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翌梨リサは欲深い  作者: 夏蹴礼
第三章 闘球祭(とうきゅうさい)
29/54

●延長戦突入

 二分間の小休憩。選手たちは水分補給を済まし、しばし体力の回復に努める。

「繭っちがさ、昨日あたしに意見してきたんだ」

「ほう、珍しいな」


「そうなんだ。今回の球技大会で優勝をしたら、もっと自分を認めて欲しいとまで言ってきたんだ。眼光は鋭く、決意と覚悟を感じたよ。あんな繭っちは初めてだ」

「へ~、すごいな」

「ちゃんリサと大和が裏で糸を引いているんだろ?」


「さぁ、どうだろうな?」

「別にどっちでもいいさ。繭っちは今回のことで、大きく化けるかもしれない。覚醒の予兆だよ。果たして、繭の中からは綺麗な蝶が出るか、害となる蛾が出てくるか楽しみだね」


「大成!」

「おう、繭。すごいじゃないか」

 噂をすれば影がある。貴重な休憩時間を削って、繭は俺たちの所へ来た。


「もし……もしボクが勝ったら、生徒会へ戻ってきて!」

「はぁ? いきなりどうした?」

「約束だからね!」


「いやいや……ふぐっ!」

 いきなり腹部に痛みが襲う。司のパンチがボディに突き刺さる。

「黙って聞き入れろ!」


「約束だからね!」

 俺の返事を聞かないまま、繭は戻って行った。

 すぐに試合は再開された。


 そして開始直後。均衡を破るのは、やはり繭だった。

 リサではなく、もう一人の一年選手を絞った。

 彼女の体力は既に限界であった。


 今度はリサでも間に合わない。

 繭の剛速球を前に、なすすべもなくアウトになる。

 静寂を破る大きなホイッスルが鳴った。


「ご、ごめん」

「大丈夫。後は私に任せて!」

 とは言うものの、勝てる希望が出てきた時間帯にこのアウトは大きい。

 しかも、ボールは二年生に渡った。


 二年生の応援はヒートアップし、一年生の応援は小さくなった。

「ちゃんリサ大丈夫かな。心が折れると、あっという間に負けちゃうよ」

「翌梨なら、大丈夫だろ」

 俺の言葉通り、リサは全く動じない。


「なになに? 楽しんでいるのはわたしだけ?」

 それどころか、ふさぎ込んでいる一年の生徒たちに訴えかける。

「しけたツラしてると、勝利の女神様が二年生に行っちゃうよ!」

 落ち込んでいた一年生たちが耳を傾ける。


「取られたアウトは取り返す。残り時間わずか? 内野はわたし一人? 関係ないよ、充分でしょ! 勝ちに行くわよ!」

 一年生全員の熱が一段と帯びてきた。

「わたしについてきなさい!」

 その声を聞くや否や、一年の声援が復活した。


「フレ~! フレ~! よ・く・な・し!」

 丁度その時、チアガールの恰好をした岬が現れた。

「ご、ごめんねぇ~! サッカーの試合が長引いちゃったよぉ~」

「遅いっ!」

「その代り、精一杯応援するよぉ~!」

 岬の登場により、さらに熱が上がる。


「如月先輩、声援の力ってすごいですよね。応援されると、自分の力が何倍にも強くなった気がします」

「この状況を楽しめるなんて、翌梨はやっぱりすごいね」

 繭はボールをバンバン地面に叩きつけて、最後の会話をする。

「是非、バレー部に欲しいよ」


「さぁ、決着をつけましょう!」

「自慢の足で逃げ回らないの?」

 何たる凄まじい圧。

 見ているこちらまで伝わってくる。


「こんな楽しい勝負……逃げるわけありませんよ!」

「そうだね! 楽しかったよ。この一球で勝負を決める!」

 リサがコートの中心で腰を落とす。

「なら、そのボール! 必ずキャッチしてみせます!」


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