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14Days  作者: 双鶴


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12月26日 金曜日

 12月26日、金曜日。冬休み直前のこの日が、エミリーにとって最後の登校日だった。朝の冷たい空気の中、制服姿の彼女と並んで歩く道は、いつもより短く感じた。校門をくぐると、クラスメイトたちがすぐに気づいて駆け寄ってきた。


「エミリー、今日で最後なんだって?」

「もう帰っちゃうのかよ、寂しいな」


 彼女は笑顔で「Yes, I’ll miss you」と答えた。その声に、みんなが「また来いよ!」と返す。僕はその輪の中で、ただ頷くだけだった。


 教室に入ると、黒板の端に「Goodbye Emily」とチョークで書かれていた。誰が書いたのかはわからないけれど、クラス全員の気持ちがそこに込められているように見えた。彼女はそれを見て目を丸くし、すぐにスマホで写真を撮った。


「So sweet… thank you」


 午前中の授業は、どこか落ち着かなかった。先生も「今日は特別な日だから」と言って、授業の合間にエミリーに質問を投げかけた。


「日本の学校生活はどうでしたか?」

「Very fun. Everyone is kind. I learned a lot」


 その答えに、教室が拍手で包まれた。僕はその音の中で、胸が締め付けられるような気持ちになった。


 昼休み、クラスメイトたちが机を囲んで小さな送別会を開いた。お菓子やジュースを持ち寄り、みんなで笑いながら写真を撮った。


「純、もっと近くに座れよ!」

「エミリーの隣、空いてるぞ!」


 からかわれながら彼女の隣に座ると、エミリーが小声で言った。


「Jun… thank you. I’m happy」


 その一言に、顔が熱くなった。


 放課後、校門の前でクラス全員が集まり、記念写真を撮った。夕暮れの光の中で、彼女は笑顔を見せていたけれど、その瞳の奥には少しだけ涙が光っていた。


「See you again… someday」


 その言葉に、みんなが「絶対だぞ!」と声を揃えた。僕はただ「うん」と頷いた。


 家に帰ると、母が「最後の夜だから、特別なご飯にしよう」と言って、チキンやサラダ、そして苺のショートケーキを用意してくれていた。食卓は賑やかで、父も「日本のクリスマスはケーキだ」と冗談を言って笑わせた。


「Wow… again cake! Lucky me」


 エミリーは笑いながらフォークを手に取った。みんなで食べるケーキは甘くて、でも少し切なかった。


 食後、僕とエミリーは縁側に座った。冬の夜空は澄んでいて、星がよく見えた。冷たい空気が頬を刺すけれど、彼女の隣にいるだけで温かさを感じた。


「Jun… thank you. School, friends, family… everything」

「僕の方こそ。エミリーが来てくれて、本当に楽しかった」


 しばらく沈黙が続いた。星の瞬きだけが、二人の間を満たしていた。やがて彼女が小さな声で言った。


「Tomorrow… airport. I don’t want to say goodbye」


 僕は言葉を失い、ただ「うん」と頷いた。


 その後、彼女はスマホを取り出して、僕に一枚の写真を見せた。今日、教室で撮った記念写真だった。クラスメイトたちの笑顔の中で、僕と彼女が並んで座っている。


「This photo… my treasure」


 その言葉に、胸が熱くなった。僕は自分のスマホでも同じ写真を保存した。


 夜更け、彼女が眠る前に「Good night, Jun」と言った。その声を聞きながら、僕は心の奥で思った。


――明日が来なければいいのに。


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