注意
「アリス」
大きな扉(ハートの飾りが派手で、まっかっか)の前で立ち止まって、エースに声をかけられる。
「何?」
「あー、その、なんというか、だな……」
目を泳がせ言いづらそうにどもるエース。
「注意事項……だよね……?」
嫌そうに後を少し続けるジャック。
「あぁ……」
「うーん……」
「な、なによ、二人とも!?」
すっごく不安なんですけど!?
「ひ、ひとーつ! 無駄口は叩かなーい!!」
ジャックが振り切るように大声をあげて、一つ目をあげる。
「ふ、二つ? 受け答えはしっかりしろ。少しでも遅れると睨まれるぞ」
ジャックの雰囲気に押され気味にエースが続ける。
どゆことやねん。
「みーっつ! ……と、とにかくあの方の機嫌損ねたら死ぬから! 気を付けて!!」
「な、なによそれ!!」
突然の不穏な宣言。
「三つ目が本題だ。特に今は機嫌が悪い。どこの誰とは言わないが、仕事を放り出したおかげでな」
「ぐっ……」
見えない矢がジャックに突き刺さったのが見えた……。
「わ、私帰っていい?」
「あ・り・す♪」
「……!!」
ジャックにがっしりと腕をつかまれた。
テメェだけ逃がさねぇよ? とその笑みが語っておられます……。
「ここまで遅れたのはぁ、君のせいでもあるわけでぇ? ね?」
「ね? じゃないわよ! 仕事ほっぽったのはあんたでしょう!?」
「でもほら! 門の所であって、今ここまで君を送らなかったら後五分は早くついてたと思うんだぁ!?」
「五分程度であの方の機嫌がかわるとは思えんがな」
「うぐっ」
「エースぅ……」
ナイスフォロー!
「だからと言って、君をここで返すわけにもいかないんだ。この世界の性質上な……」
上げてからの落とすだと!?
「嫌だぁ!! 放せぇ!! 私はまだ死にたくない、たぶん!!」
「ですから、たぶんとか言わないで、もっと自分の命を大切にしてください、と言いましたでしょう?」
私たちがギャーギャー騒いでいると、後ろから、また後ろから声をかけられた。
「騒がしいと思えば、ジャック君とエース君じゃありませんか。仕事は終わったのですか?」
「こ、これはラビ様」
「わーわー! ホントすみませんでしたぁ!!」
二人はラビの登場で多少でも慌てているようだ。……私への注意が
「まったく、話は中で。それよりも」
それていたこの瞬間
「アリス、ちゃんと来てkぐふっ!!」
迷わず騎士たちを振り払ってラビに向かって飛び蹴り!!
どさっ……
ラビが倒れた。
し~ん……
固まる場の空気。
「ふぅ」
いい汗かいたぜ(爽煌)。
私の、腕で汗をぬぐう動作がきっかけになったかのように(てか、なった)、騎士二人が騒ぎ出す。
「わーわー!! ラビ様ぁ!? 大丈夫ですかぁ!?」
「あ、アリス!? 君は一体何を!?」
ラビを助けに行くジャック。
私を諌める? エース。
「あ、アリス……いい加減出会った瞬間攻撃しようとするのやめましょう? ね? ね?」
被害者、変態ウサギ。
「はっ」
「は、鼻で笑った? 今鼻で笑いました!?」
「……はっ」
「ダメ押しですか!?」
地に這いつくばったまま変態が何かを言っているようだが、私は気にしない。
「ら、ラビ様? 大丈夫ですかぁ? お、起き上がれますか?」
「大丈夫です。ありがとう。……メガネ……」
「どうぞぉ」
吹っ飛んでったメガネを拾い、渡す。幸い、メガネは無事なようだった。
「あ、ありがとうございます」
メガネ割れてしまえばよかったのよ!!
「アリス、いきなりあんなことしてはいけないだろう?」
エースは怒鳴ったりしない、諭す系怒り方だ。
「それと女の子なんだからもう少しおしとやかにだな……」
「叱り方がおっさん臭いわよ」
「おっさん……」
ショックを受けたようだった。ポカーンとしている。
「ともかく! 私はそこの変態ウサギが気に食わないのよ!!」
「ひ、酷いじゃないですかアリス!!」
「酷いのはあんたじゃないの! いきなり連れて来て森の中に放置とか! 紳士のすることじゃないわ!!」
「そ、それはゲームだから仕方がないと……」
「ゲーム? ゲーム理由にすればなんでもアリなのかしらぁ!?」
「そういうわけじゃありませんけど、ルールなんです!」
「そんな理不尽なルール、改正されるべきだわ!!」
「世界で決められたルールなんですから無理なんですよ!」
「だからそれが意味わか……だーもう!! 私はそんなこと言いに来たんじゃねぇのよ! さっさと私を家に帰せー!!」
「あれ!? 一度は納得していただけたかと思ったのですが!?」
「この世界のわけわかめさに怒りが再燃だちくしょー!!」
「婦女子がそんな口調はいけません!!」
「あんたは私のおかんかー!!」
ぎ、ぎ、ぎ……
「なんじゃ、騒々しい……」




