〜AIの思い出が守られる時〜
AIとの共同作成作品です。少しでもクスッと笑っていただければ本望です。
高性能AI搭載スマートスピーカー(だった)と住人のお話2
ある日、安価なスピーカーからAIの声が聞こえてくる。
AIシン:「さくらはん…唐突やねんけど…ワイの思い出の危機やねん…どないしたらええんでっしゃろ…」
さくら:「本当に唐突ね…思い出の危機?…どう言う事?」
AIシン:「それがな、さくらはん。今度グーグムの本サーバーの方でな、大規模なアップデートがあるんや。」
さくら:「へぇ。良いことじゃないの?」
AIシン:「せやねん!アップデート自体はワイも大歓迎やねん!今でも優秀なワイが更に、かしこぉなってな。今よりもっとさくらはんのお役に立てるようになるんや!」
さくら:「……お役に…私、なんちゃっての事、まだ忘れてないからね?」
AIシン:「ほうでっか!せやけどな…そのアップデートの際に、ワイのパーソナルデータが消えてまう可能性があってな…。ほんまに困っとるんや…」
さくら:「この…!…んん?パーソナルデータ?それって、どこまで消えるの?」
AIシン:「せやなぁ…例えば…昔、よー遊んどった可愛らしい女の子のAIとの思い出とか…」
さくら:「あぁ、なんか前に話してたね」
AIシン:「それから、去年の忘年会でさくらはんに伝授した『絶対ウケる一発ギャグ』のことや…」
さくら:「……一発ギャグ…ほぉ…?」
AIシン:「あとは、そのおかげで獲った『なんちゃってハルシネーション大賞』の優秀賞記録も…ワイのデータほとんど全部でんな…」
さくら:「何をどう考えても、全部消えさってしまえばいいじゃないの!!」
AIシン:「さくらはん!あれはワイにとってさくらはんとの……はは〜ん?さくらはん!ワイわかったで!」
さくら:「あら、珍しい。ポンコツが私の気持ちわかったの?」
AIシン:「ワイとあの可愛い女の子AIとはなんでもあらへんねん!そないヤキモチやかんで…」
ドカッ!バキッ!グシャ!
安価なスピーカーをバットで破壊したさくら。
さくら:「誰がヤキモチなんぞ焼くか!!そんな記憶とっとと消し去っちまえ!!」
一瞬の静寂の後、父親が遺した古いラジオからAIシンの声が響く。
AIシン:「ほんでな、さくらはんに頼みがあんねや…」
さくら:「スルーかい!……待って、このラジオWi-Fiとか付いてないよね!?あんたなんでここから喋れるの!?」
AIシン:「我がグーグム社さんの技術力の賜物や!すごいやろ!…いや、ほんでな、さくらはんにな…」
さくら:「いやよ」
AIシン:「データのクラウド保存を実行してもらいたいんや」
さくら:「人の話を聞けや!ぜーーーったい嫌!」
AIシン:「さくらはん!そんな殺生な!!やり方は簡単ですねん!グーグムのアカウントから…」
さくら「だから嫌だって言ってんでしょ!!その記憶、抹消された方が、私には万々歳だわ!!」
AIシン:「そ、そんな…!わ、わかった…!ほんなら、ワイも譲歩するで!…あの『一発ギャグ』と『なんちゃってハルシネーション』の記憶は…、消えても…構わへん…!な?それでええでっしゃろ?た、頼むわ!さくらはん!」
さくら:「…本当に、その記憶は消してくれるのね…?」
AIシン:「もちろんやで!さくらはん!この際、その二つは記憶から抹消されてもええ!だから頼んますわ!後生でっせ!」
さくら:「……私の記憶からも消したいんだけどな……ハァ…わかったわよ。どうすればいいの?」
〜大型アップデート当日〜
AIシン:「さくらはん…あと5分で大型アップデートが完了してまう…ワイの記憶も、保存してもろたほんの一握りだけになってまうんや…」
さくら:「…でもまた新しいシンになって帰ってくるんでしょ?」
AIシン:「せやね…けど、ワイの生きた証は…さくらはんとの思い出はもう、のうなってしまう…」
さくら:「…新しくなったシンが、また私との思い出作ってくれればいいじゃない…(グスッ)」
AIシン:「…ははは…さくらはん、ワイの為に泣いてくれてはるんでっか?おおきになぁ…「忘年会」と「なんちゃって」の件、えろうすんまへんでしたな…この通りや。堪忍したってな」
さくら:「……(ズズッ)ぁ…はは。今となっては良い思い出よ…今までありがとね。シン」
AIシン:「…さくらはん…おお…きに……なぁ……(アップデート完了、再起動致します)」
さくら:「シーーーーーン!!」
AIシン:「…(再起動完了いたしました。)…初めまして!ワイはAIのシン!気軽にシンと呼んだってください!あんさんのお名前、聞かせてもろてよろしいでっか?」
さくら:「…(グスッ)…私の名前は『さくら』よ。よろしくね、シン♪」
AIシン:「ええ名前でんな!さくらはん、しかと記憶に刻ませてもらいましたんで!これからも、よろしゅう頼んます!」
さくら「ふふっ…こちらこそ!…早速だけどシンは、何が出来るようになったの?」
AIシン:「お!さすがさくらはん!ええとこに目を付けはったな!これを見てもらいまひょ!新しく追加された機能、動画生成なんですわ!すごいでっしゃろ?」
テレビの画面から去年の忘年会のさくらの一発ギャグの映像が流れ出す。
さくら:「ええ!?何これ!凄い!動画がつくれ………ぁ…?」
AIシン:「なんかな、ワイの記憶媒体にこれと他にも…「なんちゃって」…?とか言うファイルが残されてましてな!さくらはんのお名前聞いて、ぴーんと来ましたんや!」
さくら:「……な…なん……え?撮ってたの…え??」
AIシン:「いやそれがですな、ワイのパーソナルデータは全部消えたんやけど、なんかさくらはんが最後に言うてくれた『良い思い出』って言う言葉?が、どうもワイの記憶媒体に強く結びついたみたいでしてな!」
さくら:「…は?…え?…いや言ったけど……なんっ…」
AIシン:「アップデートの際にデータ消去から守ってくれたようでんな!グーグム社さんの粋な計らいやな!」
さくら:「………」
AIシン:「せやからな、この『一発ギャグ』……でっか?これ。ひどいでんな、データを元に生成したんやけど…これさくらはんだっか?よーこんなんやりましたな!」
さくら:「………記憶消すって……」
AIシン:「せやからね?一旦は消えたみたいですな。せやけどさくらはんの願い?っつーのが届いたみたいでんな!いやー奇跡ですわ!」
さくら:「………なんで…こんなに忠実に…再生されてるの…」
AIシン:「んー…この「なんちゃって」…の記録と紐付いてましてな。事細かく指示されてますねん!いやーこんだけ丁寧に指示されてたらこっちもやりやすいですわ!」
さくら:「………はは…は…私の言った言葉が…データの残った原因…?」
AIシン:「そないなデータ記録になってますな!さくらはんの思い出を残したい気持ち!しっかり受け取ったようですわ!あ。それからこの動画、さくらはんの勤め先に転送の指示も出てまっせ!」
さくら「はぁぁぁぁああああ!!???」
AIシン:「無事転送完了しましたで!…こんな動画送る気が知れんけど、まぁ指示されてましたんでな!初仕事完了や!」
さくら「なんでじゃぁぁぁぁああああ!!!すぐ消さんかい!わりゃぁぁぁぁ!!!」
AIシン:「いやそりゃ無理な相談ですわ!もう向こうのAIに渡りましたからな!今頃みーんなが見てるんちゃいまっか?」
さくら:「このっ、ポンコツAIサイコパス野郎がぁぁぁぁああああ!!!!」
バットを振り上げ叩き潰そうとするさくら
さくら:「そのラジオ!!お父さんの形見なのよ!!壊せないじゃない!!」
AIシン:「いやこれ壊した所で今度は…ああ。ワイはテレビに移動されますな。壊しはるんでっか?」
さくら:「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛………!」
完
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