情報収sy……の前に捕まりました
帽子屋邸からぶちぎれて飛び出した私は、とりあえず城へと進む。他にあてもないしね!
と思ってダッシュしてたんだけど、こっちのほうが早いかな~って街に出たら、エースに遭遇しました。完っ然に忘れてたこの人のこと。
「アリス!」
「あ、え、エース~、ワー、キグウネー」
「棒読みで適当な言葉を言ってるんじゃない! 毎回毎回! どうして何も言わずに勝手に行ってしまうんだ!」
「だ、だって……」
一般人の私には誰か必ずついてくる暮らしには慣れてませんので!!
「子供じゃないんだから一人でも平気よ!」
「平気じゃないかもしれないから言っているんだ!」
「な、何があるっていうのよ!!」
この平和な街中で口論してる方が絶対おかしい!!
「アリス、君は……帽子屋の所に行っていたのか?」
「目的は違ったけど、寄っては来たわ」
それが何よ?
「帽子屋の職業は知ってるな?」
「えーあー、うん、一応?」
そういや聞いたな。忘れてた。現実みなさすぎて。殺し屋と情報屋だっけ? うん、ファンタジー。
「だったら少し考えればわかるだろう? そんな職業があるというくらい物騒なんだ。そして、そういうことしている限り、確実にどこかには恨まれる」
「……な、なーる」
どの程度……仕事しているのかは知らないけど、一人殺せば親とか友人とか仕事仲間とかからは恨まれるだろうなぁ……。んで、殺し屋に頼むほど恨まれてた人って犯罪に片足突っ込んでそうなのが一人くらいいてもおかしくないかな~、さらに殺し屋雇うくらい?
「それはまずい」
「だろう? だから……」
「でも嫌なものは嫌」
「アリス……」
「ごめんなさい。現実味がないのもそうだけど、私はそんなことで護衛とかされたくないわ」
ここは譲れませんよ!
「君はわかってない」
「えぇ、そうかもね。でも、今のところ大丈夫だs」
「今はそうかもしれないが……」
言葉が終わる前に噛みつかれた!
「ちょっと、話は最後まで聞きなさいよ!」
「っ」
さすがに怒鳴ったらエースも頭に血が上ってたのがわかったらしい。少し気まずそうな顔をしてクールダウン。私も冷静になりましょう。道中で怒鳴っちゃ変人確定じゃんね。
「少し落ち着きましょうか。端によるわよ」
「あ、あぁ……」
店の切れ目の人通りの少なめな路地の入り口に寄る。
「そうね、まず私は人に守ってもらうなんて嫌なの」
「そんな嫌とか言う問題ではないだろう。命がかかっているんだぞ?」
「それはそうだけど。だったらあなたも同じようなものじゃない?」
「君よりは強い」
「傷つけたくないわ。私のせいで」
なんだろう、この気持ち。ドロドロ暗い。あぁ、なんか後悔してるような気持ちだわ。でも何を?
「だったら俺もそうだ。君が傷つくのは嫌だ」
エースの表情は怖いくらいに真剣だ。けれど一ミリ、何かが違う。何だろう? 不思議だ。
「アリス、君はこの世界にとっても、俺にとっても大事なヒトだ。だから傷つけられるのは堪えられない」
さらっと素敵な言葉を吐いてくれるぜこの人……!! さすがファンタジー!!
「エース、私はそんなヤワじゃないのよ? そりゃぁ、騎士であるあなたと比べたら弱いでしょうけど、ずっと守ってもらわなきゃいけないほどじゃないと思うのよ」
「……どうだろうな。君はすぐに壊れてしまいそうだ」
私はガラスか何かか。いや、女子としては最高の言葉なんだろうけど……?
「……うん、いらない!!」
「!?」
「やっぱ無理! そういうのいらない! 私は守られなきゃいけないオヒメサマじゃないもの! 何かあったら言うわよ? 助けてほしいときは遠慮せずに逃げ込むわ。でもね、鳥籠に詰められて守られていなきゃいけないような弱者でいるのは絶対に嫌」
「……」
「あなたが強いのはわかってるのよ。きっとあなたは簡単に負けないでしょう。でもね、いらないわ。ずっとはいらない。……なんていうのかしら……もうちょっと自由にしてていいのよ?」
そうそう、自由だ。なんかずっといなきゃいけないみたいな、まぁ、仕事だしね、そうなんだろうけど、束縛してるみたいでいやなのよね。
「……」
「……」
「……」
しばらくエースとにらめっこ。譲らねぇぞ? あぁ? という気持ちを込めて、目に力を入れて睨み付ける。あっちの方も職業柄、悪者を黙らせる必要もあるんでしょう。とても鋭い眼光だけど、負けませんよ!! 絶対に!!
「……」
「……」
「……分かった」
お、エースが顔を逸らした! 勝った!!
「どうしても譲ってくれないのは、俺から逃げてることでもわかるしな」
「もちろん譲らないわよ!」
「……はぁ、これでも気配には敏くないといけない仕事なんだけどな……君には負ける」
アリスの隠密行動的なスキルなめちゃぁいけないぜ!
「でも、これだけは約束してくれ。絶対に何かあったら俺のことを呼んでくれ。どこにいても駆けつける」
胸に手を当てて、目線を合わされる。……くっ、さすが騎士……ちょっと気取ったポーズが様になってるぜ!!
「最高の口説き文句……?」
「何を言ってるんだ……」
呆れないでよー。
「カードを渡したんだ。存在を預けている。だから心から呼べば聞こえる」
「わぁ、なんて便利な……」
「当たり前だろう。命の危険にさらされて、誰も来ませんでした、ではゲームとして面白くもなんともない」
「なるへそ」
「で、了解は?」
「りょ、了解っす」
「……」
ふざけて言ったら睨まれた。ごめんなさい。
「わかったわよ!」
「ならよかった」
こうしてエースから解放されました。
やっと城へ向かえます。……そうそう、アオのこと聞きに。わ、忘れてなんかいないんだからねっ! ……誰得だこれ……




