12月19日 金曜日
金曜日の放課後、僕たちは学校近くの図書館に立ち寄った。静かな空気の中、並んで歩くと、エミリーは本棚を見上げて目を輝かせた。
「So many books… I love it」
彼女は英語の棚を見つけると、すぐに一冊を取り出した。表紙には見慣れないタイトルが並んでいて、僕は思わず身を引いた。
「Jun, try reading」
「え、僕が?」
「Yes. Just a little」
彼女に促され、僕はページを開いて声に出した。けれど、発音はぎこちなく、舌がもつれてしまう。
「Th… the…」
途中でつまずくと、エミリーが笑顔で首を振った。
「Not bad. But… listen」
彼女は同じ文章を滑らかに読み上げた。柔らかい声が図書館の静けさに溶けていく。僕はその響きに聞き惚れてしまった。
「Try again, Jun」
「……The sun was setting…」
彼女が小さく頷いた。
「Better! You’re improving」
その一言に、胸が熱くなる。僕は恥ずかしさを隠すように本を閉じた。
「英語、難しいな」
「Japanese is hard too. But… we can learn together」
彼女の言葉に、僕は思わず笑った。図書館の静けさの中で、二人だけの声が響いているように感じた。
帰り道、エミリーがふいに言った。
「Jun, when you read… you look serious. Cute」
僕は顔が真っ赤になり、何も返せなかった。
――拙い発音でも、彼女と一緒なら少しずつ前に進める気がした。




