12月17日 水曜日
放課後、僕たちは深沢神社へ向かった。商店街から少し歩いた先にある小さな神社で、地元の人にとっては馴染みの場所だ。冬の夕方、境内は静かで、冷たい空気が張り詰めていた。
「Wow… so quiet. Beautiful」
鳥居を見上げるエミリーの横顔は真剣で、僕は少し誇らしい気持ちになった。
「まず、鳥居をくぐる前に一礼するんだ」
「Bow… like this?」
彼女がぎこちなく頭を下げる。僕も慌てて同じように礼をした。
手水舎に向かうと、彼女が首をかしげる。
「What’s this?」
「ここで手を清めるんだ。右手で柄杓を持って…こうやって」
僕は見本を見せる。エミリーは真剣に見つめ、同じように水をすくった。冷たい水が手に伝わると、彼女は小さく声を上げた。
「Cold! But… feels nice」
拝殿の前に立ち、僕は説明した。
「二礼二拍手一礼っていうんだ。まず二回お辞儀して、二回手を叩いて、最後にもう一回お辞儀」
「Okay… I’ll try」
彼女は少し緊張した面持ちで、僕の真似をした。手を合わせる姿が真剣で、僕は思わず見入ってしまった。
「Jun… did I do it right?」
「うん、完璧だよ」
そう答えると、彼女は安心したように笑った。
境内を歩きながら、エミリーは絵馬を見つけた。
「What’s this?」
「願い事を書くんだ。みんなここに夢や希望を書いて吊るすんだよ」
「So many wishes… beautiful」
彼女は一枚の絵馬をじっと見つめていた。僕はふと、彼女が何を願うのか気になったけれど、聞く勇気はなかった。
帰り道、夕暮れの空を見上げながら、彼女が言った。
「Jun, thank you. This place… very special. I feel calm」
「そうだね。僕も、なんだか落ち着く」
彼女が微笑むと、胸の奥が温かくなった。
――彼女に作法を教えるだけで、僕まで少し大人になった気がした。




