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第七話 傭兵団のメンバー

「ダン、お前に傭兵団うちのメンバーを紹介してやる」

 ギィルはダンに告げた。ダンは無言で頷く。

「まず俺、ギィル・カーツェン。こう見えて二八歳独身、団長だ」

 それを聞いてダンはピクリと眉を上げたが、声は上げなかった。ギィルは気付かなかった振りで、続ける。

「この大男は副隊長でガルン。こんな面相だが、普段は温厚そうな良い男だ。が、戦闘中はバーサーク化して、迂闊に近寄ると敵味方関係なく殺されかねないから注意しろ。獲物は戦斧だ。あと酒を飲んでる時に『ハゲ』って言うのも禁止な。予告なしに叩き斬られる事がある」

 ダンは顔をしかめた。ギィルは弓を丁寧に拭いている黒髪の男に近寄った。男はギィルに気付くと無言で会釈するように頷くが、そのまま弓の手入れを続行する。

「この陰気で弓矢背負った男がサウェード。こいつの弓はほぼ百発百中だ。乱戦になるとたまに掠めそうになる事もあるが、避けようとして動いたりしなければ当たらないから問題ない。……やつに恨みを買えば、その限りではないが。敵には容赦しないが、味方にすれば頼りになる男だ」

 ダンは何も言わないが、言いたいこと、考えていることは想像がつく。自分でもなんでこんな部下ばかりなのか頭が痛い。サウェードの向かい側で、片手剣を矯めつ眇めつしている男を指し示す。

「んで、この軽薄そうな赤毛の長髪が、片手剣使いのラウル。酒を飲ませたり賭け事したりキレさせたりしなけりゃ、まぁだいたいイイやつだ。戦闘中に味方を攻撃することも今のとこないしな」

「そりゃひどいですぜ、団長」

 ケラケラ笑いながら、ラウルが言う。暫く歩き、別の男に近付く。

「この無愛想な狐目がガーウェイ。鎖鎌を使う。無口なやつだが、戦闘中以外は良いやつだ。死にたくなければ、戦闘中は絶対近づくな」

 こんな紹介になってしまうのが、本当に残念である。それさえなければ、間違いなく良いやつだと言ってやれるのに。三人で胡座をかいて談笑している、二十歳前後くらいの男達のもとへ向かう。

「この大剣使いがオスカー。刺突剣使いがロベルト、曲刀使いがヴァルター。こいつら外見だけは優男で女にモテそうだが、人を斬るのが大好きな連中で、しょっちゅう悪巧みしたりつるんだりしてる問題児だから、普段からなるべく近付かない方が賢明だ。興味を引けば、面白半分に切り刻みかねないからな」

 そんな風に紹介されても、三人共気にした風もなくニヤニヤ笑っている。ギィルの説明に、さすがにダンも真っ青になった。

「まぁ、あれだ。この三人を力でねじ伏せられるようになれば、うちでは一人前だ」

 ギィルが言うと、ダンは硬い表情で黙って頷いた。そして今度は、薪を持ってばたばた走っている少年の方へ向かう。

「最年少のヘクター、双剣使いだ。お前と同じくらいの年だし、先輩として面倒見てやれ」

「え~、マジすか?」

 少年は面倒くさそうな顔をしたが、ギィルが人の悪い笑みを浮かべて言う。

「下っ端扱いは嫌だっつってただろ? 更に下っ端扱い続行希望なら、そのままでもいいが……」

「やります! ぜひやらせて下さい、団長!!」

 途端に豹変し、土下座せんばかりの勢いで言う少年に、ギィルはしてやったりと、にやりと笑う。 

「……というわけだ。よろしく頼む」

「じゃ、早速食事の支度の手伝いを……」

 そう言いかける少年に、ギィルはひらひらと手を振る。

「まだ紹介が終わってないから、後でな」

「ちょっ……待っ……!」

 何か言いかける少年を後に、ギィルは用は済んだとばかりにさっさと歩き出す。ダンは会釈して、慌ててギィルを追いかけた。川で裸になって水浴びをしている十代後半くらいに見える男達がいた。

「槍使いのイェルン、斧槍使いのクラウス。クラウスは騎馬戦闘が得意で、頭が切れる。イェルンはそう悪いやつじゃないが、猪突猛進気味なところがあるかもな。それを除けば悪くない。

 アシュレイ、ルーカス、アルフ、エド、グレン、ヒュー、ヴィンス、ジョー。こいつらは出身地はお前と同じセイランス王国だ。アシュレイが王都のスラム出身、エドとルーカスが城塞都市ドルンなのを除けば、あとは似たり寄ったりの辺境だ。ま、そこそこ話も合うだろう。

 全員訓練は十年以上だが、実戦は五年未満の、下働きはせずに済むって程度の下っ端だ。暫く慣れるまでヘクターと雑務や下働きをして貰うが、お前が戦闘でそこそこ使えるようになれば、こいつらと一緒に行動する事が多くなるだろう」

 ギィルの言葉に、ダンは頷く。

「気をつけなきゃならん事があるとすれば、全員女にモテない野郎共ばかりだから、エレナちゃん、彼女は絶対に近寄らせない事と、お前は面相が良いから、妬まれたり僻まれたりしかねないって事かね。まぁいきなり殺されるような事はないだろうが、殴られるぐらいの事や多少の嫌がらせはあるかもしれん。問題があれば、俺かガルンに言え。上手く立ち回れば大丈夫だろう、たぶん」

 たぶんとしか言いようがないのが、情けないが。まぁ、問題児三人衆に比べたらマシだろう。比較対象が悪すぎるという気もするが。

 更に歩くと、瓦礫に腰掛けて楽しそうに談笑する三人の女達が見えてくる。ギィルは彼女達に近付くことなく立ち止まると、顎でしゃくり、

「短剣使いで弓も使える斥候のニコラ、炎魔使いのヴェラ、治癒魔法と風魔法が使えるアルマ。こいつらは女だが、怒らせない方が良い。女心とデリカシーってやつに自信がないなら近寄らない方が良いかもしれん。何が引き金になるかわからんからな」

 ギィルの言葉に、ダンは不思議そうな顔になる。くつろいだ様子の女達は、確かに表面だけは美しく、無害そうに見える。だが、それだけに危険なのだ。

「アルマ、あの黒髪長髪のしとやかそうだが、下品な下ネタなんかが大嫌いで、酒場で絡んできた男のイチモツを切断した前科がある。絡んだって言っても、どこの酒場でも酔っ払い親父なら言いそうな事だ。あいつはまず、冗談がきかないから注意しろ。予告も警告もなしにやる。

 ニコラ。あいつは何を言ってもやってもおとなしそうな能面顔で、怒らせても変化は見えない。が、夜番とか見張りとか何かで、暗くなってから単独行動するとサクッとやられる。あと籠手に遅効性だが致死率の高い毒を仕込まれて死んだやつもいたな。

 ヴェラは問答無用で焼き殺す。見えないところでやらかすタイプじゃないから、それだけが救いだな。まぁ、大抵一撃で死ぬか、数日で死ぬ火傷を負うから危険だが」

 ギィルの言葉に、ダンは真っ青になった。

「時折増減するが、今のところ隊にいるのは、これで全員だ。幾人か死んだから、後日本国から補充があるかもしれん。……ああ、昨日お前が会ったお方が俺たち『黒の傭兵団』の庇護者にして出資者、ボスのアーネスト・セルラウン殿だ。イルウォーク共和国を代表する武器商人としても有名だ。あの方は絶対に怒らせるな。死ぬより酷い目に遭う事になる。

 ここの後始末を終えたら、一度共和国へ戻る予定だ。エレナちゃんはその時、セルラウン殿の邸宅に住むお嬢様のところへ連れて行く。お嬢様の護衛もいるし、警備は万全、使用人も大勢いるから、安全だし生活とかに不安になる事はまずないだろう。

 お嬢様の話し相手役をちょうど探していたところだから、彼女にやって貰うとしよう。お嬢様は世間知らずで好奇心旺盛で、少々行動力がありすぎる点を除けば、屈託ない可愛らしいお嬢さんだ。お互い良い友人になってくれるだろうし、きっとためになる」

「…………」

「まさか、これから戦場を駆け回るのに、彼女を連れ回す気はないだろう?」

 ギィルが念を押すように、ダンを見返し尋ねると、不承不承ながらダンは頷く。

「邸宅にいる限りは、問題ない。安心すると良い」

 ギィルは安心させようと笑顔を見せたが、効果はなかったようで、ダンの顔はこわばったままだった。

というわけでおおまかだけど人員紹介です。

後日、登場人物紹介ページ追加します。いくらなんでも多すぎるので。

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