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コード・オブ・レヴァリエ  作者: 伊瀬 未兎
第一章 『適正検査《ベータテスト》』
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第一章 『適性検査《ベータテスト》』 3

そんなこんなで第3段落。



やっとここで魔法を使います。



描写は出来る限りわかりやすく書いたつもりですが、


もしかしたら読む人によっては余計わかりにくくなってるかもしれません。



そんなところもご指摘いただけると助かります。

 実際に検査を実践でやるとなるとやはりこういうことになるのか、


余計な事を言わなければ良かったと今更ながらに後悔する。





「それでは準備はいいですかー?」





 遠くで先生が叫ぶ。




雄介と先生は、向かい合う形でそれぞれ十分な距離を取って対峙していた。




他の生徒達は、徹を含めて全員端に寄っている。





「いつでもいいですよー」





 遥か向こうで先生がぴょんぴょんと跳ねているのを見て雄介は憂鬱になった。





「そんなこといわれても……」





 壁際では、女生徒達が黄色い声を上げながら応援している。



その中に、ウザい顔つきでニヤニヤしている徹がいた。





「頑張れよ雄介ーーーーー!」





「いや、だから俺は魔法が―――――!」





「来ないならこっちからいきますよぉ!」





 雄介の言葉が言い終わる間も無く、


先生がおもむろに自分の胸の前で両手の指を伸ばして人差し指と親指の先を合わせて三角形を作ると、


その三角形の穴の中心に緑色の光と共に周辺の空気が集まり始めた。




 その空気の塊は、


徐々に一つの大きな球状となって先生の身長とさして変わらないほどまでに巨大化し、


まるで竜巻のように高速回転し始めた―――かと思うと、


それは一気に縮小し、三角形の中心に直径1センチ程の小さな緑色の塊となってとどまった。





「ちゃんと受けないと……死にますよ?」





「……はい?」





 雄介が疑問の声を上げると同時に、


先生は今まで付けていた人差し指と親指を勢いよく左右に離すように両腕を開いた。



途端、空中にとどまっていた小さな塊がドォッという轟音と共に緑色の光の軌跡を残し、


超高速で回転しながら周りの空気を巻き込み、


巨大な風のミサイルと化して一直線に雄介めがけて飛翔する。





「うおおおおおおおおおおお!?」





 間一髪、緊急回避でそれをかわす。



攻撃自体は雄介の横を過ぎ去った後に自己消滅。



攻撃の通った後は床がまるで何百本もの刃物で斬り付けたような傷跡が残っていた。





「まじかよ……天〇飯か!気〇砲みたいな反則技使わないでくださいよ先生!」





「誰が天〇飯ですか!



ちゃんと風系統の『超過圧縮オーバーフロー』という名前があるんですぅー!



あんなツルツルと一緒にしないでください!



ていうか避けちゃダメですよぉー、ちゃんと受けてくださーい!」





「無茶言わないでください!」





「自分の通常魔法使って相殺すればいいじゃないですかー。



術式程度の威力はなくてもちゃんと相殺出来るようにこれでも手加減してるのですよー?」





「絶対嘘だ!」





「ちゃんと受けないとあなたの属性と術式の適正がわからないじゃないですかー。



ほらいきますよぉー、それそれー!」





 何を血迷ったか今度は連射してきやがった。



先ほどの勢いも威力も、先ほど床を切り付けた刃物のような鋭利さも無いものの、


それでも銃の弾丸ほどの威力位はあるんじゃなかろうか。


床にそれが当たるたびにビシッ!という乾いた音を立てて小さな穴を穿った。




 連射する内の一つの弾丸が眼前に肉薄する。



 雄介は思わず左手でそれを受けようと構える。





「…駄目だ……」





 だが、雄介は突然そうつぶやいて手を引っ込め、


なんとか自力でわずかに頭を逸らした雄介の頬を弾丸がかすった。



先生はそんなことも気にせずになおも連射を続けている。




 だいたい、攻撃を受けるだけで属性と術式の適正の判断はつくのだろうか。



もしかしたらあやつは何も考えていないのではあるまいか。



 そう思い立ち、「それそれー」と言いながら楽しそうに連射し続ける先生を、


一応逃げ惑いながらも雄介は一瞥する。





――――あり得る。





 と、心の中でつぶやく刹那、間一髪、『超過圧縮』の弾丸が再び頬を掠めた。





「……っぶな!」





 バランスを崩しかける所をなんとか軸足でふんばって立て直す。





「くっそお……!どこが『とっても簡単な検査』だよ!ほとんど一方的な暴力じゃねぇかぁ!」





 何もせずにただ逃げ回る雄介の姿に、女生徒はブーイングを上げ始めた。





「幻滅ぅ―」





「ちゃんとやりなさいよぉー」





「あんぐらいちゃっちゃと終わらせなさいよー」





「相殺するだけでしょうが」





 徐々に女生徒のブーイングは大きくなり、


どうしていいかわからない徹もその場の空気に流されて文句を付け始める始末だった。





「ぐ……こ、の……。ああ、もう!やってやんよ!やればいいんだろやれば!」





 右足で上履きのゴムの擦れる音を立てながら急制動をかけ、


真っ向から先生と対峙すると、周りから歓声が沸き上がる。





「お?やる気になりました?」





「どぉーんと来い!」





 雄介が腰を落として受け身の体勢になると、先生はどこか怪しげな笑みを作った。





「いいんですね?それじゃあ遠慮なくー…………」





 先生が再び両手を前に突き出すと同時に巨大な球が形作られ、やがてそれも初撃と同様に超圧縮が開始される。





「雄介君」





 圧縮中、先生がおもむろに名前を呼んだ。





「……なんです?」





「なんで『超過圧縮』がこんなに速いか知ってる?」





 なぜこんな時にとも思うが、


これも教育的な何かの一環だと信じ、一応しばし考えて答える。





「……いえ」





 その返答に先生はにこやかに笑う。



今この状況ではそれは恐怖でしかなかった。





「簡単なことよ。



高々度のレベルで圧縮された空気は、


その圧力から開放されると一気に外に放出される。



なら、超過圧縮で作った球体に風の膜を張って小さな穴を空けてやれば、


まるで風船みたいに、


ね?簡単でしょ?」





「……はい、今までで一番わかりやすい説明だったと思いますよ先生」





 額に冷や汗が流れる。





「あらうれしぃ」





「だけど一ついいですか?」





「なぁに?」





「『風の膜を張って小さな穴を空けてやる』っていうのはわかりました。



だけどそれだと先生もただじゃすまないんじゃないんですか?」





 物事の全てには必ず「作用」と「反作用」というものがある。



物体を前に押し出すのに使った力学的エネルギーは、必ず同等の力で自分に帰ってくるものだ。



もし超圧縮したものを風船の要領で前方に飛ばした場合、


そのとてつもない威力のジェット噴出による推進力、


おそらく人一人簡単に吹っ飛ばせるであろう力を、


反作用の原理で先生は真正面から初撃を受けて見せた。




 だが、彼女自身は吹っ飛ぶどころか一歩たりとも動いていない。




 そこまで考えたところで先生は「おー」と感嘆の声を上げた。





「よく気づきましたぁー。



お見事です。



でもこれはいたって簡単なことですよ?」





「というと?」





「作用・反作用の原理で私に力学的エネルギーが帰ってくるなら、


それをまた作用・反作用の原理を使って打ち消せばいいんですよ」





「……どういうことです?」





「ほらー、わかりませんか?私が『超過圧縮』を打ち出すときに私は何をしてましたー?」





 雄介は、先生が『超過圧縮』を打ち出す際にする一連のモーションを脳内でスロー再生させた。



そして一つの答えにたどり着く。





「………………あ、もしかしてあの両腕を広げるような動きは、


『超過圧縮』を前に飛ばすものなんじゃなくて、


同じぐらいの魔力を球体の噴出口にぶつけて身を守ってた?」





 その答えに先生はぴんぽんぴんぽーんと可愛らしい声を上げると、


いつの間にか圧縮が完了した『超過圧縮』の球体を雄介に向けて構えた。






「それじゃ、おしゃべりはこの辺にして、いきますよぉー?


威力は一番弱くしてあるから安心してくださいね」







「……どうも」





 雄介がそう答えると同時に、


先生は両腕を命一杯広げ、『超過圧縮』の弾丸を打ち出した。




 球体自体は確かに先ほどまでの勢いも脅威も感じられない。



万が一体に当たっても打撲程度ですむだろう。



 もはやこれが適性検査であることも忘れ、


雄介は両腕を前に突き出す形で待ち構え、目を閉じて集中した。



周りの生徒がどよめく。




 弾丸が目前に迫った所で雄介は目をカッと見開いた。





「ハァッ!」





 威勢よく叫び、手の平に力を込める。



手の平にうっすらと光が生まれ、それは徐々に大きくなる。



それを見た生徒たちは「おおー」と驚きの声を上げた。




 弾丸が光に肉薄する。



激しく接触し、お互いに消滅するであろうと、


この場の誰もがそう思ったであろうその瞬間、


光が最大限大きくなったところで、


それはプスンと情けない音を立ててわずかな煙とともに消滅した。





「え?」





 困惑の声を上げたのは雄介ではなく先生の方だった。





「……ムリか……」





 雄介がそうつぶやくのと同時に、


勢いの全く衰えない『超過圧縮』の弾丸は、雄介の両手の脇をすり抜け、


額にパカーン!と軽快な音を立てて直撃した。



その拍子に、雄介は意識を朦朧とさせて後ろに倒れこむ。





「きゃあああああああ!!雄介君!?」





 先生が甲高い叫び声を上げる。周りの生徒もどよめいた。





「雄介!」





 徹が青ざめた顔をしながら駆け寄ってくるのを視界で捕らえながら、雄介の意識は徐々に暗転していった。






 ◆ ◆ ◆ ◆






 目が覚めて、初めに目に入ったのは真っ白な天井だった。



数回瞬きをして上体をゆっくりと起こす。



視界がぼやけて辺りがよく見えない。





「……どこだ?」





 まだ意識のはっきりしない頭でどうにか思考を巡らすが、


朦朧とした意識の中ではそれも叶わない。





「め、目が覚めましたか?」





 ふと、左側から、朦朧とした意識の中では男か女かわからない声がした。





「だ、大丈夫ですよ。



ここは、保健室だから」





「……お前が、運んでくれたのか?」





 未だぼやける視界で相手の顔はよくわからないが、


何とかその姿を捉えることは出来た。





「わ、私じゃないけど、


江室君が気絶した後、クラスで委員の振り分けがあって、


私が保険委員になったから、


江室君の様子を見てきてくれって先生が……」





「そっか……ありがとな」





 感謝の意を込めてそいつの肩に手を置こうと手を伸ばしたが距離感がつかめず、


思いのほか離れた場所にそいつがいたために手が空振ってバランスを崩しかけた。





「うおっ!」





 体勢を立て直そうと、急いで伸ばした左手で別の何かにしがみつく。





「ふぅ……あっぶな…………ん?」





 ふと、雄介が左手で掴んだそれは、とてもやわらかいものだった。



まるで丸っこいスポンジのような。





「なんだこれ?」





 数回手を動かすと、それはふよふよと形を変えた。





「き……」





 途端、そいつの口から短い声が漏れた。





「きいいいいぃぃぃやああああああああ!!!」





「うおお!?」





 突然の叫びに驚いて掴んだ手を離した途端、


バチーン!と左頬に強烈な痛みを感じた。



その衝撃で今までぼやけていた視界と意識がハッキリする。





「あ……」





 クリアになった視界で雄介が見たものは、


大粒の涙を溜めた茶色がかったショートヘアーの背の低い女の子が、


左腕で胸を隠すように押さえ、


右腕は手の平が開かれ、


それが左肩の方へ位置している状態で立っていた。





「も、もしかして……今のやわらかい感触は……」





 左頬を押さえた雄介のその言葉に、


彼女は溜めていた涙をぼろぼろと流す。





「不純です!不潔です!最低です!最悪です!」





 彼女は早口でそう言い放つと、


大声で泣きながら走り去っていった。





「ちょ、ちょっと待ってくれ!誤解だ!誤解なんだ!」





 雄介は慌てて追いかけようとするも、


誤ってベッドからずり落ちて頭から床に激突する。





「誤解なんだぁ~……」





 だがその叫びは彼女には届くはずもなかった。







 ◆ ◆ ◆ ◆







「ねぇねぇ聞いた?」





「聞いた聞いた。やあねえ。わざわざ見舞いに来てくれた女の子の胸を鷲づかみにするなんて」





「サイッテー」





「サイアクー」





「キモーイ」





「これだからダウナーは」





 ――――わかる、俺にはわかるぞ。



女子達が今何を話して、俺のことを何て言っているのか手にとるようにわかる。




 ゆえにとてつもなくいたたまれない。




 女子達の軽蔑の念のこもった視線を一身に浴びて、


あの後教室に戻った雄介は、彼女にどう謝ろうか考えていた。



しかし、彼女自身は女子達に守られていてその隙を見せない。




 チラッと彼女の方を見る。



一瞬彼女と目が合ったが、彼女はプイッとすぐに視線を逸らした。





「お前何やらかしたワケ?」





 徹が不思議そうに尋ねる。





「聞いてくれるな」





 「ああ~……」とうめきながら頭を抱える雄介を見て徹は首をかしげた。



 その時、学校のアナウンスを告げる軽快なチャイムが鳴った。





「一年C組の江室 雄介。



今すぐ生徒会室に来い。



繰り返す、


一年C組の江室 雄介。



今すぐ生徒会室に来い」





 アナウンスは生徒会長である天宮 紫によるものだった。



突然の会長からのアナウンスで、


女子達の疑惑の念が一層強まる。





「何?あいつまた何かしでかしたワケ?」





「これだからダウナーは」





「いやー!同じ空気を吸いたくなあい!」





 いつの間にかあだ名が『ダウナー』という名誉ある称号になってしまった雄介は、


なんかもう色々とあきらめて立ち上がる。



途端に女子全員の空気がピリッと張り詰めた。





「雄介……」





 徹がおもむろに腕を引っ張る。





「徹?」





「…………グッドラック!」





 親指を立ててウィンクした徹をひとまず一殴りで気絶させておいて、


雄介はため息混じりにブルーなオーラを発しながらとぼとぼと教室を出た。



その背中を、女子に囲まれた彼女が不安そうに見つめていたことを雄介は知らない。

これなんてテンプレートベタ展開。



と言う間も無く第3段落投稿です。



多分、作用反作用の使い方について矛盾が起こってるような気がする。



作品の感想含め、そこんところもコメントいただけたら嬉しいです。



次回、第一章最終段落。



やっと、


この作品でのメインヒロインがまともに登場いたします。



ちなみに言っときますが、初めは『ウザイ』です。


S臭がすごいです。



それもこれも、次を読んでいただくとわかります。

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