12月14日 日曜日
日曜の午後、僕たちは家族と担任の先生で羽田空港に向かった。到着ロビーで待っていると、外国人らしい姿が次々と現れる。その中に、ひときわ目を引く少女がいた。金色の髪を揺らし、笑顔でこちらに歩いてくる。
「エミリーさん!」先生が声を上げる。
彼女は軽やかに手を振り、近づいてきた。僕は思わず息を呑んだ。あまりの可愛さと、健康的な雰囲気に圧倒されてしまったのだ。大人びた容姿なのに、笑顔は無邪気で、まぶしいくらいだった。
「Hi! I’m Emily. Nice to meet you」
差し出された手を握ると、僕の顔は熱くなる。
「じゅ、純です。よろしく…」
彼女はにっこり笑って「Jun」と呼んでくれた。その響きが耳に残り、心臓が跳ねる。
父の運転するワゴン車に乗り込み、空港を後にした。車窓から見える東京の景色に、エミリーは目を輝かせる。
「Rainbow Bridge… beautiful!」
「That’s Tokyo Skytree? So tall!」
僕は隣で頷くだけで精一杯だった。彼女の横顔をちらりと見るたびに、胸がざわつく。
やがて車は世田谷区深沢の家に着いた。古民家の門をくぐると、エミリーは驚いたように声を上げる。
「Wow… Japanese house! Tatami, bonsai… and what’s this?」
掛軸を指差す彼女に、母が説明する。僕はただ照れくさくて、視線を合わせられなかった。
夕食は寿司と天ぷらだった。エミリーは箸を持つのに少し苦戦しながらも、楽しそうに笑う。
「I know sushi, tempura, ramen! Delicious!」
母が「ラーメンはまた今度ね」と笑うと、彼女は嬉しそうに頷いた。僕は隣で、彼女が天ぷらを口に運ぶ姿を見ているだけで胸が高鳴った。
食後、客間の和室に布団を敷くと、エミリーは目を丸くした。
「Bed on the floor? Amazing… first time!」
布団に手を触れ、楽しそうに笑う彼女を見て、僕はなぜか誇らしい気持ちになった。
その夜、布団に入った僕は、まだ胸の鼓動が収まらなかった。
――同じ年なのに、どうしてこんなに違うんだろう。
エミリーがこの家にいる。それだけで、古い家が少し特別に見えた。




