第三章 『忌み深き追憶』 1-1
今回から『捕食者編』突入です!
では、どうぞ!
――――あの時は、何も知らない自分がとても輝いて見えた。
何者にも負けることなど無い、
無敵に近い力を生まれながらにして持つ雄介は、
文字通り負け知らずだった。
親に人前では力は使うなと度々言われていたのだが、
雄介はこっそり人目の届かないところで、
魔法が使える数少ない女友達と魔法の掛け合いをして遊んでいた。
もちろん雄介は受ける側だ。
魔法などこの頃から一切使えない。
だが、雄介はそんなの全く気にしていなかった。
しかしそうして遊んでいくうち、
ある日雄介は一人の少女と出会った。
ブロンドの長い髪をした大人しげな少女は、
いかにもお嬢様とでも言うような高価そうなピンクのワンピースを着ていた。
そして、雄介達の輪に入りたそうにジッとこちらを見つめているのだった。
一瞬、雄介達は魔法が使えない一般人の子供に魔法を見られてしまったかも知れないと危惧したが、
少女は驚いた様子を見せなかった。
その少女も魔術師の家系だったのだ。
雄介達は一緒に遊ぼうと誘った。
しかし少女は首を振り、
寂しげに言い放った。
「駄目よ。
私の家はとても高貴な魔術師家系なの。
もし私と一緒に遊んでいたら、
私だけでなくあなた達まで酷い目にあってしまうわ」
年の割には大人びた少女の言葉に、
周りの友達は大人しく身を引いた。
だが、ただ一人だけ、少女に手を差し伸べる子がいた。
雄介だ。
雄介は少女に手を差し伸べた。
「一緒に遊ぼうよ!」
無垢な雄介の裏表の無い言葉に、
少女は一瞬戸惑うも、
不安そうに辺りを見回しながらそろそろと雄介の手を掴んだ。
そして、雄介が少女に何か言いかけて口を開く――――。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「――――!!」
雄介は、けたたましい目覚ましの音で目を覚ました。
カーテンの隙間からわずかに朝日の光が差し込んでいる。
「……夢、か」
何で今更あんな夢を見たのだろうかと朝っぱらから憂鬱になる。
「目覚め悪ィな……」
出来ればもう二度とあの夢は見たくなかったと、
雄介は心のなかでぼやいた。
雄介は昔の自分が嫌いだった。
何も知らないまま強者を気取っていたあの時の自分に無性に腹が立つ。
「やめやめ、朝っぱらからこんな」
雄介はそんな雑念を捨て、
ベッドから降りる。
雄介は現在一人暮らしだ。
学校が実家より県をまたぐほど遠くにある為に、
そうせざるを得なかった。
学校指定である、
いわゆる寮施設である部屋の大きさはおおよそ1LDK。
一人暮らし専用なのになぜか二部屋ある比較的物の少ない部屋だ。
と言っても、ただ単に雄介がめったに物を買わないだけなのだが。
部屋には、
備え付けの巨大な液晶テレビにふかふかのベッド、
キッチンにトイレに風呂に冷蔵庫に、
終いにはクーラーまで付いてるから、
テーブルとクッション以外は別に何か買う必要も無かったわけだが、
それだとちょっと物寂しい気がしなくもない。
「今度カーペットでも買うかな……」
未だツルツルのフローリングのままの床をすり足で歩きながら、
雄介は身支度に入った。
朝食はいつもコンビニから買いだめしてきた弁当を食べる。
別に料理が出来ないわけではないが正直面倒くさい。
ボサボサになった髪を適当にドライヤーで整えながら、
同時進行で器用に歯を磨く。
制服に着替え、
バッグを手に持って部屋を出ようとしたその瞬間、
インターフォンが鳴り響いた。
「はいはーい」
いつもの朝着の親からの宅配便か何かかと思った雄介は、
インターフォンに備え付けられているセキュリティカメラからの映像を見ることなく鍵を開けた。
手には準備よくハンコを準備している。
「はぁー…………い」
何のためらいも無くドアを開け放った雄介は、
その瞬間、氷付けにされたように固まった。
第三章1-1段落、いかがでしたでしょうか?
さて、今回は江室の幼い頃の出来事の一部分を描きました。
一体小さい頃に江室の身に何があったのでしょうか?
それも後々書いていく予定です。
それはそうと、果たして江室はドアを開けた先に何を見たのでしょうか?
次回、
江室にある事件の話が舞い込みます。
新たな展開を迎えたコード・オブ・レヴァリエ。
今後もこの小説を読んで楽しんでいただけると嬉しいです
(●´∀`●)
では、お楽しみに!