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コード・オブ・レヴァリエ  作者: 伊瀬 未兎
第一章 『適正検査《ベータテスト》』
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第一章 『適性検査《ベータテスト》』 4

とうとう最後の第4段落。



なんかもう一気にココまで出しちゃったけど続きどうすんのって話が頭の中でぐーるーぐーる……。



ま、それは後で考えるとして、とりあえず第一章最終段落です。どぞ~

「……何だここは」



 そう言わざるを得ない場所に、雄介は現在立っていた。



 天井には豪華なシャンデリアが吊るされており、


教室より一回りも二回りも大きい広さの床一面にはふかふかの毛皮の絨毯が敷かれていて、


豪華な黒い業務用ソファがキラキラとした装飾があしらわれたテーブルを囲んで4つ並んでいた。


純白の壁際には西洋をイメージさせる巨大な木製のクローゼットが2つ少し離れたところに置いてあり、


奥の部屋にはなぜかキッチンらしきものが見え隠れした。



 まるで超高級ホテルのVIPルームを思わせる内装だった。 いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。



「何を呆けている、こっちへ来い」



 不意に、部屋の内装に目を奪われていた雄介の前方から声が聞こえた。


よく見ると、部屋の一番奥には紫が、


これまた西洋をイメージさせる木製の巨大な業務用机に両肘をついて指を組み、ジッと雄介を見つめていた。



 紫の前に置かれているテーブルの周りに並べられているソファには、


別の女生徒が2人、テーブルを挟んでそれぞれ向かい合うようにして座っていた。



 右側に座る女性の髪はおしとやかな雰囲気を醸し出すボブカットで、


おっとりとした表情でにこやかに雄介に笑いかけている。



 もう一方、左側に座る女性は、肩くらいまで伸びた銀色のショートヘアーで、


雄介の存在にまるで最初から気づいていないかのように、


ただひたすら無言で手に持っている本に目を運ばせている。


身長が足りないのか足がわずかに宙に浮いている。



 雄介は4つある内、紫と向き合う形になるソファに座らされた。



「さて、まずは自己紹介といこうか。


まずはお前から見て右側に座っているのが、二年副会長の近藤こんどう 亜美あみ


そして、左側に座っているのはお前と同じ一年である書記の江向えむかい 真奈まな


そして、二年である私、生徒会長の天宮 紫だ」



「よろしくお願いしますね、江室君」



「……よろしく」



「あ、どうも……って、江向は一年?」



 雄介の疑問の言葉に、紫は体勢を崩さずに「ああ」と口を開いた。



「先ほど偶然ばったりあったのでな、


ちょうどいいから生徒会室まで引っ張ってそのまま生徒会入りさせた」



「な……ん?」



 なんと横暴でいいかげんなのだろうか。


相手の了解なしに無理やり生徒会入りさせた生徒会長もすごいが、


それに文句の一つも言わない江向もすごい。


当の本人は未だ本に目を向けているが。



「……ところで江室」



「なんです?」



「誰が口を開いていいと言った?」



「……はい?」



 いきなりの事に、もしかしたら聞き間違いじゃないかと思い、思わず聞き返す。だが、それは杞憂でしかなかった。



「お前のその乏しい脳みそじゃ理解できなかったか?誰が喋っていいと許可を出したと言っている」



 まるで頭をハンマーで殴られたかのような衝撃を受けた。


容姿端麗成績優秀品行方正。


完璧美人って言われている噂ありきの桜魔高校生徒会長、天宮 紫は、


実は「品行方正」の方向性を間違えたいわゆる「S」な人だった。


いや、ただ嫌みったらしいだけとも言えるが。



「土下座」



「え?」



「二度も言わせるな」



 その言葉にピキッと額に血管が浮き出るも、


亜美の「ごめんなさいね。ゆかちゃんがいじわるして」のおっとりとした言葉に、雄介の怒りのボルテージはしゅるしゅると激減する。


江向は本に向いたままだ。



「私の気が変わらないうちに早くしろ。死にたいか」



 紫の言葉に対して雄介は怒りをぐっと飲み込んで、わけもわからないまましぶしぶ両膝をつき、両手を前に置いて頭を床につけた。



「すみませんでした」



 それで満足したのか、紫はフンッと鼻を鳴らして「よろしい」とつぶやいた。



「立て」



 言われるがままにゆっくりと立つ。



「今日お前を呼び出したのは他でもない、『適性検査』のやり残しを終わらせるためだ」



「適性検査?」



 思わず口を開いてしまい、紫の鋭い眼光を浴びて慌てて口を閉じる。



「聞くところによると、お前は西嶋先生の攻撃を魔法を一切使わずに自滅したとか」



「自滅はしてないと……」



「お前の意見は聞いていない」



「……すんません」



 この場から逃げ出したいという気持ちを押さえ、


雄介は姿勢を崩さずにただ淡々と無言で紫の報告書を読む声を聞いた。


どうやら適性検査のやり残しは全て生徒会が行うようだ。



「で……結局、お前は何もせずに寝てただけか。このマヌケめ」



 紫は一枚きりの報告書の紙を人差し指と親指でつまんでひらひらと揺らした。



「別にそこまで言わなくても……」



「お前にはぴったりの名前だとは思うが?」



 紫のあまりに横暴すぎる言葉に、さすがに怒りを隠し切れなくなった雄介は無言で立ち上がった。



「おい、誰が立っていいと――――」



「……先輩の言うことはもう聞きたくありません、うんざりです。


先輩がどういう人なのかも今回のことで身に染みてわかりました」



「……何だと?」



 雄介の言葉に、紫の顔がピクッと歪む。



「先輩はどうやら他人を下にしか見ないようですが、


俺はそんな人の言うことなんか聞きたくありませんと言ったんです」



 部屋中の空気が一気に凍りつく。


二人の間に座る亜美はどうしていいかわからずに、二人を交互に見ておろおろしている。



 一方の江向はやはり目を本に向けるだけで、別に周りのことはどうでもいいようだった。



「……私は先祖代々受け継がれる由緒正しい天宮家魔術者家系の令嬢だぞ、


怖くはないのか?」



「それがどうしたっていうんですか。人は皆平等です。地位なんて関係ない」



 雄介のその言葉に、紫は驚いたように目を見開くと、ニヤッと口を歪ませた。



「ほう、おもしろい。私に面と向かって意見をしたのはお前が初めてだ。いいだろう。では勝負をしよう」



「勝負?」



「そうだ、ここにまだお前が検査を終えていない項目一覧がある」



 そう言って紫は、一枚の紙切れを雄介に渡した。


紙全体にはびっしりと上から下まで細かい項目が並んでいた。



「その項目の内、一つでも私の上を行くようなものがあれば、


私はお前のことを認めよう、今後見下すような言い方もしない。


今は昼休みだ。時間はあるだろう?」



「ちょ、ちょっとゆかちゃんそれは――――!」



「……わかりました。望むところです」



「江室君!」



 亜美が慌てて勝負を止めようとするも、雄介は自ら受けて立って出た。



――――大丈夫だ、やれる。出来るはずだ。自分を信じろ江室 雄介!



 自らにそう言い聞かせ、雄介は拳を強く握った。



「では行くぞ」



「お願いします!」



「では第一項目――――!」





 ◆ ◆ ◆ ◆





 額を大粒の汗が流れ、絨毯の上にポタッと落ちる。


酸素が足りていないかのように苦しそうに息を切らせ、


今にも倒れそうな勢いで雄介は絨毯の上に手をついていた。



「ふむ……『属性系統』も『適正術式』も判定不能でランクは全て最低のE。


『魔力容量』はAとそこそこはあるようだが、


Sランクである私に比べれば大したものでもない……と。


威勢良くほざいていた割には散々な結果だな。まさに愚の骨頂だ」



 紫のあざ笑うかのような台詞に、雄介は小さく「くそっ」とつぶやくだけで何も出来なかった。


高級そうな絨毯の毛をむしらんばかりに拳を握り締める。



「……勝負あったな」



 紫はもう用はないと言わんばかりに、雄介の目の前に「E」の文字ばかりが書かれた紙切れを落とす。



「……ちくしょぉ……!」



 雄介は思わず声に出して叫ぶ。涙が紙の上に数滴落ちた。



「……悔しい気持ちはわかるがあきらめるんだな、それがお前の今の実力だ」



 そう言うと、紫は他の二人を連れて部屋を後にしようとした。



 紫の言葉で、雄介は心の中で何かがはじけたのを感じていた。歯がギリッと軋むのがわかった。



「……お前に……」



 雄介の言葉に、紫はドアに手をかけようとしたところで後ろ向きのままその動きを止めた。



「お前に、お前に何がわかるって言うんだよ!!」



 立ち上がり様、雄介は後ろを向いたままの紫の背中に向かって叫んだ。



「悔しい気持ちはわかる?あきらめろ?これが俺の実力?そんなの……そんなのわかってる!


でも、そんな簡単にあきらめられるかよ!


俺は魔法が使えるようになりたいんだ!


使えるようにならなきゃ駄目なんだ!


……じゃないと、俺は全てを失うことになっちまうんだよ。この気持ち、お前にわかるか!?」



 敬語を使うことも忘れ、そこまで言ったところで雄介は激しくむせた。


依然として紫はドアの向こうを見つめたまま動かない。



 亜美が不安そうに雄介を見つめ、ついで紫に向かって「ゆかちゃん」と不安げに小さく名前を呼ぶ。



 果てしなく長く感じた数秒の沈黙の後、ふと、紫がゆっくりと口を開いた。



「…………明日。放課後に生徒会室に来い」



「……え?」



 息も絶え絶えの中、雄介は疑問の声を漏らした。



「聞こえなかったか。


明日の放課後、ここに来い。


一から鍛えなおしてやる。


この私が生徒会長を勤めていながらお前のような落ちこぼれがいるのは大変迷惑だからな」



 紫のその言葉に、亜美の顔がほころぶ。



 紫はそれ以上何も言わず、生徒会室を後にした。後ろの二人も後に続く。



 後に雄介は拳を強く握り締め、うつむいたままぼろぼろと嗚咽交じりに涙を流した。





 ◆ ◆ ◆ ◆





「いじわるしちゃ駄目じゃないのゆかちゃん」



 廊下で紫の後ろを歩く亜美がぼやいた。江向はすでに自分の教室に戻っている。



「いじわるなぞしていないぞ」



「嘘ばっかり、ゆかちゃんこの学校でトップレベルの実力なのにあんな無謀な勝負吹っかけるなんて。


初めから勝てるわけないじゃないの」



 亜美の言葉に、紫は「そうだな」と小さくつぶやくだけだった。



「それに、どういう風の吹き回しかしら?ゆかちゃん」



 亜美が後ろ手に手を組んで、前を歩く紫の顔を覗き込む。



「何がだ?」



「江室君のことよ。


ゆかちゃんが言ったのはつまり江室君を弟子にするって事でしょ?


ゆかちゃん今までそんなこと無かったのにどうしてかなって」



 亜美の言葉に紫は小さくフフッと笑う。



「さあ、どうしてだろうな」



「ええ~!なによそれぇ!」



 亜美は不満そうに口を尖らせる。



「そう怒るなってあーちゃん。ただ、あいつは、なんだか昔の私に似ていたような気がして、な」



「昔のゆかちゃん?」



 亜美の言葉に紫は小さく頷く。



「昔のゆかちゃんのことぜひ知りたいわ!」



 亜美が手を合わせて目を輝かせる。



「ひ・み・つ」



「ええー!おーしーえーてーよー!」



「だーめ」



 紫はそっけなくそう答えると、歩くスピードを早めた。



「ああ!逃げちゃ駄目よゆかちゃーん!」



 亜美もゆったりとした仕草でその後を追う。




 足早に歩く紫の心の中では、亜美に言った理由とは別の、


もう一つの理由となった言葉が何度もリピートされていた。

 


――――人は皆平等です。地位なんて関係ない。



 彼の言ったこの言葉は、紫にとってはとても大切な言葉だった。


昔、まだ小さかった頃の、大切な……。



「地位なんて……か」



 紫は小さくつぶやく。心なしか顔がほころんでいるように感じた。



「ゆかちゃん何か言ったかしら?」



 亜美がひょこっと顔を覗かせて問う。



「いいや、何も。さ、もうすぐ授業が始まるぞ、早く戻らないと」



「うん!」



 二人は校舎の長い廊下を足早に歩いていった。

むぅ、少し展開が急すぎたか……。

まぁ初心者はこんなもんか。



そんなこんなで、第一章『適性検査』終わりです。大体一週間後辺りに、第二章を執筆したいと思います。



次回、第二章。



お祭りの始まりです。初デートです。リア充です。そして物語は急展開を迎える。

ここで、江室の秘密が少し明かされます。


こうご期待

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