」
「あ、やっぱなんか知ってるんだ」
「役持ちには周知の事実も同然だけどな」
「おっ!!」
「だから誰も教えないってばぁ~」
「ちっ」
「「アリス、行儀悪い」よぉ」
「けっ!!!!」
二人してはもってんじゃねぇよ、ばっきゃろー!!
「ほらほら~イモムシさんがカードくれるって言ってるんだからぁ、早くもらってきなよぉ」
「もー除け者にして!! もういいわよ!! アズール、カードよこしなさい!!」
「口が悪いなぁ……」
葉っぱからアズールが下りてきて、私の目の前に立つ。
私はクラブの十のカードを出して差し出した。
「では」
アズールがそっとカードに指をのせて、弾くようにすると、一瞬光があふれた。
光が集束した後には、中央にアレキサンドライト色の細かい細工の蝶の羽もようと可愛いミニキャラ化したアズールの絵柄が浮かび上がってきた。
え、何これかわいいし綺麗……。
――――どくん。
「これで僕のカードは開けたな。僕の命、心、力、すべて君に捧げよう。まぁ、大事な人のために使ったから、力はだいぶ制限されているけれど」
「なにそれおも……」
――どくん。
「まぁ、そういうな。それがカードを捧げる意味……アリス? どうかした?」
どくん。
「アリス!?」
「アリスぅ!! 大丈夫ぅ!?」
目の前がぶれた。頭が痛くて、体が重くて。
あれ? アズールとジャック? ぼやけてるけど、心配してそうな顔。どうして?
あぁ、眠くなってきた。もう夜だもんね。まっく、ら……。




