表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14Days  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/17

12月27日 土曜日

 12月27日、土曜日。朝から胸の奥が重かった。昨日の夜、縁側で「明日が来なければいい」と思ったけれど、時間は容赦なく流れていく。母が「そろそろ準備しなさい」と声をかけ、僕とエミリーは荷物をまとめた。彼女のスーツケースはすでに玄関に置かれていて、見慣れた家の風景の中で異質に見えた。


 車に乗り込むと、冬の街並みが窓の外を流れていった。エミリーは窓に顔を近づけ、静かに景色を眺めていた。


「Jun… Tokyo is big. So many memories」

「うん…僕も忘れない」


 短い言葉しか出てこなかった。言葉を重ねれば重ねるほど、別れが近づいてしまう気がしたからだ。


 羽田空港に着くと、人の波とアナウンスの声が押し寄せてきた。広いロビーの天井を見上げると、冬の光がガラス越しに差し込んでいた。エミリーはスーツケースを引きながら、少し緊張した顔をしていた。


 チェックインを済ませると、出発ロビーでクラスメイトたちが待っていた。昨日の学校での約束通り、何人かが見送りに来てくれていたのだ。


「エミリー!最後に会えてよかった」

「また日本に来てね!」


 彼女は笑顔で「Yes, I’ll come back」と答えた。その声に、みんなが「絶対だぞ!」と返す。記念写真を撮るとき、僕は彼女の隣に立った。シャッターの音が響いた瞬間、胸が締め付けられるような気持ちになった。


 やがて搭乗時間が近づき、アナウンスが流れた。友人たちは「じゃあな!」と手を振り、少しずつ人の波に消えていった。残されたのは僕と彼女、そして家族だけだった。


 ゲートの前で、彼女は僕の方を振り返った。


「Jun… thank you. You made my days special」

「僕も。エミリーが来てくれて、本当に楽しかった」


 言葉が途切れそうになりながら、必死に伝えた。彼女は少し笑って、でも目が潤んでいた。


「Don’t forget me」

「忘れるわけないよ」


 彼女は小さく頷き、スーツケースを引いてゲートへ向かった。背中が人の波に紛れていく。最後に振り返って手を振る彼女の姿が、ガラスの向こうに消えていった。


 その瞬間、胸の奥が空っぽになった。周囲のざわめきやアナウンスの声は聞こえているのに、僕の世界は静まり返っていた。


 父が肩を叩いて「帰ろう」と言った。母も「いい思い出になったわね」と微笑んだ。僕は頷いたけれど、心の中では「思い出」なんて言葉で片付けられない気持ちが渦巻いていた。


 車に戻ると、窓の外に広がる空港の景色が遠ざかっていった。飛行機の尾翼が並ぶ姿を見ながら、僕は心の奥で思った。


――彼女がいた二週間は、僕の人生で一番輝いた時間だった。


 そして、その輝きは消えないまま、胸の奥に残り続けるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ