「午前零時頃」
クラブ「SAICORO」の中はもう午前0時をまわっていた。盛り上がりのピークを過ぎるとあとは声をかけられなかったかわいそうな女の子たちや酔っ払いすぎで最早ナンパではなく強要ではないかと思われる強引で相手にされないかわいい男達、席で寝てしまっている客、女の取り合いで喧嘩になりそうな輩が残ってしまう。
あんなにフロアで目立っていた綺麗でタイトでセクシーな露出の多いベテランお姉さん達はこの時間になると魔法のように甘いR&Bにあわせて背の高い細マッチョのクリーンな男子の腕の中で深く濃い甘い香りでかわいい男の子達を酔わせていた。
リサが「ほらっ!今夜は一緒に踊るよ」とほとんど無理やり腕を引っ張られてチークタイムの薄暗くなったフロアの中に立った。
「miyakoはかわいいんだからもっと踊らなきゃ!」リサはそういって両手を取って楽しそうに体を揺らし始めた。miyakoもリサに合わせて巨大なアンプから震え出す切なくて甘い音楽に身を任せた。miyakoはこんな時間がずっと続けばいいなと思った。
数人の男子達が声をかけてきたがリサとmiyakoは相手にしなかった。リサには新しい彼氏がいたしmiyakoもクラブでオトコを探そうとは思っていなかったからだ。
「そろそろ行こうか」リサは音楽がアップテンポの曲に変わるとへんな男に声をかけられない様に急ぎ足でロッカーに向かった。「先に行ってて」miyakoはリサの手を離し、注文したばかりののカシスオレンジにまだほとんど口をつけていないことを思い出したので先ほど座っていた自分達のテーブルむかった。