二回目の遭遇
さて、そういえばすっかり忘れてたな、アオのこと。と、言うわけで! アオに会いにいこうと思います!!
って、思ってエースを置いて森に出てきたのはいいけど……アレ? アオと会ったのどこだっけ……?
「アリスは迷子属性を手に入れた! ……いらねぇよ!!」
あっれー!? 帽子屋邸からこっちのほうに行ったと思ったんだけどなぁ!? 森って同じ風景ばっかでわかんないよねっ!
……誰か地図下さい。切実に。
「あれ?」
ん? どっからか声が聞こえてきた。
「君、アリスじゃん。どうしたの? また迷子?」
きょろきょろ見回すも、姿は見えず。なにそれ怖い。
ダッシュで逃げようかどうしようか迷っていると、
「ここだよここ。上上」
そういって、目の前に何かが落ちてきた。
「うぎゃぁっ!?」
「ぷっ、もうちょっと女の子らしい悲鳴あげなよ……ぷくくっ」
木に足を引っ掛けて、帽子を押さえ、蝙蝠みたいにぶら下がっている男が笑った。
笑ってんじゃねぇよ! ビビっただろうが! あぶねぇな!!
「あ、あれ? あんた、いつかの……誰かさん!!」
あれだ、城を滞在地に決めてすぐに出てって、森で会って、街まで案内してくれた人だ! 久しぶり!!
「誰かさんって……いやまあそうだけど」
男はよっと、と声を出して危なげなく着地する。
「だって名前知らないし」
というか、役付以外ここの人たち名前ないし。
「そうだねぇ。じゃあ、名前つけてもいいよ。呼びやすいようにさ」
え、そんないきなり言われても。
「……ハンチングさん」
ハンチング帽かぶってるし……。
「う、うん。まあ、いいや」
許容範囲でよかったです。
「それで? また迷子?」
そこで元に戻るんですね!
「迷子……うん。迷子」
「また案内してあげようか?」
「……あなたは超親切な人か!!」
また、だよ!? また!! 呆れた視線を向けてくるところを普通に案内してくれるいい人だ!!
「そこまででもないでしょ。だってアリスはまだこの世界に不慣れなんじゃないの? だったら呆れたりしないでしょ」
「……いい人だ!!」
「……そこまで言われると、なんでだろう。今すぐUターンして帰りたい気分に……」
「待っていかないで!!」
ここで帰られるととても困ります!!
「じゃあ、しつこいよ?」
「ごめんなさい」
「よし。それで、どこ行きたいの?」
「えーっと、アオのいるところ……なんだっけ」
「え、自分がいきたいところもわからないの? それはさすがに……」
ハンチングさんの顔に若干呆れが混じった。
「違うわよ! なんか難しいこと言われ……そうだ! 名前のない芋虫? が、いる、名前のない森? なんかそんな感じのところ!」
そうそう! だいたいここら辺の森は、森って名前なんだから言えるわけないでしょ!!
「あー、あいつのところか……」
思い切りハンチングさんは顔をしかめた。
「え、知ってるの?」
とっても嫌な顔してるんだけど?
「そりゃ、まぁ、役付は大体有名人だよ。……ただ、アリスには誰が誰とかは言えないけどね」
役付有名人? だったら誰かに聞けばいいじゃ~ん、という浅い考えはオミトオシのようです。けちっ!!
「んーっと、じゃぁ、近くまで送るよ」
「ありがとー!」
まぁ、案内無しじゃ行けなそうだったから、行けるだけでもラッキーです。道覚えないと……。
「やぁ、アリス。全然来てくれないから忘れられてしまったのかと思ったよ」
忘れてました★ とは言えないよね……。
「……ずいぶんアリスは薄情者なんだね」
き こ え て ま し た ★
甘っぽい煙が立ち上る、巨大な葉っぱの森。私の目線より少し高い位置にある葉っぱで寝そべりつつ、キセルを片手に青筋を立てているアオ。……ほんと申し訳ない。
ちなみにハンチングさんは煙の臭いがし始めた時点で逃げました。この匂いが無理! なんだそうです。
「で、何? 僕のことでも分かった? アリス?」
「あー、違うわ。ただアオにまったく会ってないから……」
忘れちゃってるから……。
「へーふーんそー。全部聞こえているからね、アリス?」
……★
「……」
おっと、アオさんから絶対零度の凍える息吹が……!!
「げ、げふんげふん! でも、ほら! 道覚えないと、でしょ!? それにアオの顔も見たかったしさ!?」
「適当な言葉では誤魔化されないからね。それと、道覚えても無駄だと思うよ」
「へ?」
「誰に案内されたか知らないけれど、この森への道はよく変わるんだ。余所者のアリスには完全に把握するのは厳しいんじゃないかな? 誰か忠告してくれなかった?」
森の道がかわる? えー? ……そういえばハンチングさんと初遭遇の時にそんなこと言われたっけ……。いまいち地図ないからわからないし……って、道変わるなら地図もないのか……。
「誰かに毎回道聞いた方がいいと思うよ」
「えぇぇ……めんどくさー……」
「……。……だったら、そうだなぁ。帽子屋か宰相殿に聞いてみるといい。何かいいアイテムをもらえると思うよ」
アイテム……RPGか!
「ここは夢の国、ワンダーランドだよ。アリスはクエストの真っ最中」
「そう言うととてもRPGですね」
アイテム欲しー。
「うーん、ま、まぁ、じゃあ、今回はこの辺で帰るわ。アイテムもらえたらまたためしに来るわね」
用もないから長居しても迷惑だろうとさっさと来た道を戻ろうとする。
「あれ、帰り道も変わって……」
「ちょっと待ってよ」
「何よ?」
帰れるのか心配なんだけど。道教えてくれるの?
「アリス、ただそのために来たの?」
「いや、そのためも何もまったく用なかったんだけど」
「そうじゃなくて、ここに来ただけ? それが目的?」
アオが体を起こしてこっちを見ていた。
「……べ、別にあんたのこと忘れてたから罪悪感のせいで会わなきゃ! とか思ってたわけじゃないんだからねっ!?」
ちょっと謎テンションで、腰に手を当て、人差し指を突きつけてみる。
「なんでツンデレ風なの!? じゃなくてさ! 結構ひどいこと言われたのもこの際無視するけどさ!」
おっと、無視されてしまったぜ。
「アリス、僕が役付なの忘れてない!?」
……あー、そういやそうだったな。
「なんでそんなに忘れっぽいの!? 僕も忘れやすい方だと思ってたけどさ、アリスはそれどうなの!?」
「自分の名前なんて忘れるようなものじゃないもの忘れる方がよっぽどどうなの!? って感じなんだけど!」
「あー、もう! そんなのどうでもいいから!」
アオくんおこ~。
「アリス、そこに座って!」
葉っぱの上で胡坐をかき始めたアオ。真面目にこれは怒っていらっしゃる。なので私は低めの柔らかそうな葉っぱに正座。うん。やっぱり誠意みせるときは正座だよね……。
「アリス」
「は、はい……」
これは、また、お説教ですか……? 最近多いな……はぁ……。
「ゲーム始めよう。まずはルール説明」
「……はい?」




