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コード・オブ・レヴァリエ  作者: 伊瀬 未兎
第二章 『春の桜魔高祭』
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第二章 『春の桜魔高祭』 2-1

今回はちょっと長めです(いつも長めです。すみません)

 桜魔高祭一日目。




 徹の「裏切り者!」という捨て台詞を軽く受け流した雄介は、


美夏との待ち合わせの場所へと急ぐ。




 すでに校内はたくさんの人で賑わっていて、


数え切れない出店からは客を呼び込む声があちらこちらから聞こえてきていた。



だがやはり、女生徒の人数がとてつもなく多い。



時々刺さる女生徒の好奇の視線がとても痛い。




 幾多ある出店には目もくれず、


雄介は視線から逃げるようにして学校の中心に位置する時計台の下でおろおろしながら待つ美夏の姿を見つける。





「待った?」





 出会い頭に手を振る。



が、美夏は手を振り返さない。



ただ、雄介を見て半歩後ずさるだけだった。





「う、ううん。私も今来たところだから」





 うつむいて目をあっちこっちに泳がせながら、


美夏は依然として雄介目を合わせようとはしなかった。




やはりまだどこかで雄介のことを避けているきらいがあるようだ。



仕方ないといえば仕方ないのだが。




 美夏に聞こえないように短くため息をつく。





「とりあえず……行こうか」





「う、うん」





 雄介が歩き出すと、


4,5歩後下がって美夏は後をついて来る。





――――こりゃ重度の人見知りだな。





 と判断した雄介は、


とりあえず校舎内の廊下を歩きながら適当に目先の看板に目を止めた。





「あそこにしようか」





 看板は廊下にひしめく大勢の生徒のせいでほとんどが隠れて見えなかったが、


チラッと見えた『喫茶』という縦に書かれた文字に一時の安心感を感じた。




とりあえず、ここで話なり何なりして時間を潰せば、


美夏も自然と打ち解けてくれるだろうと思ったからだ。





「お帰りなさいませ、ご主人様!お嬢様!」





 だがしかし、それは大きな過ちにしかならなかった。





「な…………」





 教室に入ってすぐに、


フリルのあしらったこてこてのメイド服を来た女生徒が三人、


雄介達二人を出迎えた。





「ようこそ!二年B組の『メイド喫茶』へ!」





 三人そろってそう言い放つと、


「二名入りましたー!」という掛け声とともに、


困惑する雄介達をぐいぐいと教室の中に連れ込んでいった。




 雄介は見た、


教室の中に無理やり連れ込まれる際、


廊下に置いてあった看板に『メイド喫茶』とピンクの文字で書かれているのを。





「メニューはこちらになりまーす!」





 わけもわからないまま場の雰囲気に流されて、


白い布をかけられたテーブルに案内された雄介達の前に水の入ったグラスを置くと、


生き生きとした声で一人のメイドが手作りのメニューを手渡す。





「おすすめはこちらになりまーす!」





 メイド服の女生徒は一つの項目を指差した。





「も、萌LOVEオムライス?」





 言ってる雄介自身がものすごくいたたまれなくなる痛いメニュー名だった。



だが、その他にも口には決して出したくは無いメニュー名があるのでとりあえずそれにする。





「じ、じゃあそれで」





「あ、私も同じので」





 注文を取るメイド服の女生徒は「かしこまりましたー!」と元気よく返事をすると、


急ぎ足でどこかへと消えていった。





「……なんか……ごめん、色々と……」





「いえ……別に」





 打ち解けるどころかむしろ気まずくなった雄介は、


美夏から目をそらすように右を見た。



が、そこにも思いもよらぬ光景が広がっていた。





「君可愛いねえ、俺と一緒に写真とらない?」





「え~?困りますぅ~」





「いいじゃない別に、な?」





「え~」





 一人のメイドとにこやかな徹が楽しそうに話していた。





「何やってんだあいつ……」





 かかわると面倒くさいことになりそうなので、


とりあえず見なかったことにしてスルー。



こちらのことを気づかれないように雄介は徹から顔を背けた。





「お、男の子ってやっぱりこういうのが好きなんでしょうか?」





 美夏が不安そうにとんでもないことを聞いてくる。





「断じて違う。あれはごく限られた一部の人間だ」





「というと?」





「知らない方が幸せだ」





 美夏の解釈を速攻訂正して、


グラスに注がれた水を一気に飲み干す。



ぷはっと景気のいい声を上げてグラスをテーブル置くと、


メイドが注文のオムライスを持ってテーブルの横に立った。





「ご注文の萌LOVEオムライスお持ちしましたご主人様ぁ!お嬢様ぁ!


……ってあら?雄介君?」





 その声に聞き覚えのあった雄介は顔を上げた。





「先輩!」





 そこに立っていたのは生徒会副会長である亜美だった。





「こんなところで何してんですか」





「何って、


私のクラスはメイド喫茶をやることになったのよぉー。


どう、似合うかしらー?」





 おっとりとした口調で、


亜美はオムライスを両手に持ったまま危なっかしくクルクル回る。



その姿に一瞬ぐっと来るも、


目の前の美夏の冷たい目線が刺さり、


小さく咳払いして気を取り直す。





「そ、そうだったんですか、それは知らなかったなぁー」





 泳ぐ目+棒読み+感情のこもっていない口調で言ったつもりだったのだが、


亜美は「ありがとー」と、


全く誉めちゃいないのににこやかに喜んだ。





「それにしても雄介君、


あなたも隅に置けないわぁー」





「何がです?」





「もうこんな可愛い彼女が出来てるなんて、


うらやましいわー」





「な……」





 言葉に詰まって思わず雄介と美夏はお互いに顔を真っ赤にする。





「ち、違います違います!


これは、その、ええと……そ、そう!幼馴染!


俺たち昔っからの知り合いで、


偶然この学校で再会しまして!


それで桜魔祭もあるからちょうどいいし一緒に回ろうって事になったんです!


な、美夏!」





「え、ええ!?」





「あらあらそうだったのー」





「え、ちょっと!?」





 困惑する美夏に雄介は「すまん!」と無言で両手をあわせて謝った。



美夏は顔を一層真っ赤にさせた。





「じゃあ二人の再会を祝ってー、仲良くお食事としましょうかー」





 亜美は、未だ手に持ったままだったオムライスを雄介と美夏の前に置く。





「じゃ、じゃあさっそくいただきます……」





「え、えーと……い、いただきます……?」





 手を合わせて、


雄介とまだ納得のいかない美夏がスプーンを近づけると、


亜美はシュババッと目にも止まらぬ速さでオムライスを奪ってそれを止めた。



ガチッとスプーンが二つの空しい音を立ててテーブルに当たる。





「……まだ何か?」





「まだ駄目よー」





 亜美が口を尖らせる。





「まだ『おまじない』が終わってないでしょー?」





「は?」





 思わずおかしな声を上げてしまう。




 おまじないと言うと魔法か何か使うのだろうか、


と思う。




 しかし、そういった類の魔法があるとは聞いたことが無いが一体どの属性系統なのか。



風?火?もしくは水?まさかの地?


もしや俺の知り得ない属性系統が存在するのか?




 足りない頭で試行錯誤している中、


亜美は2つのオムライスを横に並べてテーブルに置くと、


おもむろに両手を上げた。




人差し指を伸ばし、それをオムライスの方へ向ける。



そして指を円を描くように回しながらこう言い放った。





「おしくなーれー、おいしくなーれー」





 ガタッと思わず身を引く、


美夏も同様に。





「ほらほら何してるの、雄介君もやるのよぉー?」





「俺もっすか」





「当たり前じゃなーい」





 仕方なく、亜美の後にしぶしぶ後に続く。





「あなたもよー」





「わ、私もですか」





「もちろんよー」





 こうして、とても恥ずかしい二人と、


なんだかとても楽しそうな亜美のとっても痛いおまじないの構図が出来上がった。




周りの女子達の不信な目がもうどうしようなくキツイ。




 何がよかったって、


隣のテーブルに座る徹がメイドナンパに夢中で、


終始雄介達二人に気づかなかったことだった。




ただそれだけだ。





「それじゃあ仕上げにー……」





 地獄のようなおまじないタイムが終わり、



亜美はどこに隠し持っていたかわからないドデカいケチャップを取り出すと、



オムライスの上にハートを描いて、



その中に「LOVE」という文字を書き加えた。





雄介と美夏の名前を添えて。





「ささ、召し上がれー」





 すでに食欲がガタ落ちした二人の前にズイッとオムライスが差し出される。





「いただきます……」





 注文したそばから断るわけにもいかず、


こってりとしたオムライスをガツガツと口に運ぶ。





「おいしいかしら?」





「ふぁい、おいしいでふ……」





 なんだかあまりに空しくなってオムライスを口に含んだまま雄介は泣いた。





「あらあら、泣くほど喜んでもらえてうれしいわー、


あっそうだ」





 亜美は何か思いついたように手を叩いた。





「雄介君はもうゆかちゃんから貰ったのかしらー?」





「貰ったって何を?」





「ほらあれよー、


桜魔高祭の生徒会用ポスター」





「ああ、これですか」





 雄介は胸ポケットから細かく折りたたんだポスターよろしくフリーパスポートを取り出して開いて見せた。





「あーよかったわ、ちゃんと持ってるのね」





 亜美はなぜか安心したように胸をなでおろす。





「あの、これが何か……?」





「う、ううん!何でもないのよ何でもー、


気にしないでねー。




あ、私そろそろ仕事に戻らなきゃ!



ごゆっくりー!」





 似合わない早口でそう言うと、


亜美は足早に二人の元から立ち去っていった。





「天宮先輩も様子がおかしかったけど、


近藤先輩も今日は一体どうしたんだ……?」





 不思議そうに亜美が立ち去っていった先を見ていると、


美夏が横から「あの……」と小さい声で声をかけてきた。





「と、とりあえず食べちゃいましょうか……


もったいないですし……」





「んーまあそうだよな、それしかないよな」





 短い会話を済ませて、


雄介と美夏はただ黙々と案外ボリュームのすごかったオムライスをなんとか1時間近くかけて完食した。

とりあえず作者恥ずかしいです。




何が恥ずかしいって、


こんなことを平気ですらすら書ける自分が。




いざ読み直してみると、





「うわー、俺ぶっとんでるなぁ……」





と、たそがれてみたりして。




そんなこんなで第二章 2-1段落。



いかがでしたでしょうか?




やっぱり長すぎて読む気がうせますかね?




そう言ったところもコメントしていただけると嬉しいです。




いつでも受け付けております。




次回、第二章 2-2段落。



次回は結構短めです。



わっかりやすい伏線が張られます。



そして三段落の準備段階です。

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