「逃走中」
リサの腕はがっしりと太い筋肉質な大柄の男にしっかりと捕まえられていた。「ん~?君達はどこから現れたのかね?」デカイ図体ながら気色の悪い高い声を出しているその男はよく見ると先ほどトイレの手前で会った警察官であった。しかしmiyakoとリサの格好がクラブ用の派手な服装からパジャマに変わっていることや髪の毛を二人とも降ろしているのでそうとは気付いていないようだ。
「えぇっ!あんた何妹の腕掴んでるばー!なんかぁ!婦女暴行かぁ?」とmiyakoは咄嗟に事件を見に来た近所に住んでいる野次馬を演じ始めた。リサもそれに合わせて「ねえねえ助けて!変なおじさんが腕掴むわけよぉ」といって泣き始めたので警官もあわてて「いや、本官はそんなつもりでは…」とたじろいだのでmiyakoはたたみ掛けるように大きな声で「だから家から出ないで寝れっていったばーよ!」と警察官の手をリサの腕から離して荷物も持たずに国際通りから脇道の浮島通りへ向けて二人は走った。
「miyako荷物どうするの?」とmiyakoに手を引かれて走っているリサは不安がった。しかし今は戻れない。荷物は人目につかないくらい路地の奥に隠してあるのでほとぼりが冷めたら後で取りに行こうとmiyakoは思った。「後で戻るから今はお願いだから走って」とmiyakoがいうとリサは本気になって走り出した。
後ろから誰か追ってくるような気がして二人はわざとでたらめに道を変えながら走っていた。
辺りが静まりかえり、昼の喧騒を忘れた那覇の下町は11月ともなると沖縄といえど肌寒い。
息を切らしてリサが「もう無理!走れない!」とmiyakoの手を離してひざに手をついて息を整えた。
暗闇に包まれた町は動くものはmiyakoとリサの二人だけで他は時間が止まったように闇と冷気に包まれていた。
miyakoもさすがにここまでは追ってこれないだろうと思い息を整えた。「今何時?」リサが聞いた。
「もう2時になる」「財布も携帯も無いんじゃ帰れないよ」「パジャマにヒールじゃこれ以上走れないしね」
二人はしばらく息を整えていたがこんな格好で那覇の町をうろうろすることも出来ない。
「でもいきなり芝居に入るからびっくりしたよ!」とリサは急に先程の警官とのやり取りを思い出して笑い始めた。「だって本当にリサあの警官に捕まったときタバコで補導されてるヤンキー中学生みたいだったから…」とmiyakoが恥かしがり頬を染めた。リサは面白がってmiyakoに「miyakoはいつもクール装ってるけどホントかわいいなぁ。よっ!助演女優賞!」miyakoは主演じゃないんだとおもったが確かにあの嘘泣きは主演女優賞ものだなと思ったので何も言わず笑顔でリサの顔を見ていた。