「リサ」
miyakoはリサに話しかけられながらテキーラで鈍く陽気になった頭で〈リサの様に無邪気でかわいい女の子はときっと得するんだろうな〉と思った。
リサはタイトな黒の長袖のトップスに大きな透明のプラスティックジュエリーがジャラジャラした長いネックレスをつけて白いハンチング帽を被っていた。白く健康的に伸びた足白いフワフワのレースのついたミニスカートと同化し、赤いエナメルの可愛いハイヒールがまるでどこかの読者モデルみたいにみえた。
「ねぇちょっときいてるの?」リサがクラブの重低音に負けないくらいに張り上げた高い声で近くの客はこっちを振り向いた。
「うんうん聞こえてるよ」とmiyakoはリサをなだめた。リサとは高校生のときからの仲で地元の違ったはじめての友達だった。
リサは中学のとき「ミスター」に選ばれた鼻持ちならない男と付き合ってから地元では嫉妬に狂った女たちにハブられたりしていたと聞いたことがある。miyakoはその「ミスター」にも興味ないし自分の知らない地元の仲間との確執などまったく興味がなかったので小さくて可愛い同級生がいるなというくらいにしか思っていなかったのだが、2年になって同じクラスになったのがきっかけで知り合いリサのほうから「miyakoってどんな人?」と人懐っこく話しかけてきてくれた。miyakoもリサのことを悪しからず思っていたので自然と二人の仲は親密になっていった。
高校2年の2学期にリサが話があるというので野球部が使う広いグランドを見渡せる校舎の裏に行った。
「ねえ誰にもいわないでよ!私、彼と別れちゃった。」miyakoはなんとなくそうなるんじゃないかと感じていたので別段驚きも無かったがリサの次の言葉でさすがに驚いた。「でね、赤ちゃんができちゃったんだ。でもおろそうと思ってる。miyako一緒に病院に言ってくれない?」miyakoは内心驚いていたが表には出さずただ「うん」とだけ答えた。
それから数日後リサの住んでいる那覇市から離れた宜野湾市の産婦人科から出てきたリサは帰り道でずっと泣いていた。miyakoはかける言葉を捜したがどれもひどく陳腐に思えてただ帰りのバスの中でリサの隣で寄り添っていた。
それ以来リサは親に話せないことや悩みをmiyakoに話すようになった。miyakoも次第に心を許すようになりいろんなことを二人で話しまくってお互い電話代に悩まされる日々が続いた。
そんなこともあって高校を卒業した今も二人は時間があると連絡を取り合い、よく一緒に飲みに行く仲になっていた。