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コード・オブ・レヴァリエ  作者: 伊瀬 未兎
第二章 『春の桜魔高祭』
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第二章 『春の桜魔高祭』 4-3(トーナメント後編)

ついにトーナメント後編。




今回で生徒会 VS 優勝チームとの決着がつく(かもしれません)。




色々なことが動き出す4-3段落、



どうぞ!

「……もう一人の敵が、いない」





 雄介が後ろから覗き込むように江向の顔を覗き込むと、


江向の右目には小さな緑の陣が浮かんでゆっくりと回転していた。



おそらく今は『遠視』で敵の動向を探っているのだろう。



しかし、江向の表情は疑問に固められていた。





「……保険をかけておいてよかったわ」





 途端、江向の前に立つ選手がつぶやく。



その表情はどこか余裕な雰囲気を醸し出していた。





「……保険?」





「『幻視術式』適正であるあなたは気づいてたかしら?



私達のチームの内、


一人だけ『無武装』なのを」





 その言葉に、江向は一瞬悩んだように目を細める。



だが、すぐに何かに気づいたように息を飲むと江向は目を細め、


直後、その顔は驚愕の表情に変貌した。





「……雄介!」





 江向が振り返りざまに珍しく大声を発したその刹那、


雄介と江向の間の地面が盛り上がった。





「な、なんだ!?」





 困惑する雄介はよろめき、


江向は慌てたように雄介の元へ走り寄ろうとする。





「おぉっとぉ!行かせはしないよ!」





 だが、短髪選手の斬撃が江向の眼前に肉薄し、


江向は『絢爛風靡』を展開せざるを得なくなった。





「江向!」





 ギリギリで『絢爛風靡』を展開した江向に向かって雄介が叫ぶ。





「あんたの相手は――――」





 刹那、


盛り上がった地面の下から声が響いた。





「――――このアタシだああああああああ!!」





 突如の叫び声とともに、


盛り上がった地面から一人の女生徒が飛び出してきた。



江向の言う、『もう一人の敵』だ。



その手には何も持ってはいなかったが、


山吹色の光がその手を覆っている。





「まさか、地面を掘って来たってのか!?」





「イェス!


アタシの属性は『地』!



自らの手に属性付与させてガッシガッシ掘り進んできたってぇワケさ!」





「そんな地味な!」





「地味とはなんだ!



おかげでここまで来れたんだ。



思わぬアクシデントがあったみたいだけど、


どっちにしろ後はアンタだけだ一年坊主!」





 そう叫ぶと、


ボーイッシュな相手選手は高々とジャンプし、


両手を空に掲げた。




その瞬間、


雄介達の立つ周辺の地面が次々にえぐられ、


相手選手の掲げた両手の先に集まっていく。



そして、それはものすごい勢いで巨大化し、


一気に直径2メートルほどの岩塊となった。





「逃げろ江室!」





「雄介君!」





 事の重大さに気づいた紫と亜美が叫ぶ。



しかし、雄介はそこから一歩も動かず右手の平を前に突き出した。



かといって、武器と呼べるものはもう無い。





――――ここで逃げちゃ、今までの特訓の意味がないじゃないか!





 雄介は心の中でそう叫び、


突き出した手の平に力を込めた。



すぐに右手に光が生まれ、


それは徐々に大きくなり、


やがてバスケットボール大の大きさになった。



それを見た観客が威勢のいい歓声を上げる。





「三年のアタシに真っ向から立ち向かおうってのかい。



おもしろいねぇ!」





「……来い!」





 雄介の言葉を合図に、


相手選手は掲げた両手を振りかぶった。





「『岩塊爆撃メテオインパクト』おおおおおおお!!」





「おおおおおおおおおお!!」





 相手選手が岩塊を放り投げるのと、


雄介の右手の光が煙とともに消滅するのは同時だった。





「勝った!」





 魔法の行使失敗だと思った相手選手は、


今度こそ勝利を確信した表情を見せた。





「私達の負けでいい江室、


逃げろ!


本当に死ぬぞ!」





「雄介君!」





「……雄介!」





 生徒会の皆の今までに無い焦りの声色が通信機を通して雄介の耳に届く。





 しかし、


雄介にはどうしても避けてはならない理由があった。





「雄介君!」





 ストーンの後ろにずっと隠れている美夏の存在だった。




 逃げろと言った所で、


目前に迫った岩塊を前にへなへなと腰を抜かして座り込んでしまった美夏にそのような行動は取れない。




依然、


逃げ場の無い場所に雄介は立たされた。




 雄介の耳に先輩達の叫び声が絶えず響く。





「『使う』しか、ないのか……」





 ギリッと歯を食いしばる。



そうしている内にも岩塊はその距離を急速に縮める。





「くっっっっっそおおおおおおおおおお!!!」





 喉が潰れそうなほどの声で叫び、


雄介は握り締めた左拳を岩塊に向かって突き出した。



 そしてその拳が岩塊に触れたその瞬間、


耳を劈くような爆音とともに、


とてつもない爆風があたり一面を襲う。




 地面は爆音で波打ち、


空気はビリビリと震える。



観客にいたっては、


コート脇に張られた巨大な結界によって爆風は免れた。



が、全員とてつもない爆音に耳を塞ぐ。




 亜美と江向は、


とっさの判断で自らの『結界術式』でその身を守った。



しかし、何も出来ない美夏は無造作に吹き飛ばされ、


背後の壁に頭を強くぶつけて気絶した。




 一番遠くにいた紫でさえも、


刀を地面に深く突き立てて姿勢を低くしなければ容易く吹き飛ばされそうな状態だった。




 『岩塊爆撃』を放った当の本人は、


空中でそのまま吹き飛ばされ、


自陣の地面近くまで来たところで自らの体を硬化して身を守った。




 亜美と競り合っていた選手は、


いきなりのことに対処しきれずに吹っ飛ばされ、


地面に強く叩きつけられて気絶した。



紫と対峙していた選手も同様。




 唯一、


ストーンを守る相手選手だけは一番離れたところにいたために、


とてつもなく強い風を感じるだけで吹き飛ばされることもなく、


何事も無かった。




 そして雄介は、


爆風の勢いですぐ真後ろにあった自陣のストーンに背中を強くぶつけ、


ギリギリ気を失うまでには至らなかったが、


しばらく動くことが出来そうにもなかった。





 その後の数十秒間、


静寂の時間が過ぎた。



誰もこの状況を把握しきれていないのだ。




 先ほどまで空中に存在していた巨大な岩塊は粉々に吹き飛んでいる。




それでも、


両チームのストーンは依然として何事も無かったかのようにそこに浮いていた。




 爆風によって舞い上がった土煙がわずかに晴れ、


コート全体が露になる。



その瞬間、


それを見た観客は一種の恐怖心が背中に伝わるのを感じた。





 芝生の敷いてあったコートは、


岩塊のあった所を中心に広がるようにめくり上がり、


茶色の地面が露になっている。



所々ごつごつとした岩が転がっているのは、


先ほどの岩塊の破片だろうと思われる。



幸い、


それが直撃した選手はいなかったようだ。




 しかし、端から見てこの惨状は、


まるで激しい戦争の後のようだった。




 所々に出来た岩塊による小さなクレーターは、


まるで砲撃の痕を思わせ、


未だ完全に晴れきらない土煙は、


その場の空気を淀ませるかのようだった。






 ◆◇◆◇◆◇◆






「一体……何が起きたんだ……」





 爆音で痛む耳を押さえながら、


紫はゆっくりと立ち上がり、


つぶったままの目をおそるおそる開く。





「これは……一体どういうことだ……」





 目を見開いた紫の眼前に広がるのは、


あちらこちらに倒れた選手達と、


それを介抱する救急隊員の姿だった。





『えー……ご来場の皆様……』





 困惑を隠しきれないような震える声色で、


司会者である校長は口を開いた。





『突然の異常事態発生により、


今年のトーナメントは中止とさせていただきます。



皆様、どうかご理解とご協力の方をお願いいたします。



では、私もこれで……――――』





 そこでアナウンスは途切れた。



 しばらく呆然としていた紫だったが、


遠くで雄介と美夏が担架で運ばれているのを見つけ、


剣をほっぽりだして二人の元へと駆けた。





「上乃!江室!大丈夫か!?」





 美夏は気絶していたために無反応であったが、


意識をなんとか保っていた雄介は、


小さな声で返事をした。





「一体何があった!?



何がどうなったらこんなことになるんだ!



爆発が起こった場所にはお前が立っていたはずだ、


教えろ!!」





 担架を掴み、


先に行かせまいとしながら、


紫は雄介に詰め寄った。





「すいません……俺のせいで……」





「……っ!やっぱりこれはお前の仕業なのか、


一体何をした!



お前は魔法が一切使えないはずだ!」





 紫の質問に、


雄介は右腕で目を覆い、


唇をかみ締めた。





「……俺は、


呪われてるんですよ……先輩」





「呪われている……だと?」





 雄介の返答に対して紫がさらに問い詰めようとすると、


救急隊員からストップがかかり、


雄介はそのままどこかへと運ばれていった。





「一体どういうことなのだ……江室」





 心配そうにつぶやく紫の横には、


亜美と江向が、


運ばれていく雄介と美夏を見つめながら困惑した表情で立っていた。

第二章4-3段落、いかがでしたでしょうか?




今回も色んな意味で勢いのある展開になっていたと思います。




さて、今回はすさまじいことになりました。




江室君は一体何をしたのでしょうか。




そして呪われているという江室の言葉の真意とは?





だんだんと江室の目的が見えてきたような気がします。




もしかしたら説明文が長すぎて読みづらかったかもしれませんが、




できたら感想をいただけると嬉しいです。


そして、今後もこの小説を読んで楽しんでいただけると嬉しいです

(●´∀`●)




それでは次回、



トーナメント後の江室と美夏の会話を中心に(て言うかそれだけ)執筆していきます。




江室が桜魔高校に入学したその本当の理由が明かされます。







第5段落と言うことになりますが、


とても短いのでご安心を。






では、次回をお楽しみに!

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