情報収集ぱーとすりー
ハートと赤で彩られたメルヘンチックな可愛い部屋。元の自分の部屋よりもだいぶ大きい。高級ホテルも目じゃないぜ! ベッドはフカフカで一回転しても余裕なサイズ。ベランダもついて、なんと家賃はタダ!! キャー! なんて素敵物件~!!
……はい、茶番失礼しました。
現在お世話になってるハートの城、私がおいてもらってる部屋の説明でした。なんでそんなことしたかって? それはね?
「ねぇねぇ、アリスぅ? 怒ってるのぉ?」
このハートの騎士様が気持ちのいい目覚めを邪魔してくれたからだよ!! 部屋の観察でもして心落着けたかったんだよ!! 意味なかったけどな!!
朝、私はとっても気持ちよく起きたんだよね。朝日が差し込んで、鳥がピヨピヨ言って、いい感じに目が覚めたのよ。で、そのあとあー、って伸びた瞬間に……このジャック様がドアを勢いよく開けやがって、突撃お宅訪問してくれたわけだぁ、あぁ?
「えっとぉ、ごめんねっ!!」
両手を顔の前で合わせて、謝ってくる。ケッ! だからどうした!!
「私寝間着なんだけど」
「か、かわいいね!」
そういう問題じゃねぇよ!!
「それと私女。一応、女子。しかも年頃。華の十六歳」
華とか自分で言ってもな……でも事実。世間的に一番いい感じ(?)の年頃。
「? 知ってるよ?」
「うん、わかってないよね」
そのきょとん顔は。
「えぇー?」
「自重しろっつってんのよ。あぁ? 勝手に女子の部屋は言ってくんじゃねぇよこの変態野郎」
「あ、アリスがらわるぅい★」
「あ゛ぁ゛ん?」
わかりますか? この寝起きの悪い時以上の機嫌の悪さが。気持ちのいい目覚めを邪魔されることは、とても、腹が立ちますね!!
「ご、ごめんなさい……」
ジャックはベッドの横で土下座しそうな勢いで縮こまった。
「で、何の用? 簡潔によろしく」
「えっと、一つ目はラビ様から伝言! イモムシについては知らないからごめんなさい、頑張ってくださいって。で、今日も仕事で一日いないって」
ラビ、ホント過労死しないかしら……。じゃなくて、そっか、知らないのか……。ラビもがんばって……。
私はとりあえず頷いておいた。
「で、二つ目は、今日はエース、ラビ様についていったんだぁ。だから俺がそのかわり~」
「え、そうなの?」
役のせいでずっと《アリス》についていないとダメなのかと思ってた。
「んー、なんか面倒事が起きたらしくてぇだから特例~? ……だからだからぁ、陛下もご機嫌斜め! 超絶不機嫌だよぉ! アリスも気を付けてねぇ」
「なるほー……」
どうりで昨日ティーカップ投げつけられそうな雰囲気だったわけだ。
「俺もよくわかってないんだけどねぇ。なんか超機密事項みたいでさぁ。だからアリスも無防備禁止ねぇ。ちょっと警戒心持っといてぇ」
「了解」
だいたいここの人たち危ないやつ多いから警戒心は忘れられないわよね。
「最後! 三つ目! なぁんで昨日俺のとこには聞きに来てくれなかったんだよぉ!!」
…………忘れてた……。
「酷いよねぇ! ラビ様はちゃんと探して、エースは仕方ないとして、城外のトゥイードルのとこまで行ったんだろぉ!? なんで俺だけぇ!?」
「ごめん、ガチで忘れてた。主に作者が」
(てへぺろby作者)
「突然のメタ発言!?」
「けふんけふん」
「今頃咳払いしても遅いよぉ!?」
「てへぺろ★」
「ちょっとぉ!?」
こほん、さて、そろそろベッドから出たいな。
「で、他になんかあるの?」
「ないや!」
「あっそ、とりあえず出てってもらえる?」
「え……」
後ろに雷がはしったようにショック顔をされた。いや、漫画かよ……。
「着替えたいんだけど」
「あ、そ、そうだよね! ご、ごめんねぇ!!」
あわててジャックはこちらに背を向けてドアに向かった。
「あ、ちょっと待って!」
「え、な、なぁに!?」
なんでそんなキョドってるんだ……? 今更この状況がダメだって気づいた? おせぇよ!! いや、逆にいつまでもいられても困るけどね!
「南の森にいきたいんだけど、案内お願いできない?」
そうそう。アオと仲の良かったとか言うトカゲさんを探しに行かないと。で、南の方はよく知らないからね。
エースの代わりってことは護衛なんだろうし、仕事、大丈夫なんだよね?
「南の森ぃ? ……うーん、どうかなぁ……」
こちらを向かないまま、んー? と首をかしげた。
この国の人だからいろんなところ知ってるだろうな、とか思って軽く頼んだんだけど、知らないのかな?
「ちょぉっと、聞いてみるからぁ、準備できてもこの部屋にいといてぇ? 部屋付きのメイドさんいるでしょぉ? 準備できたら部屋の前にいるように言っといてぇ?」
「え、えぇ。わかったわ」
どこかへ聞かないとダメなことらしい。……やっぱり仕事あった? 休みとかそういうのだったら申し訳ないんだけど、そういう感じじゃないし……。どっちかというと場所が悪そう?
どうしてメイドさん外にいるように? もしかして、準備できましたよーって合図? まぁ、メイドさんにお願いしとこう。申し訳ないけど。
とまぁ、色々あって、南の森に行くようになりました!
南の森も、別に森だよね。どっから南の森なんだろう? って感じなんだけど、この国の人たちはなんとなくこの辺ーと区切ってあるのがわかるらしい。全然わかんねぇ……。
「仕方ないよぉ。だって俺らファンタジーの生き物なんでしょ、アリスにとってはぁ」
ちょっと悲しそうな顔をして言われてしまった。なんでだろう? 事実だよね?
「まぁ、いいけどさぁ……。ついでだからちょこっと説明してあげるぅ。忘れないようにしてねぇ?」
「え、何の説明?」
「森の区切りについて、かなぁ? 城の裏が北の森ね。トゥイードルのいる森にはあんまり外から入るのはおススメしないなぁ」
「なんで?」
「こわぁいトラップがあるからねぇ。詳しくは聞かない方が身のためかなぁ」
なんじゃそりゃ!!
「き、気を付けることにするわ~……」引き
「それがいいよぉ。んでぇ、イモムシのいる森は大体東の方だねぇ。まぁ、今のところアリス一人では簡単にたどり着けないだろうから意味ないかなぁ?」
「そうねぇ」
誰かに案内してもらわないといけないらしいし。てか、場所自体は固定なのね?
「んで、ここ、南の森ねぇ」
「あれ? グレイたちのとこも南じゃなかったかしら?」
「んー、帽子屋さんたちの邸は、もっと浅くて、もうちょっと東かなぁ。城からまっすぐっていうより、少し脇道はいってたでしょう? それとぉ、俺らが言う南の森って、南の奥の森って意味だからぁ」
「イミフ。……今度地図でも作ろうかしら」
だんだん頭こんがらがってきた……。危ない場所もわかったほうが嬉しいし。
「それいいねぇ。俺も手伝うよぉ」
「ありがと。じゃあ、その調子で書類しごともがんばってね」
「関係ないよねぇ!?」
なんかわめいているがぶった切ることにする。
「で、南の森には何かあるの?」
「えー……。……南は動物とか多いからぁ、そういう意味でも気を付けた方がいいかなぁ」
「そういう意味、でも?」
「そうそう。危険人物も多いよぉ。暖かくなると変質者がよく出るでしょぉ? そんな感じぃ。……特に最近はここら辺、超危険な変質者出るからね」
いつもの間延びした喋り方ではなく、声もワントーン低くて、真剣な声だった。笑って細められていることが多い目も、鋭くあたりを見回した。
「変質者~? それって俺さんのこと~?」
俺にさん付け!? 様じゃなくて!? ……ツッコミどころはそこじゃない!!
「アリス!」
私はグイッと腰を引き寄せられて抱き上げられた。
どどどっとさっきまで私がいた場所に大量のナイフが突き刺さる。
「あれれ~? イケると思ったのにな~」
木々の間、もしくは上、色々な場所から声が聞こえてくる。若いのか老けてるのか、男か女か、それすらもよくわからない。耳はいい方だと思ってたんだけど、これじゃあ前か後ろかもわからない。
姿はこれっぽっちも見えないし、森らしく木もたくさんあるので見通しも悪い。
「何をだよ!!」
ジャックの腕の中で、思わず大声でツッコんだ。イクってなんだゴルァ!!
「アリス、今つっこんでる場合じゃないからぁ!!」
最初ほどたくさんではないが飛んでくるナイフを、私を抱えつつ避けるジャックにツッコまれる。
さすが騎士。重い私を抱えても軽々ですね! 若干嬉しいような気もしますよ!! でもね、それどころじゃないの私じゃない!? 狙われてたよね!?
「いや、命狙われてツッコまないとかありえないから!!」
「そこ怯えてキャー! じゃないのぉ!?」
「私がそんな可愛い悲鳴あげるか!!」
「えー!?」
「……えっと~、論点ずれてな~い? てか、命狙われて、ツッコんでる、もしくは悲鳴あげてる暇あったら逃げようよ~?」
ナイフ攻撃がやんで、遠慮がちにそんな声が響いてきた。
「「た、確かに!!」」
「君たちバカ~?」
呆れた声が降ってきた。一か所に集まって。
「……」
木の上。葉が一番生い茂っていそうなその中。ジャックも気が付いたようで、すごい睨み付けている。なんとなく背筋が寒くなった。
「あれ~? 騎士様なら襲ってきそうと思ったんだけど~?」
「そんなことするわけないじゃん。それが目的なんじゃないの? アリスと俺を引き離したい?」
「ちぇ~、ざんねんだ~」
そういうと声の聞こえていた木をむいていた私たちの背後からがさっと音がして、そっちを向こうと思った瞬間にはキィンと音がした。
「ん~、さすが騎士様~」
「どぉーも」
その言葉とともに二人はいったんさがった。
「え、ナニガオキタノ?」
運動レベル平均の私には視認不可能ですね。
ジャックはいつの間にか剣を抜いていました。推測すると、一回打ち合ったのかな? ん?
「アリスは気にしなくていいよ」
「そうだよ~」
なんだよー。仲間はずれかよー。
二人はじっと動かない。相手の出方を読んでるんですかね? まぁ、私はジャックがいるので安心してようかな。……大丈夫だよね?
「ジャック、頑張ってよ? 私の命あんたにかかってるから」
「ちょっとぉ、そんなプレッシャーかけないでよぉ」
「事実よ。何? 負ける気なの?」
「それはないけどぉ」
喋り方がちゃんとだるだるだったので安心する。
安心して、目の前の不審人物の観察でもしよう。守られてるだけって結構暇だったり……とか思ったら大分失礼だけど。いやでも二人動かないし……。
うん、黄緑だ。すんごい黄緑だ。まず目に入るのは長めの段が入っている鮮やかな黄緑の髪。そしてかぶっている暗めの黄緑色のキャスケット。毎度のことながら帽子を深めにかぶっているので目が観察不可。黄緑色のパーカーに、白いシャツとカーキのズボン。軽装なのに、どっからあんな大量のナイフが……とか言ったら負け。トゥイードルの鎌だってね。うん、ファンタジーだもの。
……男、だよね。身長は高くもなく、低くもなく。薄い体。んー、男だよね……。
「ん~? どこに視線がいってるのかな~? 俺さん男だよ~?」
「デスヨネー」
視線でばれました。胸ないですね! 男ですわ! ……はい、ごめんなさい。
「アリス……」
ジャックさん、残念な目で見ないでください……。
黄緑の人……ハンチングさんに習ってキャスケットさん(仮)にしようか……キャスケットさんはパーカーのポケットに手を入れて、体勢を崩した。
途端、重苦しい感じが霧散した。いつの間にか入っていた力が抜ける。
ジャックはまだ警戒しているようだったけど、私を地面におろした。腰に手はかかったままだったけど。
「まぁ~、なんでもいいや~。騎士様、アリスか~して」
……はい?




