女王陛下の仰せのままに
「さ、アリス」
固まっていると、ラビが後ろに下げるように手を引いた。
「女王陛下との面会も済みましたし、もう用はないでしょう?」
「なんじゃ、ラビ。妾とアリスの邪魔をするのかえ?」
邪魔ってなんでしょう!?
「え、えっと、ラビ?」
「しっ」
「ほら、アリスも妾と話したがっておる」
それはどうでしょう……。
「アリスはまだこの国を見回り終わっておりませんし」
「そんなの後でよかろう?」
「場所を把握するのは早ければ早い方がいいと思いますが?」
「時間はたっぷりとある。そんな焦らずともよかろう」
「ですが……」
「あ、あの!!」
思わず叫び声をあげた。このままじゃ決着がつかない!
「なんじゃ?」「なんですか?」
「わ、私はできるだけ探索したいと思うんですよ! 住む場所もないし!? 探さないと!!」
「城に住めばよかろう?」
「え……」
このメルヘンチックな城に? 私が? 似合わねぇ!!
「そこじゃないと思うんだけどなぁ……?」
ジャックが苦笑いでやんわりツッコんできた。
またもや心の声が!?
「陛下、アリスが来たからと言って、それを理由に仕事をさぼろうなどとは……」
「……うるさい」
「……陛下……」
「うるさいぞ、エース」
図星だった御様子で。
「だいたい、アリス! お前はどうなのじゃ!」
「え、私!?」
「このまま住む場所がなくてもいいのかえ!?」
「それはよくないですけど!!」
「そういえば、敬語を抜きにせよ!!」
「あ、はい!! じゃなくて、うん!!」
「それでよいのじゃ。して、どうなのかえ?」
「え、えーっと……」
まずい! なんかペースが女王様だ!!
「そうよねぇ、野宿なんてできないし……こっちでの生活どうするか……」
「城に住めば衣食住すべてそろうぞ? それも、この国で一二を争うおいしい食事に、きらびやかなドレス。アフタヌーンティーに王宮一のパティシエが作る素敵なお菓子などもついてくるよ?」
「ドレスはいいけど、食事とおやつ!!」
城だもんね、マカロンとか? スコーンとか? じゅるっ……
「アリス!? 食べ物につられないでください!?」
「花より団子だねぇ!?」
「年頃の女子が、はしたないぞ……?」
「うるっさいわね! できるならおいしいものがいいじゃない!?」
私だって人間ですからお腹はすくし、食べるならおいしいものがいいに決まってるじゃないか!!
「そうだろうそうだろう? それで時々妾と遊んでくれたら、妾を放っておかなければ、後は好きにしていいぞ?」
「なんて魅力的!!」
「どうじゃ、どうじゃ?」
「じゃ、じゃぁ、おねがいしても、いいでしょうか?」
「敬語」
「い、いいかしら!?」
「もちろんじゃ。妾が望んだのだからね!」
「よしっ、これでホームレスの心配はなくなった!!」
思わずガッツポーズをとる。
男三人はアリスの背後でとても微妙な顔をしていた。
ラビ、悔しそうな、嬉しそうな、食べちゃいけないと言われたお菓子を食べてしまったけど、すごくおいしかった、みたいな顔。
ジャック、嫌なことを目の前にして、何かを決意した顔。
エース、心を全部押し殺そうとして、けれど、つらい、というのが表面に出てきてしまった顔。
それはすべて、アリスには見えなかった。
そしてハートは、それらをすべて見て、新しい玩具を手に入れて、これからどう遊ぼうかと顔をほころばせていた。
「お前たち、アリスはこう言っているよ? 文句はありや?」
「いいえ。女王陛下」
「俺らにぃ、何の反論もできるわけないじゃないですかぁ」
「すべては女王陛下の仰せのままに」
「ふふふ……」




