12月15日 月曜日
翌朝、制服に着替えたエミリーがリビングに現れた瞬間、僕は思わず固まった。ブレザーに身を包んだ彼女は、昨日のコート姿よりもずっと「同じ高校生」らしく見えるのに、やっぱり大人びていて、目を合わせるだけで胸がざわついた。
「Jun, how do I look?」
軽くポーズを取る彼女に、僕は慌てて答える。
「に、似合ってるよ…」
エミリーは満足そうに笑い、母に「かわいい!」と褒められてさらに嬉しそうだった。
学校までの道を二人で歩く。制服姿の外国人女子と並んで歩くなんて、人生で初めてだ。すれ違う人たちがちらちらとこちらを見ている気がして、僕はうつむいたまま歩いた。
「So many bicycles!」
「Yeah…みんな通学で使うんだ」
ぎこちない返事をすると、彼女は「Cool」と笑った。
校門をくぐると、友人たちがすぐに気づいて駆け寄ってきた。
「純、お前の家に泊まってるって、この子?」
「すげー! 外国人だ!」
僕は赤面しながら頷く。エミリーは堂々と笑顔を見せた。
「Hi, I’m Emily. Nice to meet you!」
その明るさに、みんなが一瞬で打ち解けていくのがわかった。僕はただ横で立っているだけで、誇らしいような、少し取り残されたような気持ちになった。
教室に入ると、担任が前に立って紹介した。
「今日から二週間、アメリカからの交換留学生、エミリーさんがこのクラスに加わります」
拍手が起こる中、エミリーは前に立ち、流暢な英語で自己紹介を始めた。
「My name is Emily. I’m seventeen. I love music and sports. I’m happy to be here」
クラスメイトたちが「おー!」と声を上げる。僕はその姿を見ながら、胸の奥が熱くなるのを感じた。
昼休み、友人たちが彼女を囲んで質問攻めにしていた。僕は少し離れた席で弁当を食べていたが、ふと視線が合うと、エミリーが笑顔で手を振ってきた。
「Jun, come here!」
呼ばれて近づくと、彼女が小声で言った。
「Thank you… for walking with me」
その一言に、僕は言葉を失った。頬が熱くなり、ただ「うん」と頷くしかなかった。
放課後、並んで帰る道すがら、彼女がふいに言った。
「Your school is very friendly. I like it」
「そ、そうかな…」
「Yes. And… I like walking with you」
僕は思わず足を止めた。彼女は何でもないように笑っている。僕は心臓が跳ねる音を聞きながら、ただ前を向いて歩き続けた。
――初めての登校。彼女と並んで歩くだけで、世界が少し広がった気がした。




