「カンザキ」
黒いオトコと一言も話さないまま時は流れていった。すると突然音楽が止み、急にクラブの中は明るくなった。
クラブは魔法から目覚めたようにぬかるんだ床には酒とプラスティックのコップやビール瓶と氷が散乱していてとても汚い本当の姿を見せた。
「全員そのまま動かないでください。未成年の取締りを行っています。」警察官らしい手持ちのスピーカーから流れる耳障りな音が店内にケタタマしく響いた。
リサがロッカールームから混乱している店内の群衆をかき分けてmiyakoのテーブルにやってきた。miyakoは先月の10月に二十歳になったばかりだったが早生まれのリサはまだ19歳で飲酒してるのでかなり取り乱している様子だった。
「早く出ないと偽造したお姉ちゃんのIDってばれちゃうょ」とリサは手早くロッカーに一緒に入れていたmiyakoのオレンジ色のCOACHのバックを投げつける勢いでmiyakoに返した。
しかし店内の客が減らないのは各出入り口に警察官が配備されていて見張っているに他ならずmiyako達だけ脱出するのは至難の業のように思えた。
「いてえ!やめろよ!離せ!」とホスト風の男たちの一人が警察に連れて行かれるのが見えた。
「未成年の飲酒取締りにこんなに警官を配備するわけが無い。これはもっと違うものだ。」と黒いオトコは唐突に話しはじめた。
「お嬢さん方未青年?」黒いオトコはそういってmiyakoとリサを交互にみて少し考えてる様子だったが「俺はカンザキ」というと自然に席を立ち、正面玄関へ向かって歩き出した。2~3歩歩いて二人が付いて来ていないのに気がつくと「逃げたいならついてこい」とmiyakoの耳元で囁いた。