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「守るもの」


 先にタマキンが騒がしい寝音を立てている男部屋に黒い個人タクシーの運転手の元さんは静かに入ってきた。隠しカメラや盗聴器の隠せそうな電気回線の流れを部屋中隈なく探し、天井とトイレにあった2台の監視カメラと電話機の裏の盗聴器を見つけ出し、トイレに流した。


 元は白いタンクトップを脱いで古傷だらけの上半身を鏡に移しながら背中まで傷が付いていないかチェックした。


 考えることがたくさんあり、寝不足の頭には厳しい作業だったが若いタマキンの工事現場のような大きないびきがさらにそれを困難にした。


 元はいつもゆかりのことを第1に考えて行動してきた。それは恋心に似ていたがそれよりも切実で忠義心といっても過言ではなかった。


 元が初めてゆかりに出会ったのは元がまだ若く刺々しい時代のことだった。


 小さな頃から体が大きい元は「デク」とあだ名を付けられて鈍い奴と言われていたが無口で心根の優しい少年であった。


 父親の顔は2~3歳のころ一度だけ見たことがあったがそれが本当の父親なのか当時いつもお金に困っていた母親の男なのかはよく分からなかった。


 そんなある日飼っていた猫がいなくなって近所を探していると地元では有名な不良グループのリーダーとその仲間達が自分の買っている猫の「みい」を捕まえて実験と称し、猫をいたぶっているところを発見し、それをやめさせようとしてみいに覆いかぶさり「何だこいつ」と年上の不良たちに袋叩きにされたがみいを最後まで守った。


 あきれた不良グループは殴り飽きてどこかにいってしまった。



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