願いを叶える女
「いらっしゃい」
「初めまして」
幾つもの枝垂れ柳が咲く丘を下界に、男は、後方の舟を引き連れ屋形に座る死に装束の黒髪の女と空の上で相まみえた。
(良かった、半信半疑だったけどネットに載ってた通りに試したら本当に夢で会えた)
男は心の中で安堵した。
「して主は妾に何を求める?」
「妹に逢いたいのです、死んだ妹に」
「それならば――この幽鈴灯が良いだろう」
「ありがとうございます」
「渡す前に聞いておく。主は今すぐ縁を結びたいか? それとも死後に冥界より妹を捜し出す事で自身で縁を手繰り寄せるか?」
「僕は妹が死んだ事をつい最近まで知らなかった。後悔してるんです、素直に謝る事も葬式に出られなかった事も。その後悔を無くす為にも僕は喧嘩別れしたまま死んだ妹に逢わなきゃいけない、逢ってちゃんと『ゴメン』と『さようなら』を言わなきゃいけないんです。だから今すぐ逢いたいです」
「よかろう、ならば幽鈴灯を渡そう。これが冥界の入り口を開き、中を照らし、妹の居る所まで連れていくであろう」
「分かりました、ありがとうございます」
「逢えたか?」
「はい! 色々言われてしまいましたが、言いたい事は伝えられました」 「それは良かったな」
「あのお代は・・・・・・」
「それは主が死んだ後に払って貰おう、遺書に記しておくことだ『副葬品に三百円を入れておけ』と」
「分かりました」
「それではまたのぅ」
「はい!」
男はそう言い残して消えた。
「ふふ、せっかちな事じゃ。果たしてあの男が無事にあの世に来て妹と縁を結べるものかのぅ・・・・・・なにせ三百円、三途の川の渡り賃の六文銭を妾に払うのだから。願いが簡単に叶う事に対して払う代償が何なのかを考えずに答えを出す、人間とはまっこと面白きものよ」
女はニヤリと笑った。
「あのぅ~」
女が笑っている内に別の客が来た。
女は崩した表情を戻して妖しく言った。




