状況整理
……から……。
にゃはは……ぁん、ひ……するね……。
それも……だな……。
じゃあ、またね。
あぁ、また。
遠くから会話がとぎれとぎれに聞こえていた。それを聞きながらアリスは眠りの波間を漂っていた。
「……おや?」
枕元からそっと声をかけられた。
「ぐ、れい……?」
「起きたのかい?」
頭の近くに座った気配がする。
「ねむい……」
「だろうね……」
ちょっと強かったかなーとか何とか言ってるけど、意味不明なので流す。
さすがにもう起きよう。
上体を起こして伸びをする。
って、なんでまず寝てるんだ? ここ何処? ……わぁ、なんか赤! って感じの城より落ち着く……なんて言っちゃいけないよね、うん……。グレイがいるってことは、帽子屋邸だよね、たぶん。
「さて、アリス。どういう状況かわかるかい?」
グレイがベッドサイドのテーブルに、紅茶の入ったカップを置きながら聞いてきた。
「まっっっっったく。あ、ありがと」
紅茶はすごくいい香りです。おいしい。
「だ、だろうね……」
まったくに力を込めて言ってやると、口をひきつらせてさっきとまた同じ言葉を出した。
「何個か聞きたいことがあるんだけど、答えてくれるかい?」
「ものによる」
「賢明な判断だね」
いや、ただそっちが前にものによって協力するみたいなこと言ってたと思ったからただの仕返しです。
服は変わってないみたいだけど……寝づらくないな。素晴らしい主人公装備。
「一つ目、君はアリスで間違いないんだね?」
それは常々疑問なんだけどね。こっちが。
「まずアリスって何?」
「主人公、ゲームのプレイヤー、異世界人、そんなところかな?」
「異世界人なら正解」
「主人公、ゲームのプレイヤーも当然そう。こちらへよばれて来たのなら必然的にそうなる運命だよ」
「なんでよばれたの?」
「ゲームをするためだね」
「なんでゲームしないといけないの?」
「……二つ目、君は帰りたいかい?」
グレイは少し沈黙し、無理やりに話を元に戻した。
「グレイ」
「ダメだよ。それはもう少し後だ」
「……後になったら教えてくれるの?」
「約束しよう。……と言って信じるかい?」
「そんなこと言うってことは、やる気ないの?」
「ある。が、君にとってはタダの口約束になるだろう? 文字に書いても、そんなもの、証拠隠滅してしまえばそれまでだ」
「そこまで考えるって……」
証拠隠滅する気かおい。呆れるぞ。
「可能性の話だよ。……それでも、信じる信じないの話だ。ただ、私は誓っておう。時が来たら語ると。何もかも、隠し立てすることは、まぁ、少なく、真実を。できるだけ」
少なくってなんだ少なくって!! とツッコみたいが、空気が真剣なので少し自重しよう。
「わかった」
「ありがとう」
「で、二つ目? もちろん帰りたいわ」
「三つ目、どこに?」
「それはもちろん……」
「四つ目、記憶はあるかい?」
「っ」
「五つ目、どこまで思い出した?」
「……」
「六つ目、誰が何を知っている?」
「……」
「なんで何も言わない?」
「そんな……」
「?」
「そんないっきに言われて答えられるかぁぁああああ!!」
おい、さっきまでの真剣な空気無視してつっこんじまったじゃねぇかぁぁぁあああ!!
「それは申し訳ないね」
「で、何だっけ? 記憶? ないわよ。でも、思い出したことと、失くしてないのもあるみたい?」
「思い出したことについて、何を思い出したんだい?」
「そうね……」
思い出すのは一瞬の景色。一枚の絵のような、あの景色。
「よく、わかんない……」
「そうか。では、先に七つ目の質問といこう」
「あれ? あれは? 誰が知ってるとか」
「その前に記憶について整理したい」
「わ、わかった」
「それで七つ目。失くしてない基準はなんだ?」
「わかんない。けど、そうね……少なくとも常識、とか言うのは覚えてるでしょ。あとは、ほんと、どうでもいいことは覚えてるかな……」
「常識は、ともかく。どうでもいいこと?」
「英語の成績が悪いとか、体育の成績は良かったとか?」
「英語……?」
「あぁ、英語っていうのは、たぶんこの世界の言葉かな? 言葉っていうより文字かも」
「言葉ではないのかね?」
「うーん、あ! これのこと、紅茶っていったり、ティーっていったりしない?」
カップを少し持ち上げて示す。
「あぁ、言うねぇ……」
「それは私の国っぽいんだけど、ティーは英語で紅茶は私の国の言葉なのよ」
「なるほど。しゃべり言葉は君の国の言葉なのか……では文字は読めないということだね?」
「読めない。ところどころ単語はわかるけど……」
「おそらく言葉は主人公補正だと思うけど、難しいものだね……。前のアリスは話せたし読めたし書けたはずだけれど」
「その前にはいなかったの?」
「……あぁ、いたかもしれない……後で調べてみよう」
「記録とかがあるの!?」
だったら少しは帰る手がかりとか、てか、役持ちとか……!!
「あるにはあるが、君には普通に見えないし、見せないよ。この国の機密事項に近いからね」
「えー、まじー……?」
「まじ、だ。さて、戻ろう。六つ目、誰がこのことを知っている?」
「誰に教えたかな……ラビは絶対でしょ? 後は……あれ? ごめん、覚えてない」
「覚えてないのかい?」
「別に重要なことだと思ってなかったから、さらっと言ったこともあるかもしれないし……ん? なんで重要じゃないの?」
名前と同じ。どうしてそこまで重要視していないんだ? 大問題だよね!?
「ふぅむ。記憶に不具合。理由は不明。重要度は低レベル。なんでだろう。さすがに大事のはずだ。前例があるなら覚えてるはず……もう一回漁ってみないといけないか?」
グレイがぼそぼそつぶやいているが、それどころじゃないんでね! あ、あれか!? 忘れたら帰れないみたいな感じか!?
「ゲーム進行には不必要? それはありえない。……アリス、最後の質問だ」
「なに……?」
「私は君にとってどういう存在かな?」
「ハぁ?」
どうした? 頭わいちゃった? 私はわきそうだけどね!!
「ただの興味だよ」
「どうって……役持ち?」
「私個人をどう思っているの?」
「……油断できない?」
「……」
口がひくひくしてますよ? これはフォロー入れるべきか……。
「え、えっと……ミカにめっちゃ慕われてるよね!!」
「……君の評価はそれだけなのかい……?」
「ほ、他には……あぁ! オトナだよね!!」
「君は私をなんだと思っているのかな!?」
「えー!? だってなんか、怪しい!!」
「怪しい!? もういいよ……」
背後にトホホという文字が見える……なんか、ごめんなさい……。
「アリス、質問に答えてくれてどうもありがとう。城に帰るかい? なら送らせるけど」
「……今何時?」
カーテンは閉められているけど、だいぶ明るい。今は、昼くらい? あっれ~? おっかしいなぁ……私ここに来たの夕方近かったようなぁ……?
「昨日お茶会をして、今日の十一時くらいに君は目覚めて私とお話したところかな」
「何のほほんってしてるんだぁ!! 大問題だ!! 外泊!?」
「大丈夫。連絡はさせたよ」
「そういえばなんで私眠ってたのかなぁ!?」
「し、しらないな~」
「怪しい!! やっぱりあんたの評価は怪しいで十分よ!!」
「ひ、酷くないかい?」
「うわぁぁああああああああああああああん!!」
その後はミカに何とかなだめさせて、城まできちんと送られました。
アリスはミカが何か言われそうなので、城門の近くまでで帰ってもらいましたとさ。
めでた……
「くないですよ? わかっています?」
「は、はい……」
現在アリスはラビにお説教中。
みっちりと、やられたそうです。おしまい★




